コロナ禍でも売上4倍!ソラホテル軽井沢アウトレット 急成長のキーワードは「ホテル事業×DX事業で究極の顧客価値を創造」
軽井沢駅から車で約5分。美術館などが集まる人気エリア南軽井沢にあるのがSORAMICHIが経営するホテル「SORAHOTEL KARUIZAWA OUTLET」です。ITベンチャーであるSORAMICHIがなぜホテル経営を?この新型コロナ禍においても売上を伸ばし続けている秘訣とは?支配人の徳野智恵さんにお話を聞きました。
「ワンちゃんと一緒に楽しい時間を過ごして頂きたい…」その一心で売上4倍
ーSORAHOTEL OUTLETについて教えて下さい
SORAHOTEL OUTLETは、南軽井沢にある客室数17室のホテルです。2019年に当社が営業権を取得し、リブランドオープンしました。特徴はワンちゃんと一緒にお泊まりいただけることで、およそ9割以上のお客様がワンちゃん連れでご宿泊されます。オープン以来、多くのお客様にご利用いただいておりまして、売上はオープン当初から比べて約4倍となっております。
ー4倍とはすごいですね。その秘訣はなんでしょうか?
秘訣といってもごく当たり前のことなのですが、ワンちゃんとお泊まりいただけるホテルということで、いかにワンちゃんと一緒に楽しい時間を過ごしていただけるか、快適に過ごしていただけるかを考えて、施設やアメニティに工夫を重ねてきました。その結果、お客様にご評価いただき、何度も足を運んでいただくお客様も多くいらっしゃるホテルとなりました。そのおかげで、売上も順調に推移しています。
▲屋外ドックラン
▲屋内ドックラン
ーワンちゃんと快適に過ごすための工夫とは具体的にどんなことでしょうか?
当ホテルには、屋外と屋内にドッグランがございます。軽井沢というエリアは天候に左右されやすい観光地でもあるのですが、屋内にドッグランがあるため、天候の悪い日でもワンちゃんに遊んでいただける様になっています。以前から屋内ドッグランはあったのですがお客様が安心して遊ばせられるように人工芝を整備したりと改良をしております。
また、ワンちゃんが利用するグッズ、たとえばゲージやワンちゃん用のマナーベルトなどはすべて無料でご利用いただけるようになっています。以前は追加料金を設定していましたが、ワンちゃん連れのお客様が9割を占めることから、標準のサービスとさせていただきました。
もうひとつの特徴として、当ホテルに併設しているレストラン「Porter House Steak & Grill」は、ワンちゃんと一緒にお食事していただけます。
▲ワンちゃん用メニュー
ワンちゃんと一緒に宿泊できるホテルは他にもありますが、ワンちゃんと店内で一緒に食事が出来るレストランやホテルはとても少ないため、お客様に喜んでいただいております。レストランは、店内の専用熟成庫で熟成しているアンガス牛を、信州のクラフトビールや厳選したワインとともにお楽しみいただける本格的なステーキレストランなので、飼い主さまにお料理をお楽しみいただけるのはもちろんですが、加えてワンちゃん用のお食事メニューも複数ご用意しています。飼い主さまのお誕生日や記念日はもちろんですが、ワンちゃんのお誕生日のお祝いにご利用いただくことも多いんですよ。
ーワンちゃんとの滞在に特化し、徹底したサービスを提供されているんですね。そもそもワンちゃん連れのお客様に特化したのはなぜですか?
もともと取得したホテルには屋内ドッグランがあり、ワンちゃん連れのお客様がいらっしゃっていました。そうしたお客様をひきつづき大切にしたいという気持ちがきっかけです。リブランドの際にコンセプトを明確にしようとしたときに、よくよく調べてみるとワンちゃん連れのお客様が快適に過ごせるホテルが少ないこと、当時はコロナ前でインバウンド需要も活況でしたが外資系ホテルなど競合も多くありました。そこで、建物の特徴を活かし、ワンちゃん連れのお客様によりよいサービスを提供していくことで、喜んでいただけるお客様が多くいらっしゃるのではないかという方向性に至りました。以後、ご宿泊いただくお客様の状況などを見て、現在は「車で2時間半以内でお越しいただける、ワンちゃんを飼っていらっしゃる方」をメインターゲットとしています。
「企業向けの究極がDX事業、一般顧客向けの究極がホテル業」サービス業としての究極を目指していきたい
ーそもそも、ITベンチャー企業であるSORAMICHIが、ホテル経営を行おうと思った経緯を教えて下さい。
私が軽井沢に移住したのが2017年でした。移住のきっかけは、当時まだコロナ前ではありましたがリモートワークが徐々に進んできていて、東京以外の環境の良い場所に住みながら仕事をすることも十分可能なのではないか、と考えたことでした。
実際に軽井沢に住んでみると、昔から続く人気の避暑地・観光地ということで、観光地としてのポテンシャルは抜群です。しかし軽井沢という立地頼みの経営をしているホテルが多い印象でした。そのようなことを感じていたとき、ちょうどホテルが売り出されるという情報を得て、私たちが東京で積み上げてきたITやカスタマーサービスのノウハウを活かしたら、他のホテルとは違った経営ができるのではないかと考え、チャレンジしてみようと決断しました。
ー実際、ホテル経営にはITの技術などが活かされているのでしょうか?
WEBマーケティングや、運営のDX化などはひととおり当社の技術やノウハウを活かして効率化を図っています。しかしそれらはあくまで仕組みの部分にすぎません。本質的には「サービス業」として、いかにお客様に寄り添い、喜んでいただけるかを磨き上げていきたいという思いで運営を行っています。
たとえば、一度ご宿泊いただいたお客様については、ご本人のお名前やお食事のお好みといった情報はもちろんですが、一緒にお連れのワンちゃんの犬種、お名前、お好みについてもしっかりと把握し、次回お越しいただいた際にも快適に過ごしていただけるよう、データベースに記録しています。またご滞在中、安心してお過ごしいただけるよう、スタッフはお客様とワンちゃんをお名前でお呼びするようにしています。
また大切な思い出を写真にも残していただけるよう、ワンちゃんと一緒に写真撮影できるスポットを用意したり、ワンちゃん用のブランコを設置したりといった工夫もしています。こうした取り組みは、データ分析から導いたというものではなく、いかにお客様に喜んで頂くかを考える中で生まれたものです。
ありがたいことに、クチコミでも大変よい評価を頂いておりますが、特にスタッフに対する評価のお声を多くいただいているのが私たちとしても嬉しいことです。ワンちゃん連れのお客様は気に入っていただくと何度もリピーターとしてご宿泊いただいております。中には年に10回以上もご宿泊いただくお客様もいらっしゃるほどです。
結果的に、お客様に評価いただくことで、たとえば新規顧客の獲得にかかる広告費用が抑えられたり、クチコミで広げていただくことでターゲットにあったお客様にご利用いただけたり、スタッフに気さくに話しかけていただいたことがさらなるサービス向上につながるヒントとなったり、好循環となっています。
SORAMICHI代表の川本の言葉ですが、「IT・DXコンサル業は企業向けに価値を提供するサービス業の究極の業態であり、ホテル業は、一般のお客様に価値を提供する業態の究極の業態」だと、当社では考えています。一見、関連のないふたつの事業ですが「顧客への価値の提供」という点では、共通したものなのです。
DX事業×ホテル業のシナジーで、今よりもっと多くのお客様を幸せにする
ー今後のSORAHOTELの展開を教えて下さい。
ご宿泊いただくお客様に、より満足度の高いサービスを提供していくために、ひきつづき磨き上げていきたいと思っています。ホスピタリティというソフトの面はもちろんですが、いまの施設では叶わないハードの部分についても、新たな展開を行っていけたらと思っています。SORAHOTEL OUTLETで培ったノウハウを活かして、今度2店舗目、3店舗目と展開していくことも視野に入れています。
またIT・DX事業とのシナジーも出していけたらと思っています。特にシステム開発などでは、対面でお客様の反応を見る機会はどうしても限られるため「顧客サービスを徹底すべき」といった言葉も、深い理解が難しい部分があったりします。ホテル事業での取り組みや成功事例をうまく活用しながら、双方のサービスレベルを向上させていけたらと思っています。