金融事業者のガリバー化でベンダーのビジネスモデルは二極化傾向
金融市場に起きている変化の一つが事業者のガリバー化です。
アパレル業界を例にするとユニクロのように業界で圧倒的シェアを誇る存在(=ガリバー化)が業界を牽引する構図が金融市場でも起きています。
他業界でも起きているようにガリバー企業が台頭し、中小企業が統廃合されていくのと同様の動きが金融業界でも進んでいます。実際に証券会社は10年前に比べると数十社ほど減りました。この動きは、昨今の証券業界の委託手数料の無料化の流れもあり、ますます加速していくことが予想されます。
この状況下において、今後の金融ベンダーのビジネスモデルは大きく2極化すると考えられます。一つはSI系ベンダー。もう一つは人材派遣系のベンダーです。
<SI系ベンダー>
最も収益化しやすいビジネスモデルで、簡単に言えばガリバー企業に対してコンサルとソリューション開発を組み合わせたサービス提供を行います。
<ガリバー企業>
ガリバー企業の中には金融ベンダーを必要とせず、自社のシステム部門を内製化する組織も出てきます。そのときに必要な人材を提供するのが人材派遣型のベンダーです。前述したSI系ベンダーの主要企業以外の多くはここに当てはまります。
金融系プラットフォーマーとして二次関数的に収益を伸長させる
上記1の状況を踏まえて、当社の進むべき方向性は2つあります。
当社の強みを維持成長させる形での企業規模の拡大
SI系ベンダーをはじめ国内における多くのベンダーは、エンジニアの工数を売値に換算するような労働力をベースにしたフロー型の収益がメインで、これは前述の通り、ガリバー化の流れでより顕著になることが予想されます。
他「SI系ベンダー」が進める拡大路線は、当社が掲げるエンジニア一人一人の市場価値を最大化するという方向性とは異なります。
当社の成長の延長線上は、「SI系ベンダー」と対峙すべく、テクノロジーベースで競争力を高める事です。これはガリバー化が進む金融業界においても、中小の金融機関が革新的な顧客本位のサービスを提供する上でも重要なファクターであると考えています。
当社は労働集約型の収益構造の変革が最重要ととらえ、収益モデルの転換を図っています。
コンピューター・リソースを最大限活用し、エンジニア一人当たりの売上を伸ばすことはテクノロジー企業独自のレバレッジの効いた収益構造を実現するための施策です。
当社は中期経営計画を基に業績拡大を図っていきますが、当施策においてエンジニア一人当たりの売上を最重要KPIとしてマネジメント偏重型(非テクノロジー型)の他社との差別化を図ることが、テクノロジー・カンパニーとしての当社の強みを維持成長することに繋がります。
国内の主たる「SI系ベンダー」のエンジニア一人当たりの売上が3000万円前後に推移している中、当社は5000万円まで引き上げることを当面のミッションとしています。
他の金融ベンダーと一線を画す企業戦略
上記2-1で記載しましたが、他の金融ベンダーと一線を画す企業戦略が必要と考えます。
当社において収益モデルの転換を測るための具体的な施策として現在考案しているのが、サービス提供型の収益モデルへの転換です。いわゆるサブスクリプション型のビジネスモデルでサービスやプラットフォームを市場に横展開し、成長を図っています。
サービス提供型、つまりプラットフォーマーとしてビジネス展開を進めることによって企業の成長とともにエンジニア一人あたりの売上を二次関数的に伸ばしていこうとしています。
従来のSI系事業のみでは、エンジニア数が増えても基本的に一人当たりの単価は横ばいだったので、収益構造を大きく変える形になると予想されます。
もちろん、エンジニア一人が担う収益が大きくなれば、給与体系も欧米並みの水準が必要です。将来的には、国内におけるエンジニアへの対価をナンバーワンレベルにまで押し上げていくつもりです。
<なぜプラットフォーマーを目指すのか?>
金融業界以外の業界に目を向けてみると、「独立型ガリバー企業」と「プラットフォーム型企業」にビジネスモデルが二分されています。
アパレル業界であればユニクロやZARAが「ガリバー企業」であり、「プラットフォーマー型」の企業としてZOZOタウンが存在するようなイメージです。小売も同様です。コストコが独立型ガリバーなら、Amazonや楽天はプラットフォーマー型です。
※プラットフォーマー:インターネット上で企業や個人に対してサービスやシステムを提供、または運営する事業
これはどちらに優劣があるというわけではありません。ただ、テックベースで成長してきた当社は、以前からASP型やプロダクトのパッケージ販売など形でサービスを提供してきた背景があります。本格的にプラットフォーマー型へと傾倒していくのは、自然な流れと言えます。
また、現在金融業界においてプラットフォーマー型のプレイヤーは不在です。そういう意味では、当社はほかの金融ベンダーと一線を画す、唯一無二の存在を目指しているのです。
上記、プラットフォーマーにチャレンジできる企業は「金融系に強みを持つSIer」と「Fintechベンチャー」の要素が必要であるが、日本には数少なく、競合他社と比較しても当社は希少な存在であることがわかります。
具体的には、「金融系に強みを持つSIer」は上流のコンサルティングに重点を置いており、テクノロジーの力が欠けている場合が多いです。また、仮にイノベーション側の開発をしたとしても、既存事業の売上と比較すると利益があまりにも小さいため、同分野へチャレンジするメリットが少ないです。また、日々立ち上がっている「Fintechベンチャー」は、金融業界の深いシステム開発の知見がないため、苦戦をすることが多いです。
以上のことから、当社であればテクノロジー観点での強みを発揮しながら、金融業界の深いシステム開発の知見を持ちあわせているため、金融業界のプラットフォーマーの中心を担える可能性が高いと感じております。
改めて当社が取り組むべき成長戦略をまとめると下記の通り、「SI型ベンダー」との差別化要素をより明確にし、当社の強み・戦略を金融市場及び株主そしてエンジニアに認知頂くことが重要と考えます。
<プラットフォーマーとして成長するメリット>
ビジネスのあり方自体にもポイントがあります。
SI系ベンダーはいかにエンジニアが優秀で大きな利益を得られていたとしても俯瞰的に見ると、「金融事業者のコスト部門」であることは変えようがない事実です。
このとき、「売上を上げたいSI系ベンダー」と「コストをなるべく下げたい金融事業社」は事業の目的が競合し、歪みが発生する可能性があります。
例えば金融事業者から「この業務は簡単だ」と思われるとSI系ベンダーは安価で働くことになりますから、エンジニアは「この仕事は難しいものだ」とアピールをしかねないのです。これはパートナー企業の動き方として本質的ではありません。
そうではなく、「3日でできる開発なら3日でできると正しく伝え、その代わりに月額利用料という形で収益をシェアする」これが当社の目指す形です。金融事業者の収益部門となるべく、ビジネスを変革しようとしているのです。
その中で直近5年の間に当社が目指すエンジニア規模は、200名ほど。フラットなエンジニア組織としてテクノロジーを磨き、プラットフォームを金融事業者に活用していただきたいと考えています。
25年ぶりの技術革新がもたらした大きなチャンスにチャレンジする
<なぜこのタイミングで収益モデルの転換を図っているのか>
そもそも「なぜこのタイミングで収益モデルの転換を図っているのか」、その理由は現在は25年ぶりに大きなイノベーションが金融業界で起こりつつあるタイミングであるためです。
25年ほど前、委託手数料の自由化やインターネットの普及を契機にネット証券が登場したときはかなりのインパクトが生まれました。そして今再び、Web3.0やブロックチェーン、NFTといったトレンドワードにまつわる技術革新によって、金融商品やその周辺の仕組みは急速な発達を見せています。
ネット証券はこれまで電話注文していたものをブラウザで買えるようになったもので、言ってみれば店舗で販売していた商品をECで買えるようになったのと同じ状態でした。「既存の概念が少し便利になったもの」といってもいいでしょう。
一方でWeb3.0は、これまで存在しなかった概念がビジネスの中核を担うような、劇的なイノベーションを起こせるポテンシャルを秘めています。テクノロジーの可能性がイコールでビジネスの可能性なのです。
このとき、新しい概念を生み出すのはエンジニアの役割です。エンジニアのビジネスに寄与する度合いが飛躍的に向上するわけですね。これまでテックファーストのスタンスでFin Teach領域を手掛けてきた当社にとっては、またとないチャンスです。
<当社の競合優位性>
当社の強みは、これまでの20年で培ったレガシーかつコンサバティブな金融システムと開発技術をすでに保持しており、そこにアドオンする形で新たに創生される市場に取り組めることです。
具体的にはセキュリティ、データセンター、証券・FXソリューション、ECプラットフォームなどが既存のコア技術で、これらを基盤にして新たにNFT、高度通信技術、DeFi、AI、デジタル証券、仮想空間、暗号資産、次世代Eコマースといった分野に着手できます。
もちろん最先端技術に特化したスタートアップ企業はすでにいくつか登場していますし、ほかにもLINEグループなどのガリバー企業がWeb3.0に取り組む流れも見受けられます。しかし、当社と同規模の企業で金融ベンダーとしての実績やソリューションを持ち、新たなテクノロジーにも取り組めるレベルのエンジニアを抱えている企業は、国内では恐らく当社だけです。
特に金融システムは各事業者の中でガラパゴス化していますから、たとえ技術はあっても、業界の深い知見がないと参入障壁は非常に高くなります。その中ですでに長年の経験から顧客からの信頼をいただいており、新たなチャレンジもできる。これは当社ならではの環境だといえるでしょう。
当社のエンジニアは現在100名規模。現在のフェーズでジョインすれば、エンジニア組織の中の大きな存在として、巨大なビジネスを手掛けられるのです。