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世の中にノンアルコール飲料の「新しい選択肢」を──Beverich立ち上げの背景とこれからを語る

Beverichを設立するにあたり、Beverich 代表取締役 木下慶の頭に“会うべき人”として真っ先に浮かんだのが富島寛さん(メルカリ共同創業者/山田進太郎D&I財団 理事)だった。メルカリ在籍時に一緒に仕事をしたことがあり、かつ尊敬している富島さんに何らかの形で関わってほしい、そして「一人目の出資をお願いするなら富島さんしかいない」という強い思いがあったという。今回、出資を快諾してくれた富島さんに、なぜ出資をすることにしたのか、そしてBeverichの事業に期待することなどをうかがいました。

木下さんはいつか起業をするだろうと思っていた

──お二人はどのように知り合ったのですか?

木下:富島さんに初めてお会いしたのは、メルカリUSのヘルプセンターを刷新するプロジェクトを進めるために、自分がアメリカに出張した2016年です。そのとき富島さんはメルカリUSのCPOとして、サンフランシスコのオフィスに勤務していました。

富島さんのことは入社前からメルカリの共同創業者として知っていたので、「この人があの富島さんだ!」と思ったのが第一印象です(笑)。

富島:当時はかなり切羽詰まっていて、大変な時期だったんですよね。


メルカリ共同創業者/山田進太郎D&I財団 理事 富島寛
早稲田大学卒業。 2013年に共同創業者としてメルカリを設立。2016年にはUS展開のためサンフランシスコに移住。 その後東京に戻り、2019年退社。現在は女性が理系を志す上でのハードルを下げるための奨学金を運営する山田進太郎D&I財団の理事を務める。

──そのときは一緒に仕事をしたのですか?

木下:ヘルプセンターのプロジェクトではあまり関わりがなかったのですが、その後に発足した、US向けアプリをゼロから作るプロジェクトでは一緒に働きました。富島さんがプロジェクトの統括になり、自分はそこにプロダクトマネージャーとして入ることになったんです。

アプリの機能やUIについて富島さんと話し合う中で、お互いの考え方が似ているなと感じることが多くありました。仕事はとてもやりやすかったです。

富島:自分も、木下さんとは仕事がやりやすいなと感じていました。それと同時に、自分にないものを持っている人だとも思いました。

木下さんはアイデアの引き出しが豊富な上に、友達が多くてチームビルディングが得意です。周囲とコミュニケーションを取っている様子を見て、「木下さんはいつか起業をしそうだな。そのときはきっとうまくいくだろうな」と思っていました。

木下:そうなんですね!実はメルカリにいた頃から、「いつか起業したいな」とずっと考えていました。富島さんの予想通りになりましたね(笑)。


Beverich株式会社 代表取締役 木下慶
2010年筑波大学大学院コンピュータサイエンス専攻修了。同年株式会社NTTデータにシステムエンジニアとして入社。国内大手クレジットカード会社のWebシステム開発に従事。2012年ランサーズ株式会社の創業期にソフトウェアエンジニアとして入社。プロダクトマネージャー(PM)に転向後、ランサーズのプロダクトオーナーを務める。2016年株式会社メルカリ入社。US版、UK版のフリマアプリのPMを務めた後に2019年国内フリマ事業のHead of Productとしてプロダクト責任者に就任。2021年メルカリの物流子会社メルロジの設立と同時にメルロジCPOに就任。2022年10月Beverich株式会社を創業。Twitter

──そして木下さんは起業し、富島さんは最初の出資者となりました。木下さんはなぜ富島さんに出資を依頼したのですか?

木下:自分が起業するときには、一緒に仕事をしたことがあり、かつ信頼している富島さんに何らかの形で関わっていただきたいと思っていたんです。一人目の出資をお願いするなら富島さんしかいないと思い、思い切って連絡しました。

──木下さんから出資の相談を受けて、富島さんはどう思いましたか?

富島:連絡を受けた時点で出資しようと思いました。木下さんが起業するなら、事業内容に関係なく投資したいと思っていたので。ところが詳しく話を聞いてみると、ちょうど自分の関心が高まっていたノンアルコール飲料を扱うということだったので、これはもう奇跡だと思いましたね。

──ノンアルコール飲料を中心としたマーケットプレイスを構築するという木下さんの事業計画を聞いて、富島さんはどう思いましたか?

富島:ここ1年ぐらい、スタートアップ界隈はWeb3関連の話が多く、それはそれでとても刺激的なのですが、そことは離れた領域に着目するのが木下さんらしいと思いました。長期的な目線を持って、これから伸びていきそうな市場に早めに張っていくところも良かったです。独自路線なので不安はあったと思いますが、しっかり自分の頭で考えて判断している点がさすがだなと感心しました。。

木下:ピッチが終わった後に、富島さんからそう言っていただけたのはすごく嬉しかったです。実はもう一つ印象に残っていることがあって。ピッチを始めた直後に、富島さんが急に手を挙げて「ちょっといいですか…?実はノンアルすごい興味あります!」と言ってくださったんですよね。そのおかげで一気に緊張がほぐれました(笑)。

世の中に「新しい選択肢」をつくってほしい

──富島さんはもともとノンアルコール飲料に関心があったのですか?

富島:そうです。妻が妊娠してお酒が飲めなくなったときに、自分も一緒に1年ほどお酒をやめていた時期がありました。当時はコロナ禍の影響でノンアルコール飲料を置く飲食店が増えていて、ノンアルコール飲料にも意外と美味しいものがあるんだなと思っていました。

その一方で、美味しいノンアルコール飲料の種類はまだ少ないとも思っていました。例えば、コンビニにノンアルコールのビールが並んでいても、ノンアルコールのレモンサワーは種類も少ないし、置いてない店も多いですよね。また、いいレストランで食事をしたとき、肉料理に本当に合うような美味しいノンアルコールのワインも、残念ながら自分はまだ出合っていません。「ノンアルコール飲料の市場には課題がたくさんありそうだな」とちょうど感じていたんです。

木下:出資の相談をした時点では、富島さんがノンアルコール飲料に関心をお持ちだとは知らなかったので、自分がやろうと決めたビジネスに富島さんがこんなに興味を示してくださったのはとても嬉しかったです。

しかも富島さんは、「自分が出資するということを他の人にも言って良いよ」と言ってくれました。富島さんが最初に出資の意思決定をしてくださったという事実は“信頼の証”になるので、本当にありがたかったですね。

──富島さんは、木下さんの事業に何を期待していますか?

富島:世の中に「新しい選択肢」を作ってほしいなと思います。

例えば妊娠した女性はお酒を飲めなくなりますが、ただでさえ身体に負担がある中で、美味しい飲み物を飲めなくなってしまうのは、なんか違う気がするんですよね。

それに、飲食店で選べるノンアルコール飲料の種類がまだ少ないと思います。ノンアルコールのビールを置いている店はありますが、正直そればかりは飲み続けられないですよね? せめて、ビールとレモンサワー、2種類の美味しいノンアルコール飲料があれば、お酒を飲まない人もだいぶ楽しめるようになると思います。

木下:お酒だけでなく、ノンアルコール飲料にも種類があった方が、みんなでその時間を楽しめますよね。

富島:自分のように一時的にお酒をやめた人だけではなく、元からお酒を飲まない人も多いので、そういう人の選択肢を増やすことにもつながったらいいと思います。

木下:そうですね。少しつけ加えると、自分はアルコールテイストの追求だけにこだわるつもりはありません。例えば、「今までのソフトドリンクとは違うけれども、ご飯にすごく合う飲み物」といったうカテゴリーにも需要があると思います。

富島:木下さんには、いずれ「イケてるノンアルコール飲料」を作ってほしいです。特に赤ワイン系の美味しいノンアルコール飲料ができたら、それは革命です。今あるものはまだ葡萄ジュースに近くて、料理とのマリアージュを楽しめているとは言えないですから。

木下:わかります。美味しい飲み物は、リラックスしたり人と楽しい時間を過ごすために絶対に必要なものです。ノンアルコール飲料を「仕方なく飲むもの」ではなく、「愛すべき飲み物」として選んでもらえる世界を目指したいです。

その先で、「お酒は高くてノンアルコール飲料は安い」という常識を変えることにも挑戦したいと思っています。丁寧に作られた美味しいノンアルコール飲料を楽しむという、新しいライフスタイルを提案したいんです。

富島:なるほど。アルコール飲料とノンアルコール飲料に同じ値段がつく日がいつか訪れるんでしょうか。

木下:現状だと、同じ値段がついているメニュー表を見ると「なぜ?」と思う人が大半だと思います。そういう既存の価値観を変えることにもトライしていきたいです。


──最後に、木下さんとともに事業を作り上げていく魅力について、富島さんはどう思いますか?

富島:ノンアルコール市場はこれから伸びていく市場です。市場そのものをゼロイチで作り上げていく楽しみを味わえると思いますし、その中でチャンスは必ずあると思います。

また、木下さんはメルカリの中で最も活躍していたプロダクトマネージャーの一人です。トップレベルのビジネスパーソンと一緒に働くことで、きっと多くの学びを得られると思います。私自身も木下さんからは多くのことを学びました。

そして何よりも、木下さんと一緒に働くことは楽しいです。メルカリでは、木下さんはいつも周囲から愛されていました。ビジネスの結果がどうなるかはわかりませんが、少なくとも木下さんと一緒に働く時間は、キャリアの中でかけがえのない時間になると思います。

木下:そう言っていただけて嬉しいです…ありがとうございます!

富島:自分自身はノンアルコール飲料のいちユーザーとして、個人の感想だったり、新しい情報を木下さんにインプットすることで支援していけたらと思っています。これから厳しい局面にぶつかることがあるかもしれませんが、ぜひタフに乗り越えていってください!応援しています。


Beverichでは一緒にノンアル市場、文化を創っていく仲間を募集しています。
飲食店や宿泊施設にノンアル飲料を提案していくビジネス開発、自社プロダクトを開発するプロダクトメンバーなど多くの職種で採用を行なっております。
ご興味を持っていただける方はぜひお気軽にご応募、カジュアル面談のご連絡をください。
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執筆:一本麻衣 撮影:高木亜麗 編集:瀬尾陽

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