なにをやっているのか
『血液循環シミュレーター』(早稲田大学/東京女子医科大学):血液循環の様子を再現した装置。各所に設置された計器で人工心臓等の性能を定量的に評価する。
『視覚障がい者用触図筆ペンLapico』:ペンに内蔵されたヒーターでミツロウを溶かして描画する。ミツロウは十数秒で固まり、描いた軌跡を指で確かめながら絵を描ける。
【「こんなモノがつくりたい」を実現する構想設計・製造コンサルティング・製造】
私たちの主な仕事は、試作開発(原理試作)・特注機械装置・特注ジグ等の製造における設計と組立、またそれに伴うコンサルテーションです。
簡単に言えば「こんなモノがつくりたい」というコンセプトアイデアを図面のない状態からでも具現化すること。
試作開発や特注品製作は、
①企画立案→②構想設計→③基本設計→④詳細設計→⑤部品調達/加工→⑥組立納品
というプロセスで進みます。
この②構想設計〜⑥組立納品までをサポートするのが私たち“コーディネーター”の仕事です。
では、たとえばどんなモノを作るのか?
「できるモノならなんでもやる」がモットーです。
【人工心臓開発から発展した試作開発のノウハウ】
特に強い分野が医療機器の原理・機能試作。
創業以前、1960年代から早稲田大学・東京女子医科大学の人工心臓研究開発にモノづくりの立場で関わり、学生への製図や加工法等の指導、各種装置や部品の加工製造を担ってきました。
1994年には『人工心臓血液循環シミュレータ』を開発。高度な血液循環環境が再現されたことで人工心臓開発における定量的評価性が向上し、後の動物実験減少へと繋がります。
また2012年の『大動脈弁形成術のための弁先寸法測定用具』開発(尾崎重之心臓外科教授 東邦大学医療センター)では、『大田区中小企業新製品・新技術コンクール』において優秀賞を受賞。
同年、東京女子医科大学・岩手医科大学・アスター電機の協同事業として『異種生体情報を統合表示する術中言語機能モニタリングシステム』を実用化しています。
この間、ご依頼元は医療業界を超え様々な(本当に様々な!)分野の試作開発に携わってきました。
視覚障がい者用触図ペン、テレビカメラ雲台、原子力発電関連部品、折りたたみ式カラーコーン(自社製品)、現代アート、博物館の展示用ジグ、シャボン玉発生装置、冷蔵装置内蔵テーブルなどなど…
事例は年間200〜300に登り、挙げればきりがありません。
このような長年に渡る試作開発事業に対して、2014年には経済産業省から『がんばる中小企業・小規模事業者300社』に選出されました。
モノづくりの最前線の「つくりたい」を実現する、超挑戦的で思わずエキサイトしてしまう、そんなことをやっています。
なぜやるのか
香川県立盲学校の美術の先生から届いた「こんなものができますか?」のFAX。全国十数社に送信したそうだが、返事があったのが安久工機だけだったらしい。『視覚障がい者用触図筆ペンLapico』の開発がここから始まった。
(写真は社長)依頼されたコンセプトアイデアから構想設計が始まる。今では珍しいドラフターで手書きを愛用。その理由は「右脳と左脳が一緒に動くからいいアイデアが浮かぶ」だそう。
【「つくりたい人」は増えてゆく】
今この瞬間も世界中の様々な分野でたくさんの人々がモノづくりで課題を解決しよう、人々を幸せにしようと取り組んでいます。
技術が発展し価値観が多様化する中、企業や研究機関にはより価値あるモノを最も必要とする人々に届けることが求められているのです。
同時に、今やモノづくりに挑戦できる機会が誰しもに与えられています。
無料の高機能3DCADでモデリングし、3万円の3Dプリンタで試作し、クラウドファンディングで資金を調達し、SNSで世界中にアプローチできる世界では、もはや開発者が誰か(企業の大小、法人か個人か)はほとんど意味がありません。
アイデア自体は無価値化に等しく、それを実現することにこそ価値がある。
つまり「つくりたい人」はこれからも増え続け、モノづくりへの要求レベルはますます高まります。
【「つくれる人」はたくさんいる】
他方、安久工機が拠点を置く大田区には、高度な基盤技術(切削・穴あけ・板金・曲げ・溶接・表面処理など基礎的な加工技術)を有する町工場が約3400社存在します。
それぞれ企業規模こそ小さいものの、狭い領域の技術を高めることで競合との差別化を図ってきた彼らは代々そのノウハウを継承し、他社には真似できない品質やスピードで、小ロットかつ難しい加工でも高いモチベーションで応えてくれます。
なおかつ大田区の町工場においては「仲間回し」という文化が発達しています。
これは対応領域が狭い町工場同士が互いに連携し、自社ではカバーしきれない加工を“仲間”に外注する体制を構築することで受注の幅を広げ競争力を高めたり、時には仕事を融通しあったりして不況の危機を乗り越えてきた先人たちの知恵なのです。
大田区以外にも、東大阪、燕三条、関をはじめ、高い技術とモチベーションを持った町工場のクラスターが日本のいたるところに存在します。
つまり「つくれる人」は既にたくさんおり、日本のモノづくりはまだまだ凄まじいポテンシャルを秘めているのです。
【「つくりたい人」↔︎「???」↔︎「つくれる人」】
『つくりたいものはある。でも誰に頼めばいいかわからない。』
試作開発においてよくある課題がこれです。
アイデアがあっても、構造が思いつかない。
構造が思いついても、図面が書けない。
図面が書けても、依頼先がわからない。
依頼先がわかっても、「加工できない」と断られる。
加工できる図面を書いても、信頼関係がなく交渉や管理がうまくできない。
なんとか全て乗り越えて形にしてみたが、組み立てた結果、設計上の致命的な問題が判明した。
こんなことがよーーーーくあります。
「つくりたい人」と「つくれる人」の間をつなぐプロセスが丸ごと機能していないのです。
この「間をつなぐプロセス」とはなんでしょうか。
それは言うまでもなく「設計」です。
・構造が思いつかない
・図面が書けない
・依頼先がわからない
・「加工できない」と断られる
・(加工業者と)信頼関係がなく交渉や管理がうまくできない
・組み立てた結果、設計の致命的な問題が判明した
これらは全て「設計能力」の問題なのです。
コンセプトアイデアや要求仕様を満たす構造を考案し、構造を形作る部品の形状を考えている時、優秀な設計者は同時に、材料選定・加工の手間を意識した設計・依頼先の選定(原価/納期/品質)・依頼先への相談・製造原価概算・組立性など最終工程までを意識して設計を進めます。
私たち安久工機には、50年を超える豊富な試作開発経験と大田区を中心とした町工場とのネットワークがあります。
だから私たちは“モノづくりのコーディネーター”として、知恵と技術のネットワークであらゆる「つくりたい」を叶え、モノづくりの最前線を切り拓くことに挑戦し続けることができるのです。
どうやっているのか
創業者故田中文夫と安久工機社屋。徒歩や自転車で行ける距離に高度な技術を持った“外注さん”の町工場が立ち並ぶ。安久工機の事業はこの超強力な職人達とのネットワークで「試作開発職人集団」を形成することで支えられている。
【私たちを支えるもの】
安久工機の事業は3つの要素によって支えられています。
《① 日本最大の町工場集積地、大田区で育まれた”ゆるやかな信頼関係”》
世界でも類を見ない町工場の集積地である大田区では狭い領域の技術に特化した工場が密集しています。そこには、共にモノづくりの栄枯盛衰を乗り越えてきた同志として、既存取引の有無や系列にこだわらない独特の仲間意識があります。
困ったら助け合うオープンでフラットな関係が成り立ち、試作開発に欠かせない、設計者と加工者のスムースで密なコミュニケーションが生まれることで、さまざまな課題解決につながります。
モノづくりを技術で支える“外注さん”は私たちにとって大切な経営資源です。
《② 信頼関係の元に蓄積された、それぞれの得意分野や職人の腕に関する巨大な”情報ネットワーク”》
たくさんの町工場との信頼のゆりかごに育まれながら、安久工機は新しいものづくりに挑戦する方々を50年にわたって支援してきました。
いつからか周辺工場の得意とする材質や加工技術に関する情報が蓄積され、ITの発達と共にその情報コミュニティは加速度的に拡大しました。
試作開発においては構想の段階で「どの工場に何をお願いできるか」を考えるため、情報量とアクセスの速さは設計者たるコーディネーターにとって不可欠の能力です。
《③ 創業以来50年、試作開発一筋だから培った多様な分野の開発経験にもとづく”アイデア力”》
あえて分野を絞らずに、できることはなんでもやる「ものづくりの便利屋」に徹することで、実に多様な試作開発に携わってきました。
代表的なのが人工心臓試作開発。まだ「医工連携」「産学官連携」という言葉すらない昭和40年代から大学研究室の学生への技術指導や医療機関への技術協力を行い、日本の人工臓器開発を陰で支えてきた経験があらゆる開発の要素として応用されています。
やがて「大田区で試作といえば安久工機」と評価いただくようになり、原子力発電部品製作、折りたたみ式カラーコーン「パタコーン」、視覚障がい者用触図筆ペン「ラピコ」など、多彩なプロジェクトに関わることで、固定観念にとらわれない自由なアイデアが生まれます。
【私たちが大切にするもの】
私たちは『幸せであること』を大切にします。
《大田区が、日本が、世界が》
大田区ひいては日本が世界最高の開発拠点となるために、モノづくりの楽しさと技術を伝承し、挑戦する人材を育成し、世界に最前線の製品を提供しつづけ、地域と社会に貢献します。
《お客様が》
同じゴールを目指すパートナーとして至誠を貫き、イメージを超えた実現にこだわり、全ての知恵と技術を惜しむことなく提供し、世の中にないモノを作る挑戦に力を与えます。
《スタッフが》
心身の健康を守り、あらゆる挑戦を称賛し、卓越しようとする精神を支え、共に幸せになろうとする努力を惜しみません。
《協力企業様が》
その技術力の高さに最大の尊敬の念を抱き、日々の支援に感謝を忘れず、困難に共に挑戦し、モノづくり産業の発展と進歩のため一丸となって取り組みます。