テクニカ・ゼン株式会社という会社は、技術を通じて「善い」仕事をするために作った。
「善い」仕事とは、お客様が喜ぶ仕事、働く仲間が喜ぶ仕事、工夫のある仕事である。仕事の先には自分の大切な人に自信をもって残すことができる世界が生まれる未来が待っている。
僕たちは、そういう仕事をするためにこの会社を作り、運営している。
「善い」仕事をするためにはプロでなければならない。不完全な仕事を提供すると、長期的には害しかもたらさない。仕事をするからには、プロとしての最高水準の仕事を提供できるよう研鑽し、アウトプットをし続ける必要がある。
同時に、一生懸命であることも大切だ。自分たちがすべき仕事(「やらされる仕事」ではない)に対して自分ができることを精一杯しなければならないし、他の誰よりも優れた仕事を、他の人を巻き込みながらできるように努めなければならない。さらに、自分だけができる仕事であれば持続性がないため、自分ができることと同じこと以上のことをできる人を生み続けなければならない。
同時に、仕事とは人と人の関係なので、人がどういうときに喜び、どういうときに不満を感じ、どういうときに悲しむのかを知っていることも大切だ。人を動かすためにはメタファーや美的感覚も必要だろう。多様性を理解し、自分たちの考え方に対して批判的な視点を持ちながらもポジションをとるという姿勢も求められる。
僕は、こんな仕事のスタイルに似ているのはローマ時代初期から中期にかけての皇帝たちではないかと思う。彼らは権力の座にありながら、時には自らの財を投げ打ち、時には批判にさらされながらもローマ市民に奉仕する存在だった。しかし、彼らの多くはその仕事を自分の義務として受け入れ、その職務を全うした。それが、彼らの誇りだったように思う。
小さな会社で、しかもコンサルティング業で献身と奉仕というと、今の時代、ブラック企業の典型だといわれるかもしれない。でも、献身と奉仕が「搾取」だと思うのであれば、小さな会社で仕事をすべきではないだろう。ましてや起業なんてしないほうが良い。(僕の会社では「搾取」というようなことはしていない。)
本当の意味で、献身と奉仕のスタイルで仕事をすると、仕事をする人は精神的に報われる。幸せに仕事をしている人は、僕の知る限り、誰もが献身的でお客様やその先にある社会に対して奉仕をしている。ライフワークバランスが崩れるかどうかはあくまで当人が決めるべき領域で、会社が関与するところではない。当社にはノルマという考え方はないが、給与に対して妥当なアウトプットという考え方は導入している。その数値も、社員に強引な営業をさせない目的で、一般的なコンサルティング企業に比べると合理的な数字となっている。僕は、働き方は当人が決めたらよいと思っている。プロとして仕事をするのであれば、自分の人生に責任を持つことができなければならない。会社は、法律を守る義務があるので、法律に外れないよう監視するだけだ。
僕の会社は今、データプライバシーとAIという非常に重要な分野で仕事をしている。様々なご縁のおかげで、僕はその先端に関わる機会をいただいている。それは別の言葉を用いるなら、日本にあるテクニカ・ゼン株式会社という組織を通じて、世界的な議論の中心で仕事ができるドアが開かれたということだ。日本という閉じられた社会で、こういう場所ができたということは、世界で通用する仕事をしたい人にとっては大きなチャンスだと思う。日本人は賢い人が多いので、僕は機会が与えられれば活躍できる人も数多くいるだろうと信じている。そういう人がテクニカ・ゼン株式会社の仲間となって、共に善い仕事に励んでくれたら、これ以上うれしいことはない。