樋田 康志さん
2016年より非常勤講師として留学生クラスの授業を週3日担当。現在は専門学校・就職コースのクラス担任業務および進路指導も行っている。
簡単に自己紹介をお願いします!
樋田康志と申します。好きな食べ物は蕎麦、寿司、ビールです。以前はトライアスロンが趣味で大会にも出場したことがありますが、今は股関節を傷めてしまいスロージョギングをしています。休みの日は私が夕食当番なので、私と妻、そして娘家族の食事を作りUberEATSしています(笑)。孫が私の食事を楽しみにしてくれているので作り甲斐がありますし、おいしそうに食べてくれる姿を見てまた1週間頑張ろうという気持ちにさせてくれます。
日本語教師になる前のご経歴を教えてください。
工業高等専門学校卒業後、電機メーカー系列のプラント建設会社で40年勤務し、主に上下水道プラントの建設に従事しました。その中で中国のプラント建設に携わったことが日本語教師を目指すきっかけとなりました。初めて中国の空港に降りたときにとても懐かしい気持ちになり、それはとても初めて来たとは思えないほどの感情でした。そして仕事で現地スタッフを関わる中で国籍が違えど、心と言葉があればつながれるんだということに気が付きました。それから日本に戻り中国とのかかわりがなくなってしまったとき、娘が進学する大学のパンフレットに日本語教師養成コースがあったので、「これだ!」と思い、娘と同じ大学の通信制の教育学部に3年次編入し日本語教師の資格を取りました。
TCJ(東京中央日本語学院)で担当しているクラスと、授業の内容を教えてください。
専門学校への進学を志望している学習者と日本で就職を目指している学習者が混ざったクラスを担当しています。クラスの日本語レベルはN2以上です。
専門学校への進学を志望している学習者も専門学校を卒業した後は日本で就職を仕事をしたいと考えていますので、社会に出てから役に立つ日本語の習得を私が担当しているクラスでは目指しています。特に円滑なコミュニケーションをはかるために、相手との関係性やその場の雰囲気などに適した言葉や表現が使えるよう「待遇表現」の指導には力を入れています。言葉は文脈の中でこそ発せられるものですから、ロールプレイを通して相手との関係、会話の場面などに配慮した待遇表現を学習します。また、言葉以外にも表情や目の動き、しぐさ、声のトーンなどの非言語コミュニケーションも重要なので、小噺や演劇で仕草や表情の学習をもしています。
就職を目指しているので、日本事情という授業も行い、俳句を作ったり、出店計画を作るというプロジェクトワークなども行っています 。
日々の授業や業務で大切にしていることは何ですか。
学習者が日本社会で不利益にならない日本語を使えるようになることが最も重要だと考えています。そのために講師が「教える」のではなく、「学習者達が主体的に調べ、考えて、話す」授業を心がけています。語彙や文法は学習者が自分で調べ、それを発表する授業にしています。また、会話ではロールプレイを行いますが、友人との会話、社内での同僚や上司との会話、店員とお客様との会話など、さまざまな場面を設定し、立場や関係性が異なる相手とのあいだでどのような言葉を使い、どのような表情や仕草をするかを演劇風に行い、学んでいただいています。
プレゼンテーションやプロジェクトワークでの授業でも、学習者達自身で場面や目的を設定し、その中でどのような日本語での表現をしたら良いかを考え、発表をしていただくようにしています。
TCJ(東京中央日本語学院)で非常勤講師として働く魅力を教えてください。
TCJでは、各期毎に使用するテキストと、使用範囲の大枠の指示は出ますが、そのテキストを使ってどのように授業するかは各講師に任されています。また授業内での時間配分や副教材、視聴覚教材の選定なども任されます。責任が重いとも言えますが、講師自らが試行錯誤し教案を作り上げていくところは大変魅力的です。このように私たち非常勤講師を信頼し、講師自身の成長につながる環境を提供してくれるTCJは働く上でとても魅力的であると感じています。
また講師たちが全体的に協力的で、常勤社員・非常勤講師関係なくいい関係が築けているのも魅力の一つだと思います。お酒が好きなメンバーで飲みに行くこともあり、授業の進め方や教材の使い方など、遅い時間まで熱く語り合いながら、お互いにアイディアを共有できる関係はとても刺激をもらえます。
日本語教師のやりがいや魅力を教えてください。
ただ授業をするだけではなく、日本での生活の中で、困難にぶつかった時に相談に乗ったりしながら、一人ひとりの学習者の成長に寄り添っていけることが、日本語教師の1番の魅力だと思っています。そのためには学習者達と信頼関係を築くことが最も重要だと思い、信頼関係を築くために、学習者達に「わかりやすい授業」をすることを心掛けています。「わかりやすい授業」には明確なゴールはありません。講師自身が勉強し続けるしかないのですですが、勉強する中で、自分自身の成長を感じることができるのも日本語教師のやりがいだと思います。また学校を卒業してからも付き合いが続いている学習者達がいます。日本で就職し、はりきって仕事をしている元学習者達とお酒を飲みながら近況を聞くのがとても楽しいです。
働く前に不安に思っていたことや、どのように解消されたか教えてください。
働き始めて直ぐに不安を感じたのは、「自分らしい教え方」でした。教え方というのは、講師自身の性格や信念に基づいて作られていくものだと思います。どうすれば「自分らしい教え方」ができるのかについて悩みました。様々な本を読んだり、研修会などにも参加しながら1年ほどで「自分らしい教え方」を見つけました。また、TCJ内部で講師間の勉強会があったり、気楽に教務主任をはじめとする常勤社員に相談したり、話し合えたりすることができる環境も良かったと思います。
今後の目標を教えてください。
今後、日本の労働人口が減少していく中で、外国人労働者を雇用する企業が増えていくと思います。そうした外国人労働者を雇用している企業向けの日本語教育にも携わってみたいと思います。特に、建設業は私が長年関わってきた分野です。労働者の安全、工事の品質管理のためにも日本語教育は必要であると考えています。