ENEOSとアイ・ロボティクス特有技術による石油タンクのドローン塗装の有効性を根岸製油所内で確認
タンク補修の課題を機械化・遠隔化・自動化で解決へ 米国では120兆円を超えるインフラ法案が可決され、今後5年間における国内インフラの大幅な刷新を進めることが発表されるなど、先進国におけるインフラの老朽化と労働力不足は年々深刻度を増しております。 ...
https://www.irobotics.jp/post/eneos01
先日(2022年6月)、ENEOS(ENEOS株式会社)と石油タンクの補修に対してドローンを利用した実証実験の実施と、実際の作業動画を発表しました。
今回発表した石油タンクをドローンで塗装している動画▼
この技術、一見地味に見えますか?
実は、上空に固定したドローン、そこからウインチを精密・協調制御する技術、壁面に張り付いた吸着型のドローンのコントロール、そしてスプレーガン吹付力の微細調整や塗料自体の材質・粘度の調整などをAIで緻密制御する非常に高度なすり合わせ技術なのです。
アイ・ロボティクスではこのソリューションを日本製鉄株式会社、日鉄テックスエンジ株式会社と共に開発してきました。やっとのことで実用化の目途がつき、2021年末に発表させていただいたのですが、ここに至るまでは5年以上の歳月をかけた紆余曲折と失敗、そして出会いとブレークスルーがあったのです。
(涙なしには語れないその苦労はまた別の時に・・・w)
この技術、ドローンの文脈で語られがちではありますが、上記の日鉄のプレスリリースを見ても分かる通り、本質的にはインフラ・メンテナンスのロボットによる3次元作業自動化、つまりインフラDXの一環です。
世の中ではDX化が叫ばれていますね。そして、残念ながらわが国は、諸外国に比べスピードが遅いと言われています。しかし、アイ・ロボティクスはそこに果敢に挑戦しているフューチャリストの専門家集団です。
良く勘違いされますが、我々はドローン屋さんではありません(笑)。
我々は「本質課題を解決できているか」に愚直にこだわり続けていますから、ドローンの機体販売をしてはいませんし、ましてやドローンだけにこだわっているわけでもありません。真に顧客課題と社会課題を考えるからこそ使える技術は全部使うテクノロジー・インテグレーターです。そして今のところ、道具としての三次元遠隔ロボであるドローンが最適な場合が多く我々が得意としているということなのです。
まずは、このニュース動画を是非見てください。テキサスでタンクから原油が漏れている事故のニュースです。これ、ほんとにこないだのニュースです。
このような問題は米国だけ、石油業界だけなのでしょうか。いいえ、最近だけ見ても、ペンシルバニア州では巨大な橋が崩落しました。日本でも和歌山県の水道橋が崩落したりしたのがニュースになりました。先進国のほとんどで基盤インフラの老朽化は本当に深刻な課題です。
これらを受けてバイデン政権では1兆2千億ドル(≒150兆円!)にも上る「インフラ法案」を可決しています。つまり、「米国内のインフラを丸ごと全部刷新するぞ!」と言っています。最先端のAIやロボティクスを使い、国家と国民生活の基盤を刷新しないと国際競争力を維持できない、先進国は同様のタイミングにあると言うことが分かります。
翻って、わが国は何をやっているのでしょう。大分後手に回っている、どころか、米国の様な思い切ったアクションが取れず、衰退の一歩をたどっているように見えます。。そして日本の産業がこれから立ち向かう「三重苦」があります。
労働人口は加速度的に減っていくことが確実です。厚労省の統計によると、総量が減ることに加えて、急激に高齢化しているのが問題です。熟練技術者の平均年齢は急激に上がっています。高所作業技術者の平均年齢が70歳という現場も珍しくなくなってきました。高年齢になれば安全を確保して作業するのも困難になります。
従来は、労働人口を海外、特に東南アジアからの流入で補うことが行われていました。しかし、折からの新型コロナ蔓延、そして急激な円安と東南アジアの経済成長がそれを困難にしています。さらに米国のインフラ法案可決により、米国との人材の取り合いが始まっています。
つまり作業したくても人がいない、という状況は加速度的に悪化していきます。
今年に入って資材費は急激に上昇しています。特にひっ迫しているのが木材で、ウッドショックなどと言われているのもご存知でしょう。国内では1年前と比較しても価格が50%以上上がっています。数年前に比べると数倍の価格になっています。
半導体の不足も深刻です。わずか200円のチップがないために自動車工場全体の操業が止まったりということが実際に起きています。半導体の供給不足は本当に深刻で回復するまでには数年かかるでしょう。
そしてウクライナ危機による食糧資材や化石燃料の高騰が追い打ちを掛けました。ガソリン価格はまさに我々の生活を直撃していますが、折からのインフレと円安とあいまって、トリプルパンチで産業の現場を直撃していきます。
つまり人や資材に依存している従来の手法は急激に高コスト化していきます。今すぐ、テクノロジーによって作業効率化をしないといけません。
殆どの国内の基盤インフラ設備は戦後の高度成長期、そしてその後のバブル期までの間に建造されています。通常は40年程度の耐用年数が設定されますが、わが国の産業はそれをだましだまし延長しながら使ってきたというのが現実です。その一つの例が水道橋の崩落なのでしょうが、これは一つの例にすぎません。
トンネルの天井や橋梁が崩落したりという事故も増えています。国交省によると、数年後には地方にある50万件以上の橋梁のうち50%超が建築後50年を超えるとされています。
加えて、環境変化によって水害や台風の強大化も進んでおり、屋外インフラにかかる負荷も大きくなっています。当初想定していなかったような事故が発生したり、定期メンテナンスでは想定していない場所が崩壊したり爆発したりということが頻繁に起きるようになってきました。
耐用年数の問題は放置しても良くなることはありません。今50年経っているインフラは10年後には60年を超えます。しかし、現状のメンテナンス手法では全く追い付かないことが分かっています。
上記の三重苦に対して、現場では様々な手を打っているのを見ています。現場の皆さんの努力には本当に頭が下がります。
しかし、自治体や大企業の単年度決算の仕組みだとどうしても近視眼的にならざるを得ないというのが現実でしょう。ロボット化の必要性は分かってるけど、今はコストメリットがないから、とか。現場はやりたいけど、未成熟な技術とされてしまうとなかなか予算承認されない。
アイ・ロボティクスでは「機械化・遠隔化・自動化」として説明をしています。頭文字をとってMRAということもあります。(Machinization, Remotization, Autonomization)
例えば、歌を歌うことに例えたらよいかもしれませんね。そこに歌の上手い人がいれば気軽に歌ってもらうことが出来る、優秀な歌い手の技能は何人にも代えがたい。今までは若い歌い手がいっぱいいました。しかし、歌を必要としている現場は増え、歌い手の減少は深刻化するばかり。
一方で、高品質な録音の音源を作ることができれば、歌い手の声は世界中に一瞬で届けることができる。デジタル録音にすれば音を切り分けたりリマスターしたりできる。しかし、録音作業は本当に大変で高コストだから、今まで通り現場で歌ってくれる歌い手を探してしまう。
MRAは当初は高コストになる可能性があります。しかし、高コストだから、技術が未熟だから、といって進めないと、それは高コストのまま、未熟な技術は未熟なままで進展がありません。そして、現場はゆでガエルの様に競争力を失っているのが今の現状です。
5年後を見据えてMRAに取り組むことができれば、スケールメリットがでてコストは劇的に下がっていくでしょう。上述した三重苦とは全く逆の方向性です。また、今後登場が予測される、三次元ロボット化、サイバーフィジカル・シミュレーション、量子コンピューティングといった技術を次々と取り込んでいく素地ができます。今のやり方を続けていてはその未来もありません。
だからこそ、5年後、10年後を見据え、今すぐ我々との取り組みを始めて欲しいと切に願っています。
今回発表したのは日鉄・日鉄テックスエンジと開発を進めてきた技術です。それを、ENEOSで深化・展開するという共創の取り組みを進め始めたというのが非常に重要な事なのです。製鉄業界・石油業界のトップ企業がこぞって最先端を取り入れる、しかも自社技術の囲い込みにこだわってないというのが象徴的だとは思いませんか。
かつては、自分で開発した技術は自分で使う、いわゆる囲い込みが普通でした。
しかし、世界で勝負をしている業界トップ企業だからこそ、そのスピードでは追い付けないと言うことも両社とも十分を理解しています。
製鉄所での成功事例は、製油所で活かせる可能性がある。一から開発するより持ち寄って協力した方が早いのです。今回のソリューションに使われているAIも、データを集めれば集めるほどフィードバックの精度は良くなります。ならば囲い込むより、積極的に共創に加わり、データと実証場所を提供し協力した方が良いのは自明です。
もはや、うちが元祖、うちが本家と言っている場合ではありません。今回の事例は、日鉄、ENEOS以外でも展開が可能です。日本全体、いや世界全体を巻き込んだ、イノベーションを日本発で起こしましょう。アイ・ロボティクスでは場づくりを進め、各所との取り組みを進めてまいります。是非ご連絡ください。
アイ・ロボティクスでは、こんな我々と一緒に社会変革を進めてくれる同志を募集しています。是非我々と一緒に働きませんか。我こそはと思うエンジニア、現場スペシャリストの方の応募をお待ちしています。