2021年10月22日(金)に開催されたソフトウェアレビューシンポジウム 2021(JaSST Review'21)において「三越伊勢丹におけるデジタルサービスのつくりかた」という講演をしました。資料は以下の通りです。
講演の経緯
本イベントのテーマは「価値を実現するためにレビューができること」で、次のような経緯で講演を依頼いただきました。
(三越伊勢丹リモートショッピングの開発を)どのように「うまく」行い、どのように「調整」を行っていったのでしょうか?
これらの内容は、実装を始める前に「価値」を見つめ直し、各関係者とMTGを行い、内容に対してレビューしながら進めていったはずです。「そのときに頭の中で考えていったことを聞きたい!」と講演を依頼しました。
そこで今回は、サービス開発の中で、我々が何を考え、どう進めていったのかをまとめ直してみました。
いい感じに調整する
我々が開発しているサービスは現場と試行錯誤をしながら作り上げています。そうした過程では「慎重に時間をかけて調整する」のではなく「(スピード感が出るように)いい感じに調整する」ことが必要です。
社内でプレゼンのための議論をしているとき「そういえば、『いい感じの調整』ができている時って、ミーティングでこんな発言が多くない?」という話になりました。それが次の3つです。
・「とりあえずこれで」
・「先週と状況が変わったので」
・「あとはこっちで決めます」
とりあえずこれで
試行錯誤を前提とすると「絶対に必要なことだけを開発し、使ってみた結果から次に必要な機能を作っていく」という進め方が必要になります。
これができていると「とりあえずこれでやってみて、それから段階的に改善していきますかね」という言葉が出るようになります。
先週と状況が変わったので
現場との試行錯誤の中では、刻々と状況が変わっていきます。新たにリリースした機能に対するフィードバックであったり、新しいショップがサービスに参加してくれたり、ということです。
そのため週次で役員も含めた意思決定ミーティングを開催しており、その場で優先順位を判断して進めて行っています。
このミーティングでは「先週と状況が変わって、〇〇が△△になったため、優先順位の変更をしました」という発言がよく出ます。
あとはこっちで決めます
三越伊勢丹のような大企業になると、どんなサービスであれ多くの関係者がいます。そうした関係者に対して同じような粒度で調整している時間はありません。そこで相手によって合意の目的と手段を使い分け、必要な合意をしたら「あとはこっちで決めますね」と言っています。
たとえば役員などの意思決定者とは「ビジネスの目的」をもとに「案件の優先順位」を合意します。重要なことは「機能ではなく目的で案件の価値を説明する」ことです。このために使うのがエピックです。
次に現場とは「完成したサービスの姿」で合意します。このために使うのがサービスブループリントです。一般的には業務フローと呼ばれているものにあたります。サービスブループリントでは、時間軸を中心にお客様の行動、従業員の業務、システムの挙動を並列に記述していきます。
最後に開発チームとは「開発すべき機能の動き」を合意します。これは機能そのものの説明ではなく、機能を使ったときにどのように動くのか?を記述したストーリー形式になります。これが受け入れ条件(ストーリーチケット)」です。
※講演では具体的なビジネスケースをもとに実例や記述にあたっての注意点も話していますので、ぜひ講演資料を参照してみてください
まとめ
今回紹介した1つ1つの要素はアジャイル開発を実現するうえで基本的なことばかりだと思います。ただ、三越伊勢丹という規模の会社で、これらが機能するようにするできたのは、関係者と信頼関係があったからだと思います。今回の講演をきっかけに、改めて自分たちがどのように開発を進めてきたいのかを整理することができました。
また、Twitterでも、たくさんのうれしいコメントをいただきました。参加していただいた皆様、イベント運営の皆様、貴重な機会をありがとうございました。
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