医者として、二児の母として。「どんな子どもにも、明るい未来と幸せに生きる権利を」Patientricity MedPartnersが目指す、患者主体の優しい医療とは(後編)
―Patientricity MedPartners設立にあたり、影響を受けた人物や思想はありますか
ハーバード大学教授、マイケル・E・ポーター氏が提唱した「CSV(=Creating Shared Value)」という考えです。日本語では「共通価値の創造」と訳されます。
企業が社会的責任を果たすという意味の「CSR」と混同されがちですが、「CSV」は企業の成長と社会的課題の解決を同時に実現させることで企業の存在価値と競争性を高める事業戦略です。
CSVは比較的新しい思想ですが、日本では昔から近江商人による①売り手よし②買い手よし③世間よしの「三方芳し」という言葉が根付いていますね。このCSVはもともとそうした言葉が浸透していた日本においては親和性が高いと考えられます。
医薬品業界においても、この思想が根付くべきだと私は考えます。①新薬を開発する製薬会社(売り手)、②最終的に医薬品の恩恵を受ける患者(買い手)③新薬開発や科学の発展を遂げた社会(世間)、この三者が良い関係であるためにはまずは医薬品開発をする製薬会社が患者ニーズを理解する必要があります。
そしてそのニーズを理解するためには、患者さんとの対話が必要不可欠です。患者さんが主体的に医療と関わること、そしてその環境をしっかり作り上げることが大切だと考えます。
病院での長い待ち時間と短い診療時間を表した「3時間待ち3分診療」という言葉をご存知でしょうか。揶揄で言われる言葉ではありますが、それだけ医療現場は忙しいのです。その3分間の中で医師が患者さんの状態や服薬状況を完璧に把握し、また患者さんも生活上で感じる全てのことを伝え、質問することはあまりに難しいことです。
であれば、製薬会社も、医薬品開発の時点から、医師からだけでなく、患者さん自身から直接話を聞き、彼らの声を取り入れなければいけない。病気、疾患、すべての人に起こりうる問題に対し「医薬品」を通じて解決を試みるのが製薬会社と私は考えています。そんな製薬会社をコンサルタントという第三者の立場で前面サポートすることで、CSVの実現を目指したいですね。
―医師、そして二児の母という経験はやはりPatientricity MedPartners設立に大きく関わっているのでしょうか。
もちろんです。製薬会社で勤務していた頃、稀少疾患の領域に携わることも何度かありました。医者の私でも聞いたことのないような稀な疾患もありましたが、それを理解するための学びの機会には恵まれていました。
彼らは日本全体で見たとき、大変マイノリティな存在です。高血圧や糖尿病など、身近で、誰もが聞いたことある疾患とはまったくの別物なのです。だから、彼らの声は非常に届きにくいのです。小児患者さんも同じです。子どもだから、彼らが主張することはなかなか大人には聞いてもらえません。
それならば弱い立場の人に代わって、私が彼らの声を代弁すればいい。彼らの声を医薬品業界に届け、本当に必要な医薬品を開発し必要な人に届けることで、彼らの力になりたい。今こそ、医師と医薬品業界の経験を通じて養った専門性を存分に発揮する時だと思っています。
また、二児の母としてもそう強く思います。
実は私はひとり親として、女手一つで2人の子どもを育てています。小さな子どもが家に2人いると、どちらかがちょっと風邪を引いただけでもとにかく大変。気軽に病院へ行き薬をもらうのも困難でした。
子どもを育てて初めて知った苦労。健康な子どもですらこんなに大変なのに、もしもそれが希少疾患をもって生まれた子どもだったら…と、その苦労は想像を絶します。
母親として想うのは、そんな親御様の苦労を少しでも和らげることができたら、ということ。
Patientricity MedPartners設立には、医師としての想いも、母親としての想いも、共に強く込められています。
―最後に、この記事を読んでいる患者さんや医師にメッセージをお願いします。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
日本で治験も含め医薬品開発をすすめ、患者さんに届けるまでには日本の患者さんや専門医の先生方の協力が必要不可欠です。私達と一緒に患者主体の優しい医療の実現を目指しませんか?
Patientricity MedPartnersの取り組みで何かご興味や共感を持っていただけたら、是非メッセージなど頂ければと思います。
患者さんのための医療を、患者さんと共に作ってゆきたい。
Patientricity MedPartnersの想いと活動が一人でも多くの人の心に触れ、一つでも多くの命を救えることを目指しこれからも歩み続けます。