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未経験からチャレンジ:弊社の山本のエピソード

“人生って、展開の読めない物語だ”

小学校三年生の自由研究で舞台脚本を書いてみた時から、物語を作るのが好きでした。
とはいえそれは長い間趣味として制作するだけにとどまっており、特に将来の夢にしようとまでは考えていなかったのですが、いろいろとストーリーを考えているうちに、「自分で作った物語を、自分でゲームにしてみたら面白いだろうな」と、なんとなく思うようになりました。

そして大学は、プログラミングの勉強ができる情報学部を進路にしました。
ですが、プログラミングは高校までに学んでいた勉強とは考え方がまるで違います。
プログラミング言語を学ぶことはおろか、Excelでさえも私には全く理解できませんでした。

自分にこの勉強は向いていないのではないかと考え始めたころ、受講していた講義の課題制作で、一本の映像用シナリオを作りました。
内容はあまりいいものではありませんでしたが、そのシナリオを書きあげたとき、自分の中で達成感と同時に「他人にとって面白い物語が書けるように勉強したい」と思う感情が芽生えるようになったのです。

そうして私は一度情報学部の勉強をあきらめ、脚本制作を学ぶためにシナリオ作家の養成所に通うようになりました。

養成所では、物語を魅力的にするためにストーリーの基本的な組み立て方を学び、
そしてキャラクターの個性の活かし方を学びました。
シナリオには才能だけでなく理論があり、その理論を抑えるだけで物語の書き方は大きく広がることを教えてくれたのです。

毎週二千字ほどのシナリオ課題を提出し続けることが大変ではありましたが、それは自分の現実、やりたいことを考え直すきっかけにもなりました。

そして私は、自分の書く物語をもっと豊かにしたくて就職を選びました。
大学の情報学部で学んでいた経歴はあったため、運よくIT事業を行っている今の会社に就職することができました。
IT事業を行う企業に所属するほとんどの社員は、それぞれのITスキルごとに常駐して、様々な事業やプロジェクトに関わります。常駐先で全然違う内容の業務を行うこともあるため、求められるスキルも全く違ったりします。
今までの経験が通用しないこともありますが、それでもそれこそが私の求めていた「物語を豊かにする経験」でした。

私は、この会社に選ばれて光栄でした。

しかし、同時にふと思いました。
シナリオ制作の経験は、ITに活きるのかと。

多少長い日本語の文章を書けるだけで、開発ができるわけではありません。
多少辻褄の合った物語を構成できるだけで、インフラを作れるわけではありません。

情報学部の勉強はそもそも一度諦めていたせいで、ITに対して戦力となるほどの経験も知識もありませんでした。
そうなると、より多くの企業で経験を得られるチャンスは減ってしまいます。
情報学部でも基礎知識だったExcelでさえ出来ないともなると、IT業界のもっと深いところまで知ることは叶わなくなります。
活動範囲を広げるため、再度Excelから勉強を始めました。
ですが一度諦めた勉強だったので、理解できるようになれるか不安でした。

しかし、それは全くの杞憂でした。

驚くほどにExcelが理解できるようになり、現時点ではオーダーに沿った表計算が組めるほどになりました。そしてはじめて学んだプログラミング言語にさえ、構文やしくみが理解できるようになっていました。
なぜ急にできるようになったのか不思議に思いました。
そして、私はExcelの載ったテキストを改めて読みなおしました。

その中には計算式の基本的な構成方法が書かれてありました。
その中には個性ある計算式の活かし方が書かれてありました。
プログラミングも同様でした。
プログラミングには理論があり、その理論を抑えるだけで可能性は大きく広がることを教えてくれていました。

計算式というキャラクターを活かし、シナリオのように表を構築するのがExcelなのではないか。
学んできた内容が、シナリオで勉強したときと同じであったことに気づくと、少しだけ知識が深めることができるようになったのです。

そして、今の会社での研修を終え、とうとう最初の常駐先へ行くことになりました。
常駐先は、新鮮で刺激的な経験の連続です。
そもそも就職経験がなかったので、目に映るものすべてが面白くてたまりませんでした。

でも、その面白さをただ「楽しい」と思うのは最初だけ。
最初はこなすのがやっとだった業務にも慣れ、一緒に働く人との関係性を深めていくと、業務にも人間関係にも、ちょっとした様々な悩みを抱くようになりました。
こうした「負の経験」を得ることは物語のスパイスにもなりえると頭では理解しているものの、その壁をどうやって乗り越えればいいのかがわかりません。

私は、仕事による悩みを会社の社員に相談しました。
本当に小さな悩みばかりでしたが、自分だけで解決するのはどうしても難しくて、とにかく社長やチームのリーダーなどに色んな相談をしました。

そこには、様々な答えがありました。
同じ悩みに対しても、解決方法やそのヒントは全く違うことを教えてくれました。

それは、シナリオにも通じるものがあります。
もしも物語の中で大きな壁に当たった時、キャラクターは同じ乗り越え方をするわけではありません。例えば力自慢は物理的に壁を壊すかもしれませんが、頭脳明晰な人間なら力を使わずに壁を突破する方法を考えます。
物語の中でキャラクターは、「自分なりの解決方法」でトラブルを解決します。
もちろんそれは現実も同じで、人は様々な経験から何通りもの方法を導き出します。

現実で答えのわからない問題に対する「自分なりの解決方法」を得るには、多くの人間の力が必要です。たくさんの信頼できる仲間がいなければ、自分に合った方法を見つけることさえできないかもしれません。

たくさんの意見を吟味しながら、自分に合った解決方法を探ることができる。
それは自分を知ることにもなり、自身のさらなる成長を得ることにもつながります。

仕事で色んな経験を得るだけでなく、悩みに対する解決方法を様々な人に相談できる居場所を得ることになったのは、大学時代の私には思ってもみなかったことでしょう。
私は、この会社に選ばれて光栄でした。

そうして私は現在、会社で得た仕事を通してシナリオとプログラミングの勉強をやっています。
昔は両方とも一度諦めていたものでしたが、こうして両方とも勉強することが楽しいと思えるようになってよかったと思っています。

「自分で作った物語を、自分でゲームにしてみたら面白そうだな」が、まさかこんな方向にまで転がるとは思いませんでした。

本当に、人生って展開の読めない物語ですよね。

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