こんにちは!アイムデジタルラボのサービスデザインチームです。今回から3回に分けて、「三越伊勢丹リモートショッピング」のユーザーリサーチの話についてご紹介します。1回目の本記事では、ユーザーリサーチを実施した経緯とお客さまインタビューの進め方についてのお話です。実際のプロセスに沿って、以下の3ステップで紹介します。
リサーチ設計
目的の設計:なぜ、今ユーザーリサーチが必要だったのか?
アプリをリリースしてからの数カ月間、メディアにも取り上げていただき、導入ショップを増やしていくことで、徐々に利用者数も売上も伸びていました。しかし、何度もリモートショッピングでお買い物をしてくれるお客さまがいる一方で、アプリをダウンロードしても使わないお客さまも多くいました。「その違いは何だろう?」と疑問に思い、“リモートショッピングの利用実態を確認し、課題を見つける” ためにユーザーリサーチを実施することといたしました。
上記のリサーチ目的に合わせて、以下の2つの問いを設定しました。
(1) リモートショッピングアプリの利用価値を明らかにする
(2) リモートショッピングアプリの利用障壁を探る
このリサーチ結果を元に、利用価値を広く訴求して多くの人々に使ってもらう、利用障壁を改善して利用者の満足度を高める、というようにサービス発展につなげるために、ユーザーリサーチプロジェクトを発足させました。
手法の選定:どのようなユーザーリサーチを行うべきか?
続いて、上記の2つの問いを明らかにするために、どのようなユーザーリサーチを実施するべきか、リサーチ手法とリサーチ対象を検討しました。
ユーザーリサーチの手法としては、大きく定量調査と定性調査があります。チャットで買い物をするリモートショッピングの体験は、ECと比べてまだ浸透していません。そのため、お客さまが実際にどのように感じて利用しているのか、お客さまの声を直接聞いてみたいという想いから、お客さまの心理・行動を深く掘り下げて聴く、デプスインタビューによる定性調査を行うこととしました。
インタビューの対象は、リモートショッピングアプリを利用して複数回のお買いものをしているお客さまとしました。そのようなお客さまはリモートショッピングの価値を理解していただいている一方で、利用する上での不満や要望も伝えてくれると考えたからです。
この時点で、以下のようなリサーチプロセスを定めまして、次の調査設計、そしてリサーチ実施へと進んでいきます。
調査設計:お客さまの声を聴くための設問を検討する
インタビュー協力者にお声がけを進めることと同時進行で、インタビュー質問の設計を行いました。インタビューイーのお客さまに本音で話していただくためには、最初にお客さまとの信頼関係(ラポール)を築くことがとても重要です。そのための質問として、世間話や普段のお買いもののことなど話しやすい話題から始め、徐々に趣味やご家族のことなどお客さまのプライベートに関することというように、質問の流れを組み立てていきました。
場が温まる頃に、本題のリモートショッピングのことについての質問に入っていきます。リモートショッピングを知ったきっかけや購入した商品のこと、アプリの使い勝手やスタイリストの接客のことなど、私たちが聞きたい質問のリストを作っていきました。注意した点としては、期待する答えを促すような誘導質問にならないように問いかけることです。お客さまに自由な発言を促し、回答に応じてインタビューアーの判断で柔軟な対応ができるように、大まかな流れをまとめた半構造化インタビューとしての質問を設計しました。
リサーチ実施
インタビュー準備:百貨店メンバーによる段取りと準備
インタビューの実施は、百貨店事業部のデジタルサービス運営部の皆さんのご協力のお陰で、かなりスムーズに行うことができました。インタビューにご協力いただけるお客さまにお声がけいただき、日程調整や事前説明などの連絡をとても丁寧に行っていただきました。
また、インタビューはコロナ禍でのオンラインインタビューだったため、インタビューアーの顔も明るく見えるようにリングライトなどの照明機材も用意してもらい、万全の体制でインタビューに臨みました。
インタビュー実施:オンラインインタビューの実施
インタビュー当日は、インタビューアー2名・記録スタッフ1名・タイムキーパー1名と4名で実施しました。ビデオ通話に不慣れで緊張されるお客さまもいたため、最初のラポール形成をきちんと行うことや、相槌などのリアクションを大きくすることも強く意識しながら進めました。
インタビュー中は、店頭での接客経験がある百貨店事業部の方々の高いコミュニケーションスキルのお陰もあって、お客さまの本音やプライベートなことも自然に聞き出すことができました。質問設計時に私たちが期待していた以上のことを話してくださったお客さまもいて、インタビューは無事に実施することができました。
分析・活用
調査分析:インタビューから得られた成果を整理
インタビューを終えてから、今回実施した複数名のお客さまのインタビュー結果を整理しました。当初のユーザーリサーチ目的に合わせて、リモートショッピングの利用価値と利用障壁について得られたことを、複数のインタビュー回答の声をまとめていきました。
リモートショッピングの利用価値については、私たちが思っていた以上に、「店頭と変わらず買い物ができる」ということにご満足いただけているようでした。特にコロナ禍で店頭へ足を運びづらくなったというお客さまから、「三越伊勢丹が家に来てくれたようで嬉しかった」という声には、リモートショッピングが大きな価値を提供していることを実感できたのは、私たちにとっても嬉しいことでした。他にもスタイリストの応対や画像を送ってもらえることなどを高く評価いただき、リモートショッピングの利用価値を再認識することができました。
結果共有・結果活用:ユーザーリサーチにおける課題と今後の取り組み
一方で課題も残りました。今回のインタビューでは、リモートショッピングアプリの利用障壁となる、新たな課題を見つけることができませんでした。今までに現場のスタッフから上がっていた課題を再確認できたということはありましたが、インタビューを行ったからこそ見つかった課題というものはほとんどありませんでした。
これは、何度も利用いただいているお客さまにはご満足いただいていることの表れでもありますが、課題を見つけるためにはもっと多くのお客さまの声を聞くこと、まだ使っていないお客さまにも対象者を広げてみることも必要と感じました。
これらの反省点も踏まえた、さらなるユーザーリサーチを継続しております。ぜひ次回の記事にもご期待ください!
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