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小動物系デザイナー クリストファー氏の素顔

デザイナーという職業は、なじみのない人にとってはなかなか想像しづらいもの。奇抜な格好をしていそう、オシャレ感度が高そう、美大とか出てそうなどなど、なんとなくのイメージはあるけれど、実際は何をしている人なんだろう?
そんな素朴な疑問をひも解くべく、今回はアート県・香川県にあるデザイン事務所「(株)人生は上々だ」の女性デザイナー久利(くり)さんに話を伺ってみました。というか、社名からして、もうクセがあふれ出ていますが・・・


1.まずは自己紹介

どことなく小動物のような雰囲気のある久利さん。社内では「クリリン」「クリストファー」などと呼ばれているようで。そのノリは小学生か!とツッコミを入れたくなりますが、純粋な子供心を大切にしているのがデザイナーという人種なのかもしれません。久利さんに自己紹介をお願いすると・・・

「色々なガチャガチャを集めるのが好きです!ミニチュアの工具とか、ハマっていますね」

いきなりデザイナーらしい返しをいただきました。

デザイナーあるあるらしいのですが、久利さんも小さい頃から絵を描くのが好きだったようで。地元の高校の工芸科に進んで、立体物なんかのモノづくりも学んで、それでもやはり平面のデザインがしたい、とデザインの専門学校に進学。そこで「人生は上々だ」の代表である村上モリロー氏と出会います。

「モリローさんに初めて会ったときは、蛍光色の短パンを履いていて、ヒゲにメガネで、派手な人やなぁという印象でしたね。ただ、CCTアワード(香川で毎年開催しているクリエイティブアワード)を見に行ったときに、自分の好きな作品がモリローさんの手がけている仕事ばかりで。ビビッときたんです」


写真右側の眼鏡女子が久利さん。

当時、モリロー氏は社員の募集をしていませんでしたが、久利さんはイチかバチか、ポートフォリオ(これまで自分が作った作品集)を持ってアタック。すると一度、面接においでと見た目とは裏腹に優しい言葉をかけられたようです。デザイナーに必要なのは、行動力なのかもしれませんね。

2.デザイナーになってみて

「人生は上々だ」に入社して4年目。今や久利さんは、ロゴマーク、商品のパッケージ、ポスター、パンフレット、WEBサイトなど、さまざまなジャンルの制作物を手がけるデザイナーに成長しています。でも、やはり印刷物などのデザインと、WEBのデザインは勝手が違うようで・・・

久利さんの作品の写真

「WEBはどちらかというと、この色のボタンの方がクリックされやすい、とかデータに基づいて計算されたデザインが求められますけど、印刷物の役割は見る人の心に残るというか、情緒的な側面があるので、頭を切り替えて発想しています」

なるほど、デザインとひとくくりで言っても、作るものによって頭の使い方が違うんですね。そんな久利さんがデザインする上で大事にしていることって?

「見た人がどう思うか、を一番大事にしています。どうしても自分の色を出しがちなこともあるんですけど、それよりも見た人がどう思うかを優先するのがプロのデザイナーの仕事。高齢者の方が見るのであれば、大きいフォントを使ったり、そういうところに気を配らないといけないんです」

デザイナーってどちらかというと、個性をゴリゴリに出して勝負する世界だと思っていたんですけど、一概にそうとは言えないんですね。見る人の立場に立って物事を考えるって、いわばコミュニケーション力ですよね?

「そうなんです。デザイナーって、特にブランディングを手がける時なんかは、クライアントの核となる大事なものを引き出していく力が必要なので、本当にコミュニケーション力が大事だなって」

どこかデザイナーは、感性でモノを生み出す仕事だと思っていましたけど、実はコミュニケーションだったり、デザインするまでの設計だったり、そういった部分が結構重要なんですね。

「うちの会社が大切にしている9ルールのひとつに、『そもそも思考』というのがあって。デザインに迷ったら、『そもそも、これは何のために作っているんだっけ?』というコアなところに立ち返るようにしています」

3.ワクワクする瞬間


デザイナーはアウトプットのセンスだけではなくて、そこに至るまでの思考が重要なんだなぁと理解したところで、仕事のやりがいについても聞いてみました。

「自分が作ったもので、誰かに何かしらの影響を与えることができることですね」

確かに!デザインで人の心を動かすわけですから、どれは気持ちのいい瞬間ですね。他にも、これまでにワクワクするポイントがあったようで・・・「地域のお子さんや高齢者が集まれる施設のロゴマーク案を社内でブレストしていたときに、地域の居場所になりたいという想いを込めて、Googleの赤いピンのマークをモチーフにしたアイデアを出したんです。そうしたらモリローさんから『今の世代の感性ならではのアイデアや』って、初めてかな? 褒めてもらって」

蛍光色の短パンを履いたアートディレクターから褒めてもらえている光景も、なかなかシュールなシーンですが・・・

4.「人生は上々だ」について

「人生は上々だ」という社名をつけるようなデザイン事務所ですから、個性的な人も多いんですかね?

「営業にYさんという人がいるんですけど、あの人は一般人に化けるのがうまくて。一見めちゃくちゃ優しくて、めちゃくちゃいい人なんですけど、多分めちゃくちゃ変人なんですよ。何かを秘めていそうな感じがして。あんなに輪郭がつかめない人は初めてですね」

やはりデザイン事務所って一筋縄でいかないんですね。久利さんにとって「人生は上々だ」の魅力って何なのでしょう?

「モリローさんのビジョンそのものだと思います。あの人の根底には『クリエイティブの価値をあげる』という想いがあって。地方の中小企業はもちろん、この世の中もクリエイティブによって、もっと良くなることができる。そのためにできることを追求していて。そのビジョンを叶えるためのお手伝いができればと思っています」

意外にデザイナーって「自分が!自分が!」と前に出ていくタイプかと思っていたんですが、久利さんのような「後ろで支える」タイプの方もいるんですね。

「デザイナーにも色々なタイプがいますよ。私は性格的に自分が目立つというよりは黒子的なポジションで、尊敬するクリエイターを支える力になりたいと思っています」

あぁ、なんという師弟愛!こういったチームワークというか、さまざまな人の想いが連なって、デザインが生まれていくのですね。



そんな久利さんですが、アートディレクター田中雄一郎さんの推薦で「MdN新世代デザイナーズファイル 一流アートディレクターが推薦する気鋭の91人」に選ばれました。

「期待に応える」ことは簡単ではない。だからこそ、いつでも真剣勝負。
でもたとえどんな時でも「デザインを楽しむ心」を忘れないという久利さん、がんばれ!


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