常勝チームを作るといったテーマは良く見かけます。それはリソースが豊富でチームの再編が比較的可能な企業には有効ですが、中小企業はそうはいかないものです。一冊の本を参考に、負けないチーム作りという観点でお話しようと思います。
Help the Helper: Building a Culture of Extreme Teamwork
この本は、NBAのインディアナ・ペイサーズのGMであるケビン・プリチャード氏と大学教授兼コンサルタントであるジョン・エリオット博士によって書かれた本で、効果的なチームワークを構築するための具体的な方法を紹介しています。
この本の中心テーマは「ヘルプ・ザ・ヘルパー」という文化で、チーム全体が互いに助け合い、協力することを重視しています。本書の一節には、次のような内容が書かれています。
シャーデンフロイデとは?
「シャーデンフロイデ」という言葉は、2世紀の古ドイツ語で「shaden(損害)」と「Freude(喜び)」を語源としており、現代ではネガティブなイメージになりますが、「他人の不幸を喜ぶ気持ち」を指します。
これは脳科学の研究でも比較的ありふれた感情、誰しもが持っている感情であることが確認されています。機能MRIを使った実験では、それが実証されています。
1950年代、心理学者のレオン・フェスティンガー氏は、人間が自己評価を行う際に他人との比較を基準にすることを提唱しました。特に職場における暗黙の競争心は、シャーデンフロイデを引き起こしやすく、また「サイレント・サボタージュ」と呼ばれる行動を誘発します。これも一種のシャーデンフロイデです。
チームおける具体的な兆候
しばしば、プロジェクトにおいて「なぜか仕事が進まない」という状況があると思います。これは「サイレント・サボタージュ」が発生している可能性があり、「仕事を遅らせる」、「ミスをする」という事象で現れるようです。
但し、可能性としてもう一つあるのは、社会心理学者クルト・レビン氏によって提唱された、組織における変革を段階的に進めるためのモデルにおいて、「解凍」というフェーズで現れる「変革の中で起きる抵抗」でも同様の事象が発現します。
どちらにせよこのような状況では、事業としては「shaden(損害)」です。メンバーはビジネスの目標に目を向けるのではなく、チームの内部対立や不満に集中してしまいます。
例えば「人間関係がちょっと」という形で相談を受けたりするリーダーは心当たりあるのではないでしょうか。これも一つの兆候かもしれません。
負けないためには予防が重要
シャーデンフロイデが蔓延する状況では、チームはすでに弱体化しており、勝つ事(会社でいえば利益を出す事)自体が非常に困難です。特にリソースが限られた中小企業では、チームの再編が容易ではないため、このような兆候に敏感でいる必要があります。
サイレント・サボタージュは、レビン氏の組織変革プロセスでの初段フェーズである「解凍」時期に該当するかもしれませんが、意図的に起こした改革の最中なのであれば克服のためのいくつかのアプローチによって、この段階での対応が可能です。
改革中ではないのなら、兆候が現れる前段で、ビジネスの目標に目を向けさせる事、つまり「予防」が非常に重要になります。
NBAクラスではなくても
NBAのような高い次元で勝ち続ける事が目標である場合には、本書は非常に参考になるかもしれません。とはいえ、中小企業でも前述のような点に注意しながら、少しでもそれに近づけて負けないチームにすることは可能だと考えます。
今回は「チームについて」考えるきっかけとなる一冊の本を紹介させて頂きました。
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