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漆芸経験者・新卒で入社したCさんが金継ぎ職人になるまで【前編】

漆や金継ぎのスキルを持つ方々からもつぐつぐへの応募が多くあります。経験者がつぐつぐに入社してからの育成プロセスや日々の業務についてリアルに知っていただくために、新卒のCさんの経験をベースに紹介いたします。

つぐつぐに入社するまで(応募・内定・インターンシップ)


Cさんは高校で3年間漆を学び、大学ではデザイン学科に進学し、自分で金継ぎにも挑戦した。大学では「金継ぎショップ」の企画提案を手がけ、子供と親の思い出に残るアート作品にすることを目指しました。このプロジェクトを通じて金継ぎに深い興味を抱き、漆の固定概念を打破したい気持ちと、環境問題にも関心を寄せました。

つぐつぐでは割れた器をアップサイクルし、金継ぎ器を販売・レンタルするなど、多岐にわたる活動を展開しており、これに魅力を感じました。学生時代は独りで作業することが多かったですが、広い視野での活動を望んでいました。

ある日Cさんはつぐつぐの全国放送を見て、日本の伝統的な手仕事を身近にしたいというビジョンに共感し、新卒募集の有無に関わらずつぐつぐに応募しました。入社前の夏休み中には、つぐつぐ恵比寿店で5日間のインターンシップを経験し、金継ぎの実践を行う傍ら、当時未発売だった蒔絵キットのデザイン作成にも携わりました。

入社の1年前にウェブ面接を経て内定を得ていたCさんは、翌年の4月に社会人としてデビューします。つぐつぐは組織やチームワークが重要な「会社」であるため、社内での動き方を学びつつ、金継ぎの技術を向上させる日々を過ごしています。

金継ぎ師ポジション入社1ヶ月目


つぐつぐでの金継ぎの手法は、大学時代に独学で行っていた金継ぎの手法と異なっていたため、最初につぐつぐ独自の手法を学ぶことからスタートしました。金継ぎは職人によって手法が異なり、同じ方法が存在しないため、つぐつぐは様々な手法を網羅し、最もシンプルで美しい手法を確立していました。他の本や職人の手法が誤っているわけではなく、つぐつぐが販売する金継ぎキット「つぐキット」を使用する生徒や購入者が混乱することなく統一された手順を学べるよう、そして、日替わりのつぐつぐの講師陣が全員同じ手法を教えることを目指しているからです。

大学時代は素材を集めて自由に行っていた金継ぎも、つぐつぐに入社すると、研磨の程度や塗布の厚みなどを細かく確認・指導されました。さらに、「電動ルーター」を使用してヒビを掘ることも初めて経験しました。つぐつぐの金継ぎ修理では、電動ルーターでヒビに溝を掘ることが不可欠です。他の職人はカッターを使用することもありますが、電動の方が速いためこの方法を採用しています。しかし、手が震えてしまうと誤った箇所を掘ってしまい、不要な傷をつける可能性があるため、金継ぎの中でも最も慎重に行うべき工程となっています。破損の種類や器の性質によっても、工程が多岐にわたります。最初からお客様の器を直接触れることは許されないため、金継ぎ事業部長が練習用の器を提供し、電動ルーターの使い方を学びました。


また、社会人1年目であるため、言葉遣いから指導を受け、電話対応も初めて経験しました。急な電話に対応するのが初めてで不安でしたが、事務の方が電話応対マニュアルを用意してくれたおかげで、それを参考にスムーズに対応できました。その他、これまで触れたことのないレジやWindowsのパソコンを扱い、会社のパソコンを使用しての顧客情報管理や入力作業も行いました。接客では、お客様や生徒様の顔を覚え、名前で話しかけることを努力しました。

先輩の指導を受けながらも、メモを取ってもう一度確認することが多く、それが煩わしい感情を抱いたこともありました。今後入社する新人のためにも、自分で確認できるようなマニュアルがあれば良いと思い、今後作りたいと考えています。小さな会社なので、みんなで協力してより良い環境を作り上げていきたいです。

金継ぎ師ポジション入社2ヶ月目

漆芸と金継ぎの経験を持つことから、金継ぎ教室講師としてのデビューを目指すタイムラインが未経験者よりも早く、2ヶ月目から講師としてのトレーニングが開始されました。3ヶ月目には本格的なデビューを目指します。

金継ぎ教室講師としての特訓方法は、先輩が生徒役を演じ、自分が講師として指導すしたり、逆に先輩が講師として自分に金継ぎを教えるといった練習を積みました。また、金継ぎ未経験の新入社員に教える実践も行い、その経験から自信を得ました。ただし、一つの工程に多くの指導ポイントがあるため、2〜3工程の練習には1〜2時間もかかり、多くの時間を費やしました。

講師の特訓と同時に金継ぎ修理も行っていましたが、修理のスピードが先輩たちよりもまだまだ遅いことから、社内の目標期日に遅れることが発生し、それはショックでした。時間配分の難しさを痛感しました。

金継ぎ師ポジション入社3ヶ月目

金継ぎ教室講師としての社内特訓をクリアし、とうとう実際の生徒に指導する日が訪れました!最初から多くの生徒に同時に教えるのは難しいため、最初は先輩に助けてもらいながら、1人の生徒に対して指導を行い、徐々に担当する生徒数を増やしていきます。最初は3人の生徒に同時に指導するのも大変だと感じたそうですが、現在では一度に6人以上に教えています!経験を積んで慣れていったとのことで、5〜6回くらいで完全に慣れたそうです!

「金継ぎ講師にとっては、実践が最も大切です。慣れることでスキルが向上します!」とCさんは話しています。

金継ぎ師ポジション入社4ヶ月目



Cさんはつぐつぐ恵比寿本店で3ヶ月間にわたり、金継ぎに関するさまざまな特訓を受けた後、浅草店に異動しました。そこで、実際に金継ぎ教室のクラスを担当するために、現在の講師から引き継ぎを行いました。

恵比寿店と浅草店では、店舗の雰囲気が異なると感じたそうです。店舗の規模やデザイン、モノの配置だけでなく、通う生徒の雰囲気も異なりました。恵比寿店ではプロ金継ぎ師を目指す生徒が多い印象を受けましたが、浅草店はゆったりとした雰囲気で、金継ぎを楽しみながら会話をしにくる方が多いようです。そのため、金継ぎの適切な指導に加えて、「トーク力」が必要であると感じたとのことです。Cさんは、自身よりも年上の生徒と世間話を交えながら金継ぎを指導し、空いた時間には金継ぎ修理も行うなど、マルチタスクをこなしています。

「新卒なのに自分より年齢が高い方とお話しするのは難しかったですか?」という質問に対して、「実は年齢が高い方が話しやすいんです。昔アルバイトで、年上の方々に囲まれて働いた経験があったので。」と。金継ぎ教室では、毎週通う生徒の年齢層が高い傾向がありますが、「金継ぎワークショプ」では1時間で金継ぎの仕上げだけを体験するため、観光に来ている若いお客様も多く訪れます。

金継ぎ師ポジション入社5ヶ月目

金継ぎ教室の講師として、浅草店での担当を始めたCさんは、2ヶ月で順調に慣れていきました。そして浅草店で3ヶ月が経つと、新しく教室に入会されるお客様が増加しました。新規の生徒さんたちは初回から多くの割れた器を持ち込むため、講師はそれを見て金継ぎ修理計画を即座に決定し進めます。瞬時に器を見極め、生徒さんに今後の計画順序を伝えるのはなかなか難しい作業ですが、Cさんは経験を積みながら、スムーズに対応できるようになりました。

5ヶ月目には、「金継ぎワークショプ」の講師としてもデビューしました。つぐつぐでは、「伝統金継ぎワークショップ」と「簡易金継ぎワークショップ」の2つの種類が行われています。先輩から10〜15分の簡単な指導を受けただけで、Cさんはこれらのワークショップをすぐに教えられるようになりました。金継ぎの経験があり、既に難易度の高い「金継ぎ教室の講師」として経験を積んでいたことから、1時間限りのワークショップでの指導には難しさを感じなかったと述べています。

しかし、参加者が満足する教室やワークショップを提供するために、ボイスレコーダーを使用して先輩の講義やワークショップの声を録音し、自宅で再度それを聞いてノートにまとめ、改善に努めました。メモがしにくい場面でも、録音が役立ったとのことです。

社長コメント「会社の提供する教育以外にも、お客様に良いサービスを提供したいという強い意欲から、自ら工夫し、成長していく姿勢は非常に素晴らしいものです。新卒とは思えないその姿勢に感銘を受けます。今後も、若い世代ならではのアイディアや提案を期待しています!」

金継ぎ師ポジション入社6ヶ月目

6ヶ月目は、これまで習得したスキルや業務を反復して実践していきました。この期間から、1時間のワークショップに参加するお客様が増加し、ますます慣れていったとのこと。金継ぎの手法だけでなく、金継ぎの歴史などもお客様に深く理解していただくために、つぐつぐでは「金継ぎ紙芝居」が提供されています。その紙芝居を用いたプレゼンテーションも向上させていきましたす。伝統金継ぎとは異なり、簡易金継ぎのワークショップでは、合成接着剤を使用してその場でアクセサリーを制作し、硬化するまでの途中で約10分の待ち時間があります。Cさんはこの時間をただ待つだけでなく、お客様が楽しむ方法を追求しているそうです。

現在、Cさんはつぐつぐ内で自身が担当する金継ぎ教室1講座に参加する生徒数が最も多く、トップクラスに位置しています。「金継ぎ教室の講師は、誰もが最初は未経験だと思うけど、やりながら、教えながら、自分も真剣に学べば、生徒さんもついてきてくれるから、心配しないで!」


次の記事で、Cさんが入社7ヶ月目になり、正社員になってからの様子をご紹介します!後編もお楽しみに!

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