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日本の医療が変わる瞬間を、自分の目で見てみたい。【共同創業者/取締役 遠藤祥】

医薬品の貿易業に携わって、20年が経ちます。

 

このニッチな産業が、日本で産声を上げたその日から、

私は、一貫してこの仕事に従事してきました。


医療機関も、物流企業も、もちろん私たちも、

文字通り手探りで進めてきた事業が、

1兆円を超える市場規模に育ったことは喜ばしい限りです。


いきなり感慨にふけてしまいましたが、

私の取引先は、今も当時も、顔の見えない海外の製薬企業です。


商慣習が異なる諸外国の担当者と、

取引という名の戦いになることは、日常茶飯事です。

 

思い出すだけでアドレナリンが吹き出るような数多のトラブルを乗り越えて、

我ながら、本当によくここまでコミットしてきたなぁと思います。

 

時代とともに、多くのものが変わり、私自身もその変化に適応してきたつもりです。


ただ、私がこの業界に身を置く理由は、当時から変わりません。 

それは、「日本の医療が変わる瞬間を、自分の目で見てみたい」という想いです。

思い返せば、この原体験と呼べるようなものは、

私自身が大病を患った際、医師と心が通じ合わなかった「寂しさ」にある気がします。

 

「この医者嫌い!」「病院なんて大嫌い!」


この瞬間は、このような感情になったわけですが、

紐解いて考えれば、それは医師個人や病院単体の問題ではありません。

 

それに、私が病院や医師を嫌いになったところで、何も問題は解決しません。

 

この寂しさとやり場のない怒りに対する私なりの向き合い方が、

自らの手で「医療の変化を促す」ということでした。

 

もし私が医療従事者ならば、自分たちでクリニックを作ったかもしれません。


もし私がエンジニアやデザイナーであれば、

諸外国のように医師の口コミ評価プラットフォームを作ったかもしれません。 

 

ただ、私が培ってきたスキルは、

国際的なネゴシエーションと、多様な関係者の利害をオーガナイズすることです。


だから私は、こうして私なりの関わり方で、医療に向き合っています。

医療業界は、変化が遅れてやってくる業界です。

 

未だにFAXで受発注が行われていたり、

破綻した予約制度で患者を受け入れていたり、

医師と患者の関係性は機械的で冷え込んでいたり…

 

コロナ禍で多少の変化は生じたものの、

私が思い描く理想の医療の在り方には程遠いのが現状です。

 

しかし、医療従事者ひとりひとりと直接話をしてみると、

誰一人として、悪い人ではない。

 

今のスタイルが「医療の当たり前」だから、その通りにやっているに過ぎない。

そこには正義があるわけでも、ましてや巨悪があるわけでもありません。


また、私たち民間企業が医療界に、非常識を感じるように、

医療界もまた民間企業に対して、非常識を感じています。

それは、リスクに対する向き合い方が根本的に異なるからです。


とはいえ、

「安全のためにリスクを避けること」と「現状維持を安全と解釈すること」は、

似て非なるものです。


私たちは、その事業の新規性ゆえ、リスクテイカーだと思われがちですが、

リスクテイクをしましょうと訴えているのではなく、

もっと良い選択肢、もっと豊かな医療の可能性を照らしたいのです。

 

それは、既存の医療にNO!を唱える「アンチ医療」という意味ではありません。

 

ビジネスの側面から、私たちの専門である海外医薬品という領域から、

医療に風穴を開けていきたいという「願い」です。

テクノロジーの変化とともに、患者側の医療リテラシーは向上しています。

 

皆さんも、ご自身の身体に不調があれば、まずはスマホで病状を調べるでしょうし、

病院で深刻な病気と診断されれば、それがどういうものなのか検索するでしょう。

 

さらに、自動翻訳、生成AIの台頭で、

海外の論文や医療当局に直接アクセスできるようになりました。

  

その結果、海外では当然のように使用されている医薬品が、

厚労省の認可が下りないために保険適用外になっているという現実に、

気づく人が増えてきています。

 

「厚労省の認可がない=科学的証拠(エビデンス)がない」と考える方は非常に多いです。

医師でさえ「海外から医薬品を輸入することは違法だ」と思っている方がいらっしゃいます。

 

しかし実際は、厚労省からの認可は、エビデンスだけでなく、

様々な政治的思惑や製薬企業の利権も含めた「総合的な判断」に基づいて、下されます。

また、医師が治療を目的に薬を輸入することは、もちろん何の問題もありません。


本当の意味で、エビデンスを重視するのならば、

盲目的に厚労省の「認可」に従うのではなく、研究データに向き合うべきだと考えています

(もちろん研究データにも思惑が入っていることはありますが、少なくとも「認可」よりも科学的だと考えています)


本当の意味で、患者中心の医療を目指すのならば、

患者の享受するメリットが、極大化される選択肢が提示されるべきだと考えています


私が実現したいことは、至極当たり前のことですが、

豊かな選択肢から納得感のある選択ができる医療社会の実現です。


言い換えれば、盲目的に追従するのではなく、自立的に調べる患者を増やすこと。

そして、枠組みの中で仕事するだけでなく、患者中心で考える医師を増やすこと。


これこそが、私が見てみたい医療の未来なんだろうと思うのです。

コロナは、社会のあり方を劇的に変えました。

一方で、そのコロナをもってしても、医療界を十分に変化させるには至りませんでした。

 

本当に私たちが医療界を良くすることはできるのだろうか。

あまりの壁の高さに絶望しそうになることもあります。

 

それでも創業1年目にして、たった3人で、4.8億の売上がありました。


私たちを必要としている、医師の方々、患者の方々がいらっしゃることが、

今の私の心の支えになっています。

 

最近、この業界に転職する方々も増えてきました。

若い方々と話すと、私自身もこの業界に染まりすぎていたと、

はっとすることがあります。

 

この業界で培った知識と経験を、若い人たちに還元し、

一日でも早く、医療界を前に進めたい。


一緒に医療を変えていける仲間に出会えることを、心から楽しみにしています。



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