こんにちは!株式会社データック代表取締役の二宮英樹です。
今回の記事では、データックが目指す世界、医学への貢献方法について紹介します。
データックのビジョンとミッション
ビジョン「医学の知の創出を加速する」
私たちは「医学の知の創出を加速する」というビジョンを掲げています。このビジョンが生まれた背景を説明します。
私は医師の役割には二つあると思っています。
一つは「臨床」です。今ある医療技術や医薬品を使って、目の前の患者様を治療することです。しかし臨床を行っていると、治すことが難しい患者さんに出会うことや、わからないことに直面する場面が多々あります。
それらを解決するのが「研究」であり、医師の役割の二つ目だと考えています。研究にも様々な種類の研究が存在します。いわゆる臨床研究だけでなく、基礎研究や医薬品開発・創薬に関する研究もあります。
私たちはこれら全ての医学の知の創出に対して、貢献しています。
ここでポイントとなるのは「加速する」ということです。医学の知の創出のフロンティアを切り拓くのは、アカデミアや大学病院です。一方で、知の創出プロセスを標準化し、加速させ、量産していくことは、企業が得意な分野です。だから私たちは、「医学の知の創出を加速する」ことをビジョンに掲げています。
ミッション「リアルワールドデータの価値を最大化する」
私たちのミッションは「リアルワールドデータの価値を最大化する」ことです。医学の知の創出方法にはいろいろな方法があります。私たちはいわゆる後ろ向き研究の中でも、データベース研究、リアルワールドデータの活用にフォーカスし、事業を行っています。
※リアルワールドデータとは、主にレセプト、DPC、電子カルテ、レジストリを指しています。
私たちが行っていることは、単に「リアルワールドデータを活用しましょう」「データベース研究を行いましょう」ということではありません。
研究には目的があります。例えば、薬がより適切に使われるように、臨床的に課題となっている状況での有効性や安全性を検証する目的で研究が行われます。あるいは添付文書改訂やガイドライン改訂を目指して、研究が行われます。
一方でデータベース研究は、手段に過ぎません。数ある研究のうちの一種です。日常臨床の課題に基づく目的に対して、適した形でデータベース研究を使うことを提案しています。そのことを言語化する形で、「リアルワールドデータの価値を最大化する」というミッションを掲げています。
課題
私たちが取り組んでいる課題を2つ紹介します。
1. 日常診療下での研究も必要とされている
薬の承認時に必要となる治験は、ごく限られた健康な患者さんを対象に実施されます。しかし日常診療(リアルワールド)では高齢者、合併症がある方、腎機能が悪い方、小児、妊婦、授乳婦など様々な方がいらっしゃいます。
治験で対象となった限られた人たちに関しては効果があり、安全性が確認されていても、実際に目の前にいる患者さんに有効で安全とは限りません。このことは、日常臨床を行う医師にとって、大きな懸念事項です。そのような場合にリアルワールドデータでの研究、いわゆるデータベース研究が大変価値を発揮します。
2. エビデンスプラクティスギャップ
二つ目の課題は、エビデンスプラクティスギャップです。
研究を通じて様々なエビデンスが生まれます。エビデンスは論文という形で世の中に生み出され、その後ガイドラインや書籍等々、様々な形になって現場の人たちに届きます。このように、エビデンスが生まれてからプラクティス(日常診療)に反映されるまでにはとても時間がかかっており、この部分がエビデンスプラクティスギャップと呼ばれています。
専門性が高く学習意欲の高い臨床医は、最先端のエビデンスを活用しながら診療を行っています。しかしその最先端のエビデンスが一般の医師たちに届くまでには、けっこうな時間を要します。
有名な事例として、骨粗鬆症を例に説明します。骨粗鬆症は骨がもろくなっていき、折れやすくなる病気です。骨粗鬆症の状態になると、転倒しただけで脊椎の圧迫骨折や大腿骨の頸部骨折を起こしやすくなります。若い人の感覚からすれば、転んだだけで脊椎の骨や太ももの大きな骨が折れることは想像しづらいと思います。しかし骨粗鬆症が進行するとそういった骨折が起きて、寝たきりや歩行能力の著しい低下に繋がります。
その骨粗鬆症には、いろいろな薬があります。しかし骨粗鬆症の患者のうち、実際に治療されてるのは大体10%から20%弱ほどということがわかってきています。この実態を、エビデンスプラクティスギャップとして可視化することがすごく重要です。現状をしっかり数字で把握して、関係する方々に課題提起していくことが大事です。さらには、どうしてこのようなことが起こっているのかをもう一歩踏み込んで可視化できると、エビデンスプラクティスギャップの改善に繋がります。
データックのサービス
上記のような課題に立ち向かうために、私達はリアルワールドデータ解析、特にそのデータベース研究を行っています。対象となる顧客は製薬企業のメディカルアフェアーズです。
私達がサービスを提供する中で課題を解決するための手段について、説明をさせていただきます。
データックの目指す理想の組織
私たちが今目指してる理想の組織は、「最強のリアルワールドデータ専門集団」です。
その要素の一つである「データエンジニアリング」の重要性を説明するために、データベース研究の流れを紹介します。
研究をしていくにあたって、まずクリニカルクエスチョン(臨床上の疑問)がすごく大切になってきます。しかしクリニカルクエスチョンがあってもすぐに研究ができるわけではなく、リサーチクエスチョンといった形で検証可能な問いに変えていく必要があります。その上で研究計画を立てていきます。その後研究計画書、あるいはその解析計画書が立つと、その後のプロセスは比較的順調に進みます。初期の部分であるクリニカルクエスチョンからリサーチクエスチョン、そして研究計画といったところがかなりボトルネックになっている事例が多いです。そのプロセスに私たちが加わることで、研究自体を実現・加速させます。
私たちは、クリニカルクエスチョン〜リサーチクエスチョン〜研究開発というオペレーションを標準化し、高速で行っています。その効率化をするために大切なのが「データエンジニアリング」です。
私は大学病院、医療IT企業で働いた後に、データエンジニアリングの世界で修行をしました。その後医療の世界に戻ってきたときに、大きなギャップを感じました。統計の方々や疫学の方々は統計ソフトや解析ソフトを扱えます。SQLやPythonに長けた人も多いです。しかしデータエンジニアリングは、この業界にまだまだ不足しています。
データエンジニアリングの視点には3つの性質があります。一つは効率性です。同じような作業を繰り返さない、車輪の再発明のように他の人の成果や発見をどんどん活用するということです。上記を突き詰めていくことで圧倒的に効率的になります。
次に透明性と再生性です。研究の世界でよく見かけるのが、ある人が出した結果やそのために活用した手段について、他の人がチェックや再現ができないということです。これらはエンジニアリングによって解決できます。私自身、透明性と再生性について多くの経験があり、データエンジニアリングでの医学の知の創出を加速する体制を作っている最中です。
最後に
なぜ私たちが医学の知の創出を加速することができるのか、その唯一無二の理由を説明します。
私たちは、ステークホルダー間では製薬企業・臨床・アカデミアを、分野間では疫学・データサイエンスを繋ぐ存在です。技術、知識面で繋ぐだけでなく、それぞれのステークホルダーを繋ぎます。
例えば私の身近に研究者や臨床医がいますが、彼らにはリソースが足りていないという現実があります。それは人的リソース不足であり、資金不足ということもあります。
一方で製薬企業には資金があり、また企業として世の中のためになるような研究をしていきたいという方々もいます。しかし企業だけで研究を進めようとしても、臨床現場との距離が大きい場合、その研究は日常臨床の役には立たないということがあります。だから私たちが繋いで、企業、現場の医師たち、患者の方々あるいは国全体としてwin-winになるような仕組みをつくってきました。
また、アカデミアには最先端・最新の知見や研究があります。それは大体5年から10年ぐらいすると、実世界あるいは実社会に降りてきますが、この時間をできるだけ短くすることが重要です。アカデミアとしては最先端ではないけれども、企業にとっては新しくチャレンジングなテーマの研究こそ、私たちが率先して取り組んで、成果を出していくべきことです。
この記事でお話したような背景・想いを持って、事業を行っています。
いくつかの職種を募集していますので、興味のある方は気軽にご応募ください。