”インフルエンサーマーケティング”は、広告業界でも今やビッグワード。しかし、働く側に立ったときに、そのビジネスがどのようにつくられているのかは意外と知られていないことも多いのではないでしょうか?そこで、今回はインフルエンサー事業を牽引する中山さんに、そのビジネスのやりがいや中身について聞きました!
プロフィール
中山 貴人(なかやま たかと)
C Channel株式会社 執行役員・インフルエンサー事業部 部長。
リクルートHRマーケティング(当時)に新卒入社、営業マネージャーとして活躍。10年目に新しい事業に挑戦したいと転職を決意。企業とモデルをマッチングするクラウドサービスの立ち上げに携わった後、C Channelでのインフルエンサーマーケティング事業立ち上げのタイミングで森川と出会い2017年1月にC Channel子会社のYellow Agencyに入社し執行役員となる。2018年4月よりC Channel本体と合併し、インフルエンサー事業部長を務める。
C CHANNELは動画広告だけじゃない、インフルエンサー事業を支える2つの役割
ー インフルエンサー事業部はどのような役割で構成されていますか?
広告事業部がメディアプラットフォームで動画広告やイベントプランを提案しているのに対して、インフルエンサー事業では資産が「人」です。私たちは営業とキャスティングの両輪で事業を運営しています。
●営業:企業に対してインフルエンサーを活用したプロモーションの提案
●キャスティング:インフルエンサー(人)のスカウト・育成・キャスティング
YouTubeにYouTuberがいるように、C CHANNELにもクリッパーという動画インフルエンサーの存在があり、私たちがマネジメントをしています。
「いいな!」という人を発掘して、C CHANNELというメディアを通じてファンを増やして育成していくということです。C CHANNELだけの活動にとどまらず、Instagramをやってもらったり、もともとYouTuberの人を育成してインフルエンサーとしての価値をあげたりもします。ファンが増えると「フォロワーが〇万人いる〇〇さんに、商品のプロモーションをお願いしよう」と企業のニーズが出てくるということになります。
自社のメディアでインフルエンサーを育成できる環境が強み
ひよんちゃんねる(2018年4月時点 YouTubeより)
ー 他社のインフルエンサーマーケティングを展開する企業との違いはどういったところでしょうか?
他社と違った強みとして、インフルエンサーに対してはC CHANNELで露出を増やしブーストさせたり、コンテンツを自社の制作チームでつくったりとサポートしてファンがつくように育成できるところです。
企業様向けには、C CHANNELの動画広告とセットで提案したり、インフルエンサーと共に企画した商品をC CHANNELのECサイトで販売したりできること。自社でメディアをもっていると、できることは全然違います。
やりがいとして、元々影響力のなかった人たちがファンを獲得していったり、発信した動画が色んな人に観られてポジティブなコメントがつくなど、インフルエンサーの成長がすごく嬉しいですね。その上で、クライアント側にもいい動画が配信できた、いいプロモーションができたと言われることが喜びです。
最近の取り組みとして、C CHANNELのクリッパーがYouTubeチャンネルを開設し、新たなファンの獲得に向けて動画配信を行っています。中でもひよんは、チャンネルを開設後、たった1ヶ月で27,000件のチャンネル登録数を獲得しています(2018年3月末時点)。
すでに企業とのタイアップの広告も発信しています。普通、提供元がある動画や記事はユーザーが避けがちでネガティブなコメントがつくこともよくあるのですが、この広告はコメント欄もポジティブでとても受けいれられています。C CHANNEL発のクリッパーが、YouTubeでも人気がつき始めているというのは嬉しい成功事例ですね。
個人が輝いていく時代のマーケティング
ー キャリア視点で考えると「マーケティング手法としての盛り上がりは一過性のものでは?」と不安があるかもしれません。その点はどうでしょうか?
たしかに今、「インフルエンサー」はビックワードですよね。たとえば今ならInstagramを使ったインフルエンサーマーケティングが主流ですが、過去はブロガーからスタートして、インスタグラマーと呼ばれる人たちがパワーを付けて・・・とプラットフォーム自体は変遷する可能性があると思っています。プラットフォームとしての賞味期限は1、2年ということもあるかもしれません。
ただ世の中は、集中型から分散型になっていて。つまり「個人」が影響力となって好きなものを発信し、それが大衆に受け入れられていくという根本はこれからも変わらないと思っているんですよ。
そこで、私たちはインスタグラマーやC CHANNELだけで活躍できるクリッパーにこだわるつもりはなく、世界中のインフルエンサー、YouTuberなど今後の世の中にとってエンゲージが高く影響力がある人を独自でネットワーク化していくという方向で考えています。
発信する個人の側としても、これまでは影響力を持つには芸能事務所に所属する必要があったんですよね。そのため東京に行くしかなかったり、オーディションに受からないといけなかったりとハードルがあった。でも今は地理的な制約もなく、SNSに自分が好きな写真を投稿したり、プラットフォームを使いライブ動画を配信していたら投げ銭で稼げるようになったりして。
タレントとしての影響力が芸能事務所に一極集中だったのが、だれでも身近なツールを使って努力次第で影響力をつけやすくなってきています。
そういった個人とクライアントの間に我々が入ってつないでいくエージェントでありたいし、個人の成長をもっと後押しできるようにしたいなと思っています。
<営業>「影響力」を価値として、海外マーケティングから商品企画まで幅広く提案していきたい
ー では、営業とキャスティングの役割それぞれについて。まず営業として今後求められる役割はどのようなことでしょうか?
今までは、動画広告とセットでの提案が多く、インフルエンサーマーケティングに特化して新規で提案先を広げていくことができていませんでした。
私たちは特に動画に強いインフルエンサーが多く、こんなことができるという認知をプロモーションを検討している企業に広めていくため、営業メンバーを今後積極的に採用したいと考えています。
企業側も、単なるインフルエンサーマーケティングはやり切っているところもあるので、それ以上の提案として海外へのマーケティングや自社のECプラットフォームを使い共同で商品開発をしていくようなプロモーション提案をしていきたいです。
ー どんな経験がある人が営業に向いていますか?
インフルエンサーの影響力が商品の価値なので、企画提案力に経験や自信がまだなくても、営業の経験があれば活躍できる可能性は十分あると思います。
「人」を資産に事業を行っているという意味では、人材派遣会社や人材紹介会社で営業経験のある方も向いています。
ほかには私たちのクライアントが、化粧品やアパレル、雑貨、など女性向けの商材を扱っている会社が多いので、そういった女性向けの商材を扱っていた、またはそういったクライアントに対して法人営業をしていたりするとこれまでの経験は活かせますね。
あとは広告代理店での経験や、Web広告の知見も活用できます。たとえばインフルエンサーによってこの商品を拡散すると、どのくらいクリック数、コンバージョン数が見込めるかといった提案をすることも多いので、広告の基本的な用語がわかっていると、より望ましいです。
<キャスティング>インフルエンサーを育成して寄り添う存在であり、企業の意向も汲める信頼感が大切
DIY、ヘア、メイク、ファッション、フードなど多彩なインフルエンサーをキャスティング(Yellow Agency Webページより)
ー 続いて、キャスティングの役割としてはどんな仕事があるのでしょうか?
キャスティングの仕事は、①採用(スカウト)②育成③キャスティングと3つに分かれます。今後、役割分担をしている事も考えていますが、今はメンバーひとりひとりが3つの業務を行っています。
①採用(スカウト):Webページから登録してくる人に会ったり、Instagramや雑誌などでちょっと人気に火が点きはじめている人に対してアプローチする
②育成:こんな動画、こんなコンテンツをアップしていこうとインフルエンサーを指導しながらファンがつくように育成する
③キャスティング:クライアントのオーダーに対して、適切なインフルエンサーをリストアップ。商品を、こんな構図で、このハッシュタグで、このタイミングで発信するといった条件をインフルエンサーとやりとりして、商品を送付したりといったインフルエンサーマーケティングの運用
割合としては半分くらいが日々のキャスティング、3割くらいスカウト、2割が育成といったところでしょうか。
ー どんな人がキャスティングの役割に向いていますか?
まず、現在キャスティング側のメンバーは9名いるのですが、ひとりひとりのバックグラウンドは様々です。今後はインフルエンサーの獲得・育成に特に力を入れていくので、できれば芸能事務所などで事業開発やタレントのマネージャー経験がある方などは活躍していただけると思います。
キャスティングという仕事はある意味「ママっぽい人」に向いているかなと思っています。インフルエンサーがいかに成長していくかということ、価値をあげる、ファンを作る、というところに寄り添えるホスピタリティが必要だと思います。
でもそれだけでなく、インフルエンサーへの指示がしっかりできることも大切です。広告主が求めていることとインフルエンサーのやりたい事って違うこともあるんですよ。たとえば、何か商品をプロモーションするときに、クライアントは新品を載せて欲しいけど、インフルエンサーは使用感が大事だから使っている途中のものを載せたいとか。クライアント・営業側とインフルエンサー側の意向の板挟みになってしまうことがあるので、バランスをとったり適切に指示しておさめられる、というのは大切ですね。
Web動画が一層盛り上がる2020年に向け次のステージへ
ー 今後、インフルエンサー事業として目指していることは?
中長期では、アジアで一番の動画インフルエンサーのネットワークをもっている会社にしたいと思っています。そのため、C CHANNELでクリッパーとして活躍できるという視点でのスカウトや育成だけにとらわれず、YouTuberや海外のインフルエンサーをネットワーク化していく動きを進めています。
そのひとつの取り組みとして海外で人気のインフルエンサーが日本に向けて発信するサポートをする、日本企業と海外のインフルエンサーのハブになるという動きを2018年4月から本格化していきます。
また、動画を活用したマーケティングの課題といえば、Wi-Fi環境に依存してしまうところがありますが、2020年までには5G(第5世代移動通信システム)によって通信速度が倍になるといった環境は追い風になります。
そうなれば、ますますみんながテレビよりWeb動画で情報収集していく流れが世界中でスタンダードになっていく。そのタイミングで私たちが育てたインフルエンサーがもっと影響力を発揮できるようになる世界をつくれていたらいいなと考えています。
ー インフルエンサーマーケティングというと、広告の一手法として捉えられることが多いと思いますが、実際お話を聞くと人材ビジネス・教育的な要素があることが意外でした。個人が影響力を持つようになってきた次世代のマーケティングとしてこれからも様々な可能性を感じます。中山さん、ありがとうございました!
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