コロナ禍で、直接会う機会を奪われてしまったメンバーたち。みんなが一体感を持てるように、会社として考えていることを発信していきたいーー。
その思いから、株式会社セレブリックス・セールス事業本部では2020年7月、約6時間におよぶオンライン社内イベント「ミライカンファレンス」を開催しました(背景について聞いたインタビューはこちら)。
当日は本部長陣によるプレゼンテーションやトークセッションに加え、新しく就任したマネージャー陣やメンバーが「得意な仕事の見つけ方」「事業部のミライ」を語り合うセッションも実施。セールス事業本部所属の総勢約400人が参加する一大イベントとなりました。
このオンライン社内イベントはどのようにして実現したのでしょうか。また、実施後の組織の変化とは? 起案者である北川和毅さん(セールス事業本部長)と、当日に向けて準備を進めた手塚千尋さん(セールス事業本部 事業推進室 エンゲージメントグループ)に聞きます。
<話を聞いた人>
北川和毅(きたかわ・かずき)さん
株式会社セレブリックス 執行役員 セールス事業本部長。2005年新卒入社。さまざまなプロジェクトで新規受注を量産して社内表彰常連となり、28歳で営業代行事業のマネージャーに昇格。国内10拠点の新規立ち上げや600を越えるプロジェクトを成功させ、2018年に史上最年少で執行役員に就任。趣味は小学生から続けているサッカーと、神社仏閣巡り。3人の子どもとの戦いごっこで悪役のレパートリーを増やすことに苦戦中。
手塚千尋(てつか・ちひろ)さん
株式会社セレブリックス セールス事業本部 事業推進室 エンゲージメントグループ。2016年に中途でセレブリックス入社。複数の営業支援を経て、2020年4月より現職。セールス事業本部全体のマネジメント支援に携わる。特技はどこでも一瞬で寝れて朝が強いこと。休日は午前中に家事を済ませスーパーへ行くなど活動的だが、午後になるとその反動で全く動かずひたすらアイス片手にネットサーフィンと映画鑑賞をして過ごす。
メンバーに主体性を持ってもらうために必要なのは「情報」
――2019年には、リアルな場で第1回目のミライカンファレンスを開催したとうかがいました。今回は新型コロナウイルスの影響があり、開催の判断が難しかったのでは。
手塚:早い段階からオンラインで開催することを前提に準備を始めました。リアルな場に集まりにくい状況だからこそ、一人ひとりが個人の未来や会社の未来を考え、相互理解を深められる場を持ちたいと考えていました。
北川:ただ、オンラインで開催することへの不安があったのも事実です。リアル会場でのプレゼンテーションであれば参加者の反応をその場で確認しながら話せますが、オンラインでは難しい。双方向のコミュニケーションがしづらい環境でも思いが伝わるよう、発信側のコンテンツについては、使う言葉の一つひとつに注意しながら準備を進めました。
特に本部長陣の3人(※)が行うボードプレゼンと、同じくこの3人が参加するトークセッションについては、こだわって構想を練っています。逆に若手メンバーが参加するセッションは、自由に考えていることを話してもらうようにしました。
※北川さん、松澤真太郎さん(執行役員 セールス事業本部 副本部長)、今井晶也さん(営業企画本部 本部長)
ーー本部長陣によるトークセッションでは、「オフィスにとらわれない働き方を実現するため本社移転を検討している」「やりたい仕事を自分から宣言して挑戦できるFA(フリーエージェント)制度を作る」など、構想段階のアイデアについてもオープンに話している姿が印象的でした。
北川:責任ある立場の人間が構想段階のアイデアを話すことについては、批判もあるかもしれません。それは承知の上で伝えました。なぜかというと、メンバーみんなが主体的に仕事と関われるようにしたいからです。
とはいえ、上から「主体的になれ」と言われて、そうなれるわけでもないですよね。メンバーに主体性を持ってもらうために必要なのは情報だと思っています。みんなが普段は知り得ないこと、構想段階のこと、未来のことも含めて開示していくことで、会社や組織を「自分ごと」としてとらえてほしい。そんな思いがありました。
「マネジメントポジションを目指したい」。個別に寄せられた相談メッセージ
――「主体性」についてのお話がありましたが、ミライカンファレンスを通して、参加者のみなさんにどのような変化が起きることを期待していたのでしょうか?
手塚:ミライカンファレンスを企画する上で、ゴール設定はとても難しい部分の一つでした。ただ、「明日以降の職場で何かしらの行動変容が起きるきっかけになれば」という思いはありました。
終了後のアンケートでは、参加者の8割以上の人が回答を寄せてくれました。それとは別に、個別でメッセージを送ってくれた人もたくさんいます。こうしたイベントを企画することはできても、その後のアクションを測ることはなかなか難しいので、声を寄せてもらえるのは率直にうれしいです。
北川:何かしらの気付きや学びがあればうれしいですよね。でも、受け止め方は人それぞれでいいし、どのように受け止めるかは、みんなに委ねたいとも思っています。
手塚:小さなアクションでもいいし、些細な気持ちの変化でもいいと思うんです。例えば「聞きたくてもなかなか聞けなかったことを、役員に直接メッセージを送って質問してみる」とか。
北川:そういえば僕のところには、個別に「マネジメントポジションを目指しているので相談したい」というメッセージを送ってくれた人もいましたよ。
――ミライカンファレンスで刺激を受け、実際に行動を起こした人もいるのですね。
北川:ただ、組織の文化を変えていく道のりはまだまだ長いです。アンケートの回答者が8割ということは、残る2割、約50人は回答してくれていないということなので。
手塚:そうですね。セレブリックスに入社していても、全員が全員、同じように一体感を持っているわけではないというのが事実だと思います。
北川:僕自身、振り返ってみれば20代の頃は、会社に心酔していたわけでもありませんでした。だけど時間が経ち、役割や立場が変わることで、考え方も会社との距離感も変わってきました。
そうした意味では、「現状の“点”だけを見て人を判断したくない」と思っています。どんな人でも、状況によってコンディションが悪いことはあるはず。そこは許容しながら、現状では会社との距離を感じている人にも未来に目を向けてもらえるよう、コミュニケーションを重ねていきたいと考えています。
手塚:セレブリックスに入社した動機や、ここで実現したい目標は、みんなそれぞれ違うはずですよね。無理やり一つにまとめようとするのではなく、いろいろな人が無理をせずに共存していける組織になれたらいいな、と思います。
相互理解の場を増やし、成長につながる人間関係を築きたい
――当面は、人が一同に介して思いを共有する場を持ちづらい時期が続くと思われます。ミライカンファレンスの経験を踏まえて、新たに構想されている取り組みなどがあれば教えてください。
手塚:引き続き、相互理解の場を増やしていきたいと考えています。直接的なコミュニケーションの機会が減ってしまっているのは事実なので、それをカバーできるように、オンラインなどさまざまな手段を考えていきたいです。
セレブリックスは、他社の方から「人間関係がいい」と言っていただくことが多いんです。それが強みにもなっています。だけど私たちは「べったりしている」とか「ただ仲がいい」という関係を目指しているわけではありません。
ナレッジ共有や情報共有を頻繁に行い、互いの成長につながるような人間関係を築いていきたいと思います。
北川:今回のミライカンファレンスでは本部長陣からのメッセージに時間を割いてもらいました。今後は、僕たちのような立場の人間が一方的に話すだけではなく、もっともっと若手の人たちと対話していける場所やイベントを作っていきたいですね。
僕は「メンバーそれぞれの居場所を創りたい」という信念で今の役割を務めています。これからも、みんなが主役になれるように、きっかけ作りを進めていきたいと思っています。
【取材後記】
ミライカンファレンスの主要コンテンツの合間に置かれた休憩時間中には、「心に残るエピソード To Fromメッセージ」として、事業部内の上司や先輩、同僚、後輩に向けた感謝のメッセージが表示されていました。イベント終了後には「うれしかった」「感動した」といった感想も多数寄せられたといいます。
同じ空間を物理的に共有できなくても、誰かの心を動かすことができる。ミライカンファレンスが示してくれたのは、コロナ禍におけるコミュニケーションの新しい可能性だったのかもしれません。
■企画・編集/今村真理奈(株式会社セレブリックス セールス事業本部)
■取材・執筆/多田慎介 (https://shinsuke-tada.com/)