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世の中の役に立つクリエイティブとは何か?を探しつづける毎日。

今回は、「(株)人生は上々だ」の代表であり、アートディレクター・デザイナー、そして吉田松陰とも称される村上モリロー氏が常々提言している「クリエイティブは、もっと世の中の役に立つことができる」という考えについて、色々と伺ってみました。


奇妙な社名について

最初に、ここはツッコまなくてはいけないでしょう。どうして「人生は上々だ」という、キテレツな社名になったのか。

「もともとデザイナーとして独立したときも、会社を立ち上げたときも『スクルト』という名前でやっていたんですよ」

スクルトって、あのドラクエの呪文?

「そうです。自分のパーティーのメンバーの守備力を上げる呪文です。地元香川の企業の力をクリエティブで上げていきたいと思っていたので」

うまいネーミングですね。スクルトという響きもいいし、そのままでも良かったと思うんですけど、なぜ「人生は上々だ」に変えたんでしょう?

「デザイン事務所としてやっていくうちに、地方でクリエイティブがもっと役に立つためには、ある意味で業界を変えなくてはいけないところもあるし、人材を育てる仕組みも必要だなと色々な課題が見えてきて。そもそも自分はブランディングやデザインを仕事にしていますけど、何のためにやっているんだっけ、と自社の根幹を改めて考えたんです」

これは、前回の「人生が上々になるための9ルール」に出てきたルール4「そもそも思考」ですね。

「自分はなぜクリエイティブをしているかと言ったら、誰かの人生を良くするためで。人に寄り添ってなんぼというか、人の人生をよくするために自分はクリエイティブをしているんだと再認識して」

それで「人生は上々だ」に変えたと。お名前の村上にも「上」という字が入っていますね。

「実はうちの家系って村上水軍の末裔なんです。瀬戸内の村上姓の人は結構みんなそうらしいですけど」




だからモリロー氏は海賊のように自由で、派手で、お祭り好きなんですね。村上水軍は海賊といったらあれですけど、潮の流れが変わりやすい瀬戸内海の水先案内人でもあったはずなんで、今はクリエイティブで、この時代の激しい流れの中で、企業の行き先を案内している、と・・・我ながらうまくまとめました。

キース・ヘリングの影響?

ところで、もともとモリロー氏がデザイナーを目指したきっかけは何だったのでしょうか。

「小さい頃から絵を描くのが好きで、よく大人たちが集まっているところにいると聞かれるじゃないですか。『モリローは大きくなったら何をするんや?』って。それで、絵描きになりたい!と言うと、大人たちはこぞって『やめとけ、金にならんけん』って言うんです」

大人はときに残酷です。無責任なことも平気で口にするんですよね。

「子供ながらめちゃくちゃへこんで、母親に相談したんです。絵描きになれんのかな?って。そしたら母親がキース・ヘリングの絵を持ってきて、『この人はAIDS撲滅のための活動をしている絵描きさん。人の役に立てば絵でも食べていけるんよ』と教えてくれて」

おお、すごい!お母様もなかなかのセンスです。

「当時はAIDSが何なのかはわからなかったですけど、何かの病気だってことは分かっていて、人の役に立てればええんや!と気づけたきっかけになりましたね」

ちなみにキース・ヘリングは、作品を通じてHIV感染防止のメッセージなどを発信していました。


必要とされるクリエイティブ

「クリエイティブは、もっと世の中の役に立つ」という考えの原点も、キース・ヘリングを知ったことにあるかもしれないですね。

「そうですね。クリエイティブって利益を上げるために使うものでもありますけど、もっと人の役に立つものでもあるはずで。Appleの製品だって、もちろんテクノロジーの開発技術はすごいですけど、そこにロゴマークやプロダクトのデザインの美しさとか、Think Differentというブランドコンセプトとか、クリエイティブの力があったからこそ、アメリカの片田舎で生まれた製品が、今や全世界の人々の暮らしに役立っているわけで」


クリエイティブは、翼のようなものかもしれないですね。企業が生み出したものを遠くまで届かせていくような。

「だから、地方でも真面目にがんばっている企業やお店、団体、農家さん、漁師さんなどがたくさんいる中で、もっとクリエイティブで役に立てることはあると強く感じています」

モリロー氏にとって、「人生は上々」ってどういう状態のことですか。


「人から必要とされている、ということだと思います。今は時代の移り変わりも激しいですけど、結局生き残っているのは『必要とされている会社』だと感じていて。クリエイティブも印刷からWEBが主流になりましたけど、それはWEBの方が人々に必要とされているから。じゃあ印刷に先がないかと言ったら、そうではない。『必要とされる印刷物とは何か』という考え方が重要なんです。いくら絶滅危惧種と揶揄される業界でも、必要とされるポイントを見つけて、形にすることができれば絶対に残っていきます。そのお手伝いをしていくことで、色々な人の人生を上々にしていきたいですね」

アートデザイナーという未来

そんなモリロー氏自身の人生が上々になるって、どういうイメージですか。

「自分の人生だけを考えるとしたら、正直ちゃらんぽらんですよ。もし自分のためだけに生きるとしたなら、朝起きてNBAを見て、軽くバスケして、バイトに行くみたいなのでいい(笑)。自分のためだったら何の欲望もないんです。人のためだから頑張れるというか。今は家族がいますから、そんなことにはならないでしょうけど」

では、人のために動くとしたら、どんなことがしたいですか。

「今考えているのは、アートデザイナーになろうと思って」

アートデザイナー?また聞き慣れない言葉が飛び出しましたね。



「本当に良いアートって確実に人の『心』を動かしますし、世の中に二つとない独自のアイデアで生み出されたものが多いので、媒体などの枠に収まったいわゆる「広告」よりも、世の中に必要とされて残されていく可能性が高いと思うんですよ。そこで考えたのが、誰かが大昔にラベリングした固定概念の枠に収まらずに、感動とともに課題をゴールに導く、ためのぶっ飛んだ表現を出し続けるアートデザイナー、みたいなジャンルです。」
「広告ってどうしても鮮度で勝負しているところがあって、それって裏を返せば「消費されやすい」と言っているようなもの。だから独自のアイデアに溢れたアート性の高い広告で、できるだけ長い間企業やお店や人の役に立てるようなものを作りたい。いわば「アート広告」みたいなものを作りたいんです。」

ますます、キース・ヘリングに近づいてきました。

「先日、和歌山の伝統工芸士の東さんという方から依頼を受けて、とあるメーカーの販売店に展示するアート作品のディレクション・デザインを担当させてもらったんです。そのとき自分が作った作品のコンセプトが、最終的にそのメーカーの年間テーマにまでなってしまって。そこで思ったのが、あれ?クリエイターの視点でクライアントの役に立つアートを生み出す仕事、アートデザイナーみたいなんもええんちゃうかって」


面白いポジションだと思いますよ。

「アート側の人からも、クリエイティブ側の人からも、めちゃくちゃバッシングされそうですけど(笑)。まぁそれは想像の範疇というか、関係のないことなんで。誰もやったことのない表現で、心に残ってしっかり伝わるアート広告ばかり作れるようになって、「もうこれはあのクリエイターにお願いするしかないね!」と思ってもらえたら、その時はもう唯一無二の存在になれるんじゃないかと(笑)。でもそれはやっぱり、デザイナーとして培ってきた思考が元になっているからこそ可能なんじゃないかと思うんです。そういう面白くて、人の役に立つことなら、どんどん挑戦していきたいですね」

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