なにをやっているのか
沖縄県石垣島にある実証実験機
COP25やG20など政府系のイベントにも参加(写真:COP25@マドリード)
風向の変化に強く、台風の様な強風下でも発電できる次世代型風力発電機「垂直軸型マグナス式風力発電機」を開発しています。
みなさんがよく目にする風力発電機はプロペラ式風力発電機といって、ヨーロッパで生まれました。偏西風の影響で年間を通して風速・風向ともに一定な地域にはプロペラ式風力発電機が適しています。
それに対し、日本は山がちな地形で、さらに、はっきりとした四季がありそれぞれの季節で季節風が吹くことや、夏には台風が通過することから、風速・風向の変化が大きい環境といえます。
その結果、日本の風力発電機の故障率は平均48%(平成28年度 風力発電故障・事故調査結果 報告書より)と世界的にも高い確率で、主な原因は落雷・暴風・乱流といった自然現象です。日本は風に恵まれた環境であるものの、高い故障率も理由の一つとして風力発電の導入が進んでいません。
そこで、日本の環境に合った風力発電機を作ろうと私たちが研究開発を重ねてたどり着いたのが垂直軸型マグナス式風力発電機です。
この風力発電機の特徴は3つです。
①強風に強い
プロペラ式風力発電機は風速3~25m/sの風速域で発電ができます。風速25m/sを超える風が吹く時は暴走によるプロペラの破損や発電機の故障の原因となるため止めるように設計されています。
一方、私たちが開発する垂直軸型マグナス式風力発電機はプロペラの代わりに円筒を回転させることによって発生するマグナス力を用いることで風速4~40m/sの風速域で発電ができます。
②風向の変化に強い
プロペラ式風力発電機は風向きが変わるたびに、プロペラの向きを合わせる必要がありますが、私たちの風力発電機は垂直軸を採用していることによって、東西南北どの方向からの風でも無駄なく発電することができます。
③ 環境への影響が少ない
風切り音による騒音や、希少な品種の野生の鳥がプロペラにぶつかってしまうバードストライクなど風力発電機が周辺環境に与える影響は少なくなく、導入を阻む原因の一つです。
私たちの風力発電機は、プロペラ式風力発電機と比べて回転数が約10分の1と低速で回転します。そのため、風切り音が発生しにくく、鳥が視認できる速さで回転していることからバードストライクも発生しづらいとされ、周辺環境への影響が少なく設置できます。
2016年8月に沖縄県南城市にて1kW機を、2018年8月に沖縄県石垣市にて実証実験機の稼働を開始しました。通常時の発電はもちろん、通過や直撃する台風下でも安定的に発電することが実証されています。
2021年に量産化を行い、世界中の地域にエネルギーを届けていきます。
なぜやるのか
過去150年間の熱帯低気圧の通り道を描いた世界地図
次世代にサスティナブルなエネルギーを(写真:G20イベント@軽井沢)
チャレナジー(challenergy)は、エネルギー(energy)に挑戦(challenge)するという想いから創業したスタートアップです。2011年の東日本大震災に伴う原発事故をきっかけに代表取締役CEO清水が「自分たちの世代が原発に頼らない発電方法の道筋を作らなければ」と思い立ったのが始まりです。
現在日本で採用されている発電方法は大きく分けて火力、原子力、再生可能エネルギーの3つ。CO2の排出がある火力、安全性が確立できない原子力に代わって再生可能エネルギーが期待されています。
再生可能エネルギーの中でも、世界各国での普及率と日本での普及率に差のある風力に清水は着目しました。日本の環境に合った風力発電機ができれば風力発電の普及が進み、再生可能エネルギーの比率向上に貢献できると考えたからです。
日本だけでなく世界中にも、日本の様に風に恵まれているものの、風速・風向の変化が大きいためプロペラ式風力発電機を導入できない地域は多くあります。同じように世界には、電力が系統連系がされておらず大型のディーゼル発電で集落の電力を賄っている地域が多く存在します。この二つの特徴が重なる地域に対し、ディーゼル発電に替わる発電方法として垂直軸型マグナス式風力発電機による風力発電を普及させていきます。
日本における風力発電の課題からスタートしたチャレナジーですが、日本にとどまらず世界からも注目されています。
どうやっているのか
メンバーは気候変動、環境保全、エネルギー問題、イノベーションなどに興味をもっており、私たちの風力発電機がそれらの課題を解決する可能性があると信じて、取り組んでいます。
前職で風力発電を扱っていたメンバーはほとんどおらず、約20名のメンバーがエンジニア・マーケティング・コーポレートに分かれ、それぞれ別の分野で培った知見を活かして働いています。