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みうらじゅんに、ブームのつくり方を学ぼう

「一人電通」みうらじゅん氏の仕事術

みうらじゅん氏の『ない仕事の作り方』という本が、ブランディングの教科書として非常に秀逸だったので紹介したいと思います。


「ない仕事」の作り方
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2019年、くまモンの年間売上が1500億円を突破し、8年連続最高を記録しました。

くまモン、恐るべし。

このブームは元を正せば、ゆるキャラブームがきっかけ。くまモンはゆるキャラグランプリ2011年の王者です。

ゆるキャラという社会現象ともなったブームを巻き起こしたのが、みうらじゅん氏。本書は『ない仕事の作り方』というタイトルで、みうら氏が手がけてきた数々の仕事を紹介しながら、一人電通という独特な仕事術を公開しています。

ブランディングの観点から見ると、みうらじゅん氏はブランディングの巨人と言っても過言ではありません。その仕事術となれば、ブランディングの技の宝庫だと言えるのではないでしょうか。

ここでは、学べるポイントを5つ、ピックアップしたいと思います。


1. まずは、ネーミングから

物産店に所在なさげに立っている奇妙ともいえる着ぐるみ。かつてはマスコットキャラクターと呼ばれていました。マスコットは来客者に手を振って愛想を振りまくものの、客は見向きもしない。そんな光景を覚えている人も多いのではないでしょうか。

そんなマスコットたちの姿に著者みうらじゅん氏は「哀愁」を感じたといいます。そして、いつの間にか、地方のマスコットのことばかりを考えるようになったのです。それも尋常ではないくらい

地方の物産展で見かける着ぐるみのマスコットキャラクターを一言で表すにはどうしたら良いか?

そもそも、どの自治体も真剣に、ご当地マスコットキャラクターを考えて作っていたはず。決して、ふざけていたわけではありません

しかし、出来上がったものは妙な物体になっていたのです。世の中の人たちはわざわざ口には出しませんが、不思議で冷たい目線を向けていました。

そのご当地キャラクターの特性を一言で表すために、みうらじゅん氏は「ゆるキャラ」という名前をつけたのです。

自治体の人たちの真剣さを逆手に取るような形で、「ゆるい+キャラクター」 =「ゆるキャラ」と名付けられ、ネーミングが生まれたことで人々はこれまで気に留めていなかったご当地キャラクターを「ゆるキャラ」として意識するようになりました。これが徐々に全国各地に浸透し、ブームを巻き起こすことになるのです。


2. ブームを作るために自分を洗脳する

ここからが「ない仕事」の作り方の極意です。

人を洗脳する前に自分を洗脳する。これがみうらじゅん氏の基本戦術です。

「ゆるキャラ」って面白いよね、と人に話しただけではブームは起こりません。自分が絶対に「ゆるキャラ」ブームが来るのだと思いこみ、自身を洗脳していくというのです。

そして、とにかく「ゆるキャラ」を集めるだけ集める。「ゆるキャラ」の出没する物産展にひたすら足を運ぶ。「ゆるキャラ」の情報も大量にインプットする。

こうして、まだ起きてもいない「ゆるキャラ」ブームにどっぷりと浸かり、情報が大量に集まったら、ようやく次の段階へ。ここから種をまくのです。


3. 種をまく。ブームが来ていることをPRする

ここからは所謂、売り込みです。雑誌やテレビに企画を持ち込むのです。

最初に「ゆるキャラ」をタイトルにした連載は「ハイパーボビー」という、フィギュアの月刊誌でした。これも別に「ハイパーボビー」側から「ゆるキャラ」で連載をして欲しいと依頼が来たわけではなく、エッセイの依頼が来て、そこからタイトルや内容を自身で決めて執筆したのです。

2000年7月1日号よりスタートした連載は、まだ「ユルキャラ民俗学」と「ユルキャラ」が、カタカナ表記でした。

こうして売り込みできる場所を見つけたら、ここでも自分洗脳をフルに活かし、あたかも「ゆるキャラ」のブームが来ているかの如く「ゆるキャラ」について語るのです。

しかし、調べるうちに全国には膨大な数の「ゆるキャラ」がいるのだと分かってくると、月刊紙ではなく週刊誌でないと紹介しきれない…。そう考えたみうらじゅん氏は「週刊SPA!」に出向き、企画を持ち込みました。でも、そんなに話はとんとん拍子に行くはずもなく、なかなか週刊誌での連載は決まらなかったそうです。


4. 行き詰まったら、別の手段で種をまく

そこで、みうらじゅん氏は作戦を変更。1996年から、いとうせいこう氏と行っている「ザ・スライドショー」というイベントがありました。ここで、お世話になっているイベント制作会社に「ゆるキャラのイベントをやりたい」とプレゼン。得意の自分洗脳で「ゆるキャラ」ブームを熱く語り、担当者を惹きつけることに成功したのです。

そして、2002年11月23日に後楽園ゆうえんちの野外ステージで「第一回みうらじゅんのゆるキャラショー」が開催されます。当時、まだ名前もそこまで浸透していないにも関わらず、会場は満員に。「ゆるキャラ」が大きな話題となった最初の瞬間でした。

その後、直ぐに(2003年1月)「週刊SPA!」で念願の週刊連載ゆるキャラだョ! 全員集合」がスタート。着々と「ゆるキャラ」が世間に浸透し始めます。

ただ、当初は「ゆるキャラ」という名前を受け入れることが出来ない自治体もあり、掲載許可の電話をすると「うちのマスコットはゆるくない!」と叱られたこともあったそうです。それでも「ゆるキャラ」自体の認知度と需要が高まっていくにつれ、逆オファーも増えてきました。

世間一般に「ゆるキャラ」が周知される頃には、逆に「ゆるキャラ」という名前に寄せていくマスコットキャラクターも出現したそうです(笑)。

そして、かつては見向きもされなかったご当地マスコットキャラクターの中から、ふなっしーやくまモンのような大人気キャラクターも登場するようになりました


5. みうらじゅん的ネーミング術

「ゆるキャラ」に限らず、みうらじゅん氏が名付けたブームに名前は真逆にある者同士をくっつけているという特徴があります。

たとえば、彼が考案した「マイブーム」は、「マイ(私の)」という個人的なワードと、「ブーム」という社会的な現象をミックス。遠くにあるワードをくっつけることで新たな名前を作り出しているのです。マイブームはもはや常用語として使われるほど浸透していますよね。

他にも、絶対いらない土産物、こんなもの誰が買うんだろうと思ってしまう「いやな土産物」を「いやげ物」と名付けました。みやげ物ならぬ、いやげ物。みやげ物としては価値の低かったものが、面白い名物になるかのようなレトリックの妙があります。いやな土産物のマイナス部分をプラスに転換する見事なネーミング術と言えるでしょう。

他にも、ユニーク&奇抜でありながらもビジネスに応用できそうな仕事術がたくさん学べる本書。単純に読み物としても面白くてオススメです。お盆休みの読書にいかがでしょうか?

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