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株主インタビュー #03 |脱炭素化支援機構 上田 嘉紀氏「日本発のゼロボードがGHGのインフラを担っていく」

こんにちは、ゼロボード広報の太田です。
株主インタビュー第3弾は、脱炭素化支援機構の上田嘉紀さんです。脱炭素化支援機構(JICN)は、改正地球温暖化対策推進法に基づき、国の財政投融資からの出資と民間からの出資を原資にファンド事業を行う環境省が所管する株式会社です。
3月24日に当社が発表したシリーズA総額約25億円の資金調達完了のプレスリリースに、株主として名を連ねてくださったJICNさま。光栄なことに、2022年10月に設立したJICNの出資先第1号が当社となりました。その裏側を聞くため、上田さんのもとを尋ねました。

株式会社脱炭素化支援機構(Japan Green Investment Corp. for Carbon Neutrality 略称 JICN)
取締役専務執行役員(事業推進担当 CIO:Chief Investment Officer)
上田 嘉紀氏

京都大学大学院工学研究科修士課程修了。
大阪大学大学院国際公共政策研究科博士後期課程単位取得退学。
1995年関西電力(株)入社後、グループ経営推進本部、環境室、エネルギー・環境企画室 企画課長等を歴任。2018年関西電力経営企画室次世代エネルギービジネス開発グループ 部長 兼 合同会社K4 Ventures インベストメントアドバイザーを務め、経営企画室イノベーションラボ担当部長に就任。2022年10月関西電力退職後より現職。

官民ファンドの特徴は政策的意義を問うこと。そこにゼロボードが合致した

ー 今日はよろしくお願いします。まず弊社とどのように接点を持たれたのでしょうか。

よろしくお願いします。最初の接点は、ゼロボードさんから環境省株式会社脱炭素化支援機構設立準備室へ、資金ニーズがあるとの情報提供をいただいたと聞いています。そこからJICNが立ち上がり、出資先を検討していく中で御社が残っていき、最終的に支援基準に合致すると判断されたので出資に至りました。

ー どのような審査ポイントで弊社は残っていったのでしょうか。

我々は4つの支援基準を設けています。
(1)政策的意義
(2)民間事業者等のイニシアチブ
(3)収益性の確保
(4)地域における合意形成、環境の保全及び安全性の確保

ゼロボードさんの場合、(1)政策的意義は満たせるだろうというのが一番大きかったです。
審査のポイントは普通のベンチャー投資と同じで、まずは経営チームから見て、市場性があるか、収益性があるかと、当然コンプライアンスもチェックします。

官民ファンドとして特徴的なのは政策的意義を問うことです。
排出量の削減等を行う事業活動なのか、その活動を支援する事業活動なのかということが求められます。ゼロボードさんは排出削減を行う当事者ではなく、それを支援する事業ということで投資対象として合致したということになります。

ー 弊社代表の渡慶次と対面されたときの印象をお聞かせいただけますか。

私は前職で関西電力にいたので、渡慶次さんのお名前は社内でよく聞いていました。(補足:関西電力さまはゼロボードのプライムパートナーです)関西電力もシリーズAのセカンドクローズで御社に出資していますが、以前から関西電力の営業チームが御社の事業を高く評価してることを耳にしていました。

私が関西電力にいた時、三井物産でCO2排出権の事業を牽引されていた方を存じ上げていたのですが、その方と同じ部署で働かれていたのが渡慶次さんでした。私も同じ時代に排出権の事業を担当していました。今は当時(2010年頃)のことを知らずに脱炭素関連事業をされている方も多いと思いますが、渡慶次さんは、しっかりと背景を理解した上で事業に反映されているのだろうという裏付けになりました。また、渡慶次さんと同じ時代に同じ取り組みをしていたこともとても印象的でした。

忘れもしない、最初にお会いしたのは10月26日、渡慶次さんがイベントに登壇された時でした。まだギリギリ関西電力に在籍している時で、移籍することはお伝えできず名刺交換だけをしましたが、このあとJICNに移って出資の検討をすることは頭の中にあり、心の中でこの方が渡慶次さんか、と思っていました。

ゼロボードには「エネルギー×金融×IT」という知見に加え、戦力が整っている

ー 弊社の戦略やプロダクトについて、どのように思われましたか。

私は関西電力の環境室にいた頃、CO2排出量を算定するために全社のデータを集めていたんです。データ収集の手間を実体験で理解していたので、簡単に算定できるサービスがあるといいなと思っていました。

御社が取られている方法、エコシステムを構築し、スイッチングコストを高めてモートを築く方法は、SaaS企業の戦略としてはオーソドックスなやり方だと思います。業種によらずホリゾンタルに利用できることが特徴でありながら、製造業のサプライチェーンが深いところまで利用できるというヴァーティカルな要素もある。その両方を持っていることが特徴的でした。

それにトヨタ出身の方が事業開発本部長としてジョインするなど、優秀な人材もどんどん揃ってきている。以前、DNX Venturesの倉林 陽さんが御社のことを「Founder Market Fit」と話されている記事を読んで、まさにピッタリだなと思っていました。

渡慶次さん自身が「エネルギー×金融×IT」という掛け算の知見をお持ちです。言うなれば「connecting the dots」。ご自身の経験が今に繋がっていますよね。
私も同じような流れで今ここにいるので、よくわかります。当時からあったGHGプロトコル(※)という考え方が、どのように変遷してきたかもご存知ですし、ルールメイキングに関与する重要性も理解されている。経済産業省のカーボンフットプリント算定に関する検討委員も務められていました。そういった部分も議論の中に上がった評価ポイントでもありました。

エコシステムを形成する戦略という頭脳の部分、戦う人が集まっているというチーム力の部分を見て、乱立する類似サービスの中でも勝ち残っていく可能性が高いのではないかと思いました。

ー ありがとうございます。弊社にはどのようなことを期待されていますでしょうか。

早く成長して早くイグジットしていただくことですね。いかに今の戦略を早く形にしていくのかが大事です。我々からもお客様のご紹介をしていきたいですし、追加出資が必要ならその要望にも応えるべく検討していきたいと思います。
日本発のスタートアップとして、残っていって欲しいと期待しています。

他には地方自治体との取り組みです。今後我々も自治体との取り組みも行っていこうと考えていますが、そこにGHG可視化ツールを採用すると色々見えてくると思っています。

見える化することが全てのはじまり。そしてGHGのインフラを担っていく

ー JICNさんの株主でもある岩手銀行さんとは地域脱炭素の取り組みを推進していて、協定を締結した自治体は10に達しました。(5月2日現在)

例えば、地域とのプロジェクトにも我々もかませてもらって、そこに出資することができれば、それをひとつのモデルとして横展開していくというのも面白いですね。しかし、お金が回るのかという問題はあります。まだまだ中小や零細企業が脱炭素関連にお金を使えるのか?という状況ですよね。

ー 中小企業さんにとって脱炭素に取り組むメリットが見えづらい、感じづらいというのがありますよね。

でも見えないと気づかない、気づかないとわからない、わからないと動けないんです。まずは数字で捉えるための見える化が必要です。ですから「zeroboard」のようなツールは絶対必要だと思います。
同様のサービスが複数出てきているということは、業界を広げるという意味では悪くないです。楽しみながら切磋琢磨していくのがいいと思います。

ー 上田さんは自治体をまるごと可視化していくのが良いとお考えですか。

その目的が重要です。エネルギーを地産地消したいのか、断熱性を高めるのか、そういった目的をきちんと施策につなげながら、何をやるべきかを見える化していくことが重要です。見える化することで、活動の流れやエネルギーの流れの特徴が見えてきます。

見える化することが全てのはじまりです。それが人の行動につながるということだと思います。気づかないと行動には移せませんから、御社はとても意義のある事業をされていると思います。

ー 私たちはASEAN地域でのサービスも始めています。

まずは日系企業のサプライチェーンの可視化をするということは、良いポイントに着目されていると思いますし、我々としてもその方向性には腹落ちしています。
とても面白い展開ですし、日本に根ざしながら海外展開されていくことも、我々の支援基準の政策的意義にも該当しています。

ー 今後両社で連携できることはなんでしょうか。

先ほども話しましたが、お客様の紹介もしていきますし、地方創生に貢献する脱炭素の取り組みを地方自治体を絡めてできるといいなと思います。また、イベントなどで講演する機会があればお互いにやっていくのもいいですね。

ー ゼロボードメンバー、これからジョインするメンバーにメッセージをお願いします。

「見える化」というのは非常に重要です。「zeroboard」をしっかり広げていただくことに期待しています。
私は「zeroboard」は温室効果ガス(GHG)削減に向けたインフラだと思っています。
ユーザーが削減をしようと思った時に、最適なソリューションと繋げてあげられること、一方で、ソリューションを提供するパートナーにとっては確実なデータを受け取れることが大切だと思います。それは非常にコミュニケーションコストが高いことですが、GHGのインフラ企業としてコミットしていってください。

ー 最後に、JICNさんにとってゼロボードへの出資の意義とはなんでしょうか。

「zeroboard」を広げることで、カーボンニュートラルに向かう道筋を作る会社になっていただくこと。そんな風に成長していかれたら、JICNとして出資した意義があると思います。ぜひ頑張ってください。

ー 頑張ります!本日はありがとうございました。

■取材後記

上田さんは、エネルギー問題を解決したら世界はもう少し平和になるのかもしれないと考え、新卒で、専攻していた電気工学の知識を活かせそうな関西電力に入社したそうです。安価なエネルギー資源が乏しい日本としては、使いやすい電気という二次エネルギーを、技術革新に取り組みながら広めていくことによって、自立性を高めていくことができるのではないかと思ったと言います。日本のエネルギーの持続のために、この道一筋で来られた上田さん。お話しさせていただくと非常に学びがありました。エネルギーに対する助言をいただきながら、今後も連携していけることを楽しみにしています。

ゼロボードは気候変動を社会の可能性に変えるべく、企業の脱炭素経営を支援しています。
GHGデータのインフラ企業として、国内外の排出量可視化とその先の削減まで伴走していきます。全方位で採用強化中ですので、ご興味のある方はお気軽にお問い合わせください。お待ちしています!

脱炭素化支援機構さまオフィスにて(JICN 上田さん、ゼロボード 太田)

※GHGプロトコル:温室効果ガス(Greenhouse Gas:GHG)の排出量を算定・報告する際の国際的な基準。Scope1-3の区分に分けられている。
Scope1:自社の事業活動における直接的なGHG排出
Scope2:他社から供給された電気、熱・蒸気の使用により発生する間接的なGHG排出
Scope3:上記以外の事業活動に関わるサプライチェーンのGHG排出

<参考プレスリリース>
【2023.3.24発表】脱炭素経営支援ソリューション提供のゼロボード、総額約25億円でシリーズAの資金調達を完了
【2022.9.26発表】経済産業省のカーボンフットプリント算定・検証等に関する検討会委員にゼロボード代表 渡慶次 道隆が選出されました

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