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RINGOらしさを詰め込んだ “とっておき” な書体、「RINGO TYPE BOLD」誕生の舞台裏(後編)

2024年12月に完成した、RINGOのロゴをモチーフにして作られたフォント「RINGO TYPE BOLD」。

今回の記事では、BAKEでRINGOのクリエイティブを担当する小林と林が「RINGO TYPE BOLD」の開発者であるフォントワークス 中村さんと対談しました。前編では中村さんが書体に興味を持ったきっかけや書体デザイナーの仕事、そしてRINGOのロゴに興味を持ったきっかけについて伺いました。

後編では、いよいよ「RINGO TYPE BOLD」が誕生するまでの経緯、フォント開発の裏話を深堀りしていきます!

ロゴへの熱い想いから、フォント制作へ

小林: 初回のご提案で、中村さんが最初にRINGOロゴを見たときの気持ちを熱く語ってくださって、本当に感動しました。その想いがあったからこそ、フォント制作にまで至ったのかなと思うのですが、どうしてそこから実際に作ろうと思ったんですか?

中村: 私は普段の業務では主に和文書体を扱っているのですが、最近、欧文書体への関心が高まってきていたんです。欧文書体って、和文に比べて骨格が単純で、画数が少ない分、自由度が高いんですよね。和文、特に漢字だと「ここまで太くできない」という制約も出てしまうけれど、欧文だとそれが可能だったりして。

中村:そのころ、プライベートで冊子を作る機会があり、数文字だけロゴを作字したんです。すると、それがRINGOのロゴに似ているなと気づいて。社内の同僚にも冊子を見てもらったら、「RINGOのロゴみたいだね」と言われました。そのとき、「やっぱりRINGOのロゴって印象に残るデザインなんだ」と改めて感じて、しっかりフォントとして形にしてみたいと思うようになったんです。それが「RINGO TYPE BOLD」の制作を始めたきっかけでした。

:そうだったんですか…!そのエピソード初耳です!RINGOのロゴが頭に残っていたからこそ似たロゴになったのですかね?なんだか嬉しいです!

中村:ただ、初回のご提案は正直ドキドキでした。「どう受け取られるだろう?」と心配もあって。BAKEさんで初めて提案を受けたとき、率直な感想っていかがでしたか?

:ドキドキされてたんですか!?全然感じなかったです!(笑)
私たちはこれまでも、プロモーションデザインで必要なときにロゴに寄せて作字をしていました。なので、「書体として使えるようになれば、デザインの幅がぐっと広がる!」とわくわくしましたよ!

小林:同感です! 「書体になったら便利なんだろうなぁ…」と密かに思っていたんです。だから、中村さんからご提案いただいたときは本当に嬉しかったです。さらにRINGOへの熱い想いを伺って、RINGOというブランドが人の心を動かしていることを改めて実感できて、仕事のモチベーションもめちゃめちゃ上がりました!

中村:そんなふうに言っていただけるなんて…嬉しいです。
すでにあるロゴやデザインなどをもとに、試しにフォントを作ってみることもあるのですが、普段なら「ご提案までは現実的じゃないよな…」と遠慮してしまうんです。でも、BAKEさんがデザインやブランディングを大切にされているのを感じていたので、「お話を聴いてもらえるのでは?」とご提案させていただいたんです。あのとき一歩踏み出してみて本当によかったです!

「RINGOらしさ」を追求したフォント

そして完成したフォントがこちらです!

小林・林:中村さん、改めて本当にありがとうございました!!!

小林:出来上がったフォントにはとても愛着が湧いていて、もはや我が子のような感覚です…!!(笑)

中村:我が子…!(笑) そう言っていただけると、私としても本当に嬉しいです!

小林:フォントにするとなると実用性や設計面も重視しなければいけないから、「『RINGOらしさ』を表現するのに制約もたくさん出てくるんだろうな…」と思い込んでいました。でも、中村さんも一緒に「RINGOらしさ」を追及してくださって。「この文字はかなりRINGOっぽいです!でも、この文字のこの部分はRINGOっぽくないんです!」といっただいぶ曖昧なフィードバックをしたこともありました(笑)。

:読めることは必須条件ではあるけれど、RINGOの書体はわかりづらさも魅力なので「整えすぎてしまうと良さが失われてしまう、どうしたらいいんだろう」って社内でずっと相談してましたよね。そして中村さんに「なんとかしてほしいです~!」と泣きついたり(笑)。

小林:販促物という観点で見たときに、RINGOらしさの遊び心を入れすぎると、お客さまに情報が伝わる速度が落ちちゃうのではないかと思って悩んでいたんですよね。それもあってわがままなオーダーをたくさんしちゃったけれど、その都度中村さんが軽やかに乗り越えてご提案をしてくれて「なるほど、こうやって解決するのか…!」と本当に勉強になりました。

中村:そう言っていただけるとありがたいです。
まさにその、どう「RINGOらしさ」を表現するかというのが、今回一番やりがいを感じたし、こだわった部分でした。書体にもユニバーサルデザインはあって、誰もが読める、シンプルな書体というのはもちろんとても価値のあるものです。でも「文字がもっている別の一面にも注目してほしい」という想いがあったんですよね。誰が見ても、その個性を認識できるものってよいよなあと思っていて、それを「RINGO TYPE BOLD」では、惜しみなく発揮できました。

「RINGO TYPE BOLD」完成までのやりとり

小林:フォントが完成してみて、気に入っている文字とか、印象に残っている文字とかありますか?

中村:小文字の「y」のフィードバックが印象に残っています。
最初はしっぽが曲がっているデザインを提案しましたが、「まっすぐがいい」とフィードバックをいただきました。そのとき「なるほど、これがRINGOらしさなんだ」と、しっくりきたんですよね。

:ご提案いただいたとき、角を丸くしていただいている文字がありましたよね。社内でかわいいなあと話題になりました。

中村:ご提案するとき、違う要素があったほうが楽しいかなと思い、もとのロゴとは違う角丸の字形も入れてみました。正直、四角いほうがRINGOらしいとはうすうす感じつつも、遊び心として盛り込んでみたんです。角が丸いものは削除になるかなと思ったのですが、残してもらえて嬉しかったです。

:例えば小文字の「l(エル)」は3パターンあるんです。

:どのタイプの文字を選ぶか迷っていたときの打ち合わせで、中村さんが実際に打ってくださった単語のひとつが「bold」という言葉でした。

:太い「l」ももちろん違和感なく使えるのですが、細い「l」に変えたとき、流れるように読めて感動したのを覚えています!ロゴを作るときはひとつのルールに沿って作る、というのが身についていたのですが、ここにも遊び心を加えてくださっているなと感じました!

中村:もともとRINGOのロゴ自体が「遊んでいる」デザインですよね。一般的な欧文書体だとそうはしないというところも、遊びを加えやすかったです。ロゴに導かれるような感じで、自然とそうなりました。

小林:「一般的な欧文書体だとしないこと」というのは、たとえばどんな部分ですか?

中村:一番は「N」ですね。普通の欧文書体では縦が細くて斜めが太いのですが、RINGOフォントでは縦が太いんです。なので「M」もそれに合わせて、異体字のほうでは縦を太くしました。
これが普通のデザインでないことは確かですが、奇抜なわけじゃないですよね。おそらくRINGOのロゴを制作された方も自然にこういうデザインにされたと思うんです。これにより、清潔感や親しみやすさが生まれていると感じていて、それがRINGOのロゴや商品、ブランドの受け入れられる理由のひとつだと思います。

中村:制作が難しかったのは、数字や記号ですね。
普通の数字も難しかったですが、特にOld Styleの数字には力を入れました。実は最初にご提案したものには納得しきれない部分があったので、まったく違う表現を模索しました。記号だと「&」の制作は難しかったけど、楽しかったですね!

小林:「&」のフィードバック、とても悩みました。
「読みやすさも担保しつつ、普通になりすぎないように」と考えたらシンプルなデザインしか思い浮かばなくなってしまって。せっかく他の文字で遊び心をふんだんに入れてもらっているのに、ここだけシンプルになってしまうのは許せないと思って..「なんとかしてほしいです~!」って泣きついたのは「&」でしたよね(笑)。最終的に良いご提案をいただいて、密度のバランスが素晴らしい記号になりました!

小林:フォントが完成した後、大きなポスターだと少し読みづらい遊び心があるフォントでも読めちゃうと思うのですが、「小さな媒体ではどうだろう」とハガキくらいのサイズで出力してみたんです。そうしたら、小さいサイズでもしっかり読むことができました。遊び心のある書体で、ストレスなく気持ちよく文字が読めるのは、細部へのこだわりや計算があるからだと思います。それが自然にRINGOが伝えたいメッセージを伝えるのを助けてくれていると感じます。

中村:安心しました!自分の作ったフォントを使った方の感想を聴ける機会ってないので、本当に嬉しいです!!

書体デザイナー 中村さんの書体への想い

小林:今回のプロジェクトを通して、書体の世界でも「感覚」や「ニュアンス」とかありなんだなって思えました。少し読みにくくても「雰囲気いいからこっち!」みたいな選択肢がちゃんとあって、普段私たちがやるデザインと近い部分があって、とても親近感が湧きました!

中村:筑紫書体のデザイナーの藤田さんは「線が生きている」とか「死んでいる」と表現するんです。書体ってほんのちょっとの線の違いで印象が大きく変わる、まさに職人の世界だなと感じます。数値にしたらほとんど差がないような、超ミクロの視点まで潜っていくような作業が求められます。そこが書体デザインのおもしろさでもあり、難しさでもあります。
頼まれたことを上手に、完璧にやるだけではだめなんですよね。新しく書体を考え出そうとするとき、どうしても既存のイメージに囚われてしまったり、小手先の新しさに逃げたくなったりしますが、そこに背を向けて新鮮な形を「発明」することが必要だなと痛いほど感じています。

:なるほどなあ、お話を聞けば聞くほど、想像以上に奥深い世界だなと感じます。

中村:実際、書体デザインには制約も多いのですが、ロゴがベースにあって、具体的な使用シーンをイメージしてご意見をいただけたので、その制約を軽やかに越えていけた気がします。またBAKEのみなさんとのやりとりで「RINGOらしさ」も突き詰め、フォントに反映していくことができ、とても勉強になったし楽しい作業でした。

:私たちも中村さんのご提案を毎回楽しみにしていました!
完成したフォントは、とても楽しげでわくわくする気持ちにさせてくれる書体です。中村さんがRINGOに興味を持ってもらったきっかけのように、この書体がきっかけでRINGOに興味を持ってくださる方が増えたら嬉しいです!

小林:私も中村さんの情熱には、毎回刺激を受けていました。
デザインと実用度のバランスを探っていくのはとても繊細な作業でしたが、打ち合わせのたびに新しい学びがあって、このような機会をいただけて感謝の気持ちでいっぱいです!このフォントを使うと、よりRINGOらしい表現ができるようになるのではと期待しています。たとえば、「ノベルティでRINGOフォントを使った印字サービスができたらいいな…」などと妄想が膨らんでいます!(笑)
「RINGO TYPE BOLD」を大切に、惜しみなく活用してRINGOのおいしさや魅力をたくさんの方に届けていきたいです!

中村:これから「RINGO TYPE BOLD」が、どんな使われ方をしていくのか、とても楽しみです!
おかげさまで本当に遊びがいのある書体になったと思うので、ぜひ「RINGO TYPE BOLD」を楽しんで使っていただけたら嬉しいです!

中村さんに作成いただいたフォント「RINGO TYPE BOLD(リンゴ・タイプ・ボールド)」は、12月からポスターや販促物で使われています。ぜひ店頭でチェックしてみてください。


フォントワークスのnoteには、2025年1月頃にフォントワークス中村さんとBAKE クリエイティブ部の河西・小林・林の対談記事が掲載されます。
楽しみにお待ちください。

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