獣医師として創業し、臨床家としてではなく、企業家として新たな価値を創造する道を選んだ経緯について、お話しさせていただきます。
動物医療の現場から見えてきたもの
獣医師として動物病院の経営・運営に携わる中で、私は常に一つの思いを抱いていました。それは「まだまだ動物医療には改善の余地がある」という認識でした。
現場で直面する商品の課題や問題点、そして何より、飼い主様からいただく様々な声。それらは全て、動物医療の世界にはまだ多くの不足点があることを示していました。特に印象的だったのは、サプリメント事業を行っている企業の支援を通じて感じた、この分野における可能性と必要性でした。
ペティエンスメディカルの誕生
この経験から、私は動物病院向け栄養補助食品の開発に特化した会社、ペティエンスメディカルを設立することを決意しました。社名の「ペティエンス」は、ペット(Pet)とサイエンス(Science)を組み合わせた造語です。これには、ペットの健康を科学的に追求するという私たちの強い意志が込められています。
設立当初から、私たちは以下の3つの方針を掲げました。
- 動物医療や獣医師の診療の選択肢を広げること
- 安全で長期的に安心して使用できる商品やサービスを提供すること
- 市場の大きさに関わらず必要とされる商品を継続的に提供すること
代表的な製品として、BCAAを配合したサプリメントを開発・提供し、多くの動物病院や飼い主様から支持をいただきました。
転換点:ペティエンスメディカルからQIXへ
サプリメント事業を始めて10年が経過する中で、私たちを取り巻く環境は大きく変化していました。動物医療に限らず、ペット市場全体が進化し、飼い主様のニーズも多様化していったのです。
そんな中で気づいたのは、私たちが本当に提供すべき価値は何かということでした。それは単なる製品やサービスの提供ではなく、ペットと飼い主の生活の質を向上させること。
つまり「Quality of Animal Life(QAL)」の実現だったのです。
QIXの誕生とその使命
この気づきを機に、私たちは社名をQIXへと変更しました。
QIXには、「Quest for integrated Experience」という意味が込められています。これは、単一の商品やサービスだけでなく、ペットと飼い主の生活をより豊かにするための統合的な体験を提供したいという思いを表現しています。
従来のペット関連企業では、ペットフードや用品の販売、動物病院での診療など、それぞれのサービスが独立して提供されているケースが多く見られました。しかし、QIXは異なるアプローチを取ります。これらのサービスを有機的に統合し、ペットと飼い主がより一貫した、質の高い体験を得られる仕組みの構築を目指しています。
Quality of Animal Lifeが目指すもの
QALとは、単に動物が生きているという事実だけでなく、その生活の質全体を包括的に捉える考え方です。具体的には、以下の4つの要素に着目しています。
- 医療とケアの平等性:人間と同じように、質の高い医療とケアを受けられる環境づくり
- 生活の質と快適性の向上の支援:動物たちの日常を、より快適で豊かなものにする製品とサービスの提供
- 専門家との信頼関係構築の支援:獣医師やトリマーなど、専門家による適切なサポート体制の確立
- 社会システムの整備への貢献:人と動物が共に幸せに暮らせる環境や仕組みの構築
これらの要素を総合的に向上させることで、動物たちがヒト社会の中でより快適に暮らせる環境を創造することが、私たちの使命だと考えています。
これからの展望
QIXは現在、以下のようなビジョンの実現に向けて、日々新しいサービスの開発に取り組んでいます:
- QAL向上に必要な商品・サービス・事業を開発できる専門的で強い組織を作る。
- シンプルで無駄のない組織構造にする。
- 「働きやすく」「働きがいがある」職場環境を作る。
- ①高い専門性 ②やる気・活気・元気 ③目的のある個人が集まる組織にする。
- 給与水準が高くフェアに評価される組織・制度にする。
- QALを起点にQOL向上に貢献できる企業になる。
- QAL企業としての長期利益を極大化する。
- ペットと動物医療領域のQAL向上における日本を代表する企業になる。
- 企業の社会的な存在意義を広くとらえ、QAL向上からQOL向上に貢献できる企業へ進化する。
- 社会ニーズがありビジネスの力で解決できる全領域を事業領域とする。
おわりに
私たちQIXは、常に動物たちの幸せを第一に考え、人と生きる彼らの生活が、わたしたち人間と同じくらい豊かになることを目指し、その実現のために革新的なアプローチを続けています。これからも、科学的な裏付けのある製品開発と、心のこもったサービス提供を通じて、ペットと人がより良い関係を築ける社会の実現に貢献していきたいと考えています。
代表プロフィール
生田目康道:獣医師、企業家。1973年東京都生まれ。日本大学生物資源科学部獣医学科卒業後、動物病院の経営を経て、ペティエンスメディカル(現QIX)を設立。Quality of Animal Life(QAL)の概念を提唱し、ペットと人の幸せな共生を目指した事業を展開している。