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お酒をやめたら起業することになった話ーーノンアル事業はじめました

Beverich 代表の木下です。

2022年10月に、約6年半務めたメルカリを退職しBeverich(ビバリッチ)株式会社を起業しました。事業内容はノンアル飲料等の輸入、小売、卸売販売と関連するITサービスの開発・運用です。既にECサイトで販売を開始しています。

Beverich - ノンアル・低アル飲料専門EC

なぜノンアル事業なのか、事業を通して世の中にどのような価値やメッセージを届けたいのかーー私が起業に至ったストーリーを書いてみたいと思います。

なぜノンアル事業なのか

ことの発端は、自分で事業を立ち上げようと思い、お酒を飲むことをやめたところから始まります。起業準備としてまず最初にしたことは、自身のライフスタイルを見直すことでした。これまでより時間効率やパフォーマンスを上げたい、と思ったからです。その時ふと「お酒をやめてみるのはどうだろう」と考えました。

お酒を飲んでいた頃の私は、たまの飲み会に加えて、気になるお店に一人で行ったり、美味しそうなお酒を探して家で飲んだりと、お酒が一つの趣味のようになっていました。移動や検索などにそこそこ時間を使っていましたし、たまに飲み過ぎてしまうと翌日のパフォーマンスが下がることもありました。

これらお酒にまつわることに使っている時間と、パフォーマンスが下がっている時間を合わせると、結構な時間になっているのでは?と考えたのがやめてみた理由です。

お酒をやめてみると、いい変化が多くありました。一番の目的だった可処分時間の増加もそうですし、二日酔いになることもなければ、睡眠もしっかりとれるので、心身ともに調子のいい日が続きます。

こうして、コンディションの良い状態で増えた時間を、事業のリサーチやディスカッションに使っていました。その時のアイデアの一つに、「お酒をやめてメリットを得ている自分と同じような体験を広められないか」というものがありました。禁酒支援のアプリや、コーチングのようなサービスで、無理なくお酒を減らしたりやめたりできるプロダクトです。

一方で、課題にも直面しました。飲むものの選択肢が少ないのです。お酒をやめてからも、飲み会に行ったり、外食に行ったりはしていました。ただ、ご飯と合わせて美味しい飲みものを飲みたいと思っても、1種類のノンアルビールと烏龍茶、コーラなどのソフトドリンクしかないことがほとんどでした。美味しくてご飯に合う、本格的なノンアル飲料はないものかと探してみたところ、世の中には生産者の方がこだわりを持って作られた飲みものが多くあることに気づきました。

さらに海外には、クラフト系のノンアル飲料専門の生産者がいることも発見しました。ECで注文してみようとするのですが、いずれもそれぞれの国内にしか発送しておらず、現地に住んでいる友人に送ってもらいました。

最初に試したのは、イギリスの0.0%のノンアルクラフトビールでした。0.0%とは思えない味に驚きました。ホップの苦味がしっかり感じられ、喉越しもあり、風味豊か。IPAやスタウトなどクラフトビールのスタイルが実現されていました。それもそのはずで、これらの製品は一度クラフトビールを醸造してからアルコール成分を抜いており、ビールっぽい飲み物ではなく、ビールなのです。

お酒をやめたことはポジティブな側面が多く後悔はしていなかったのですが、大好きだったクラフトビールが嗜めないことには寂しさを感じてました。しかし、これらの製品を飲んだときに、「お酒をやめてもクラフトビールを楽めるんだ!」と感動したことを覚えています。

それから色々と探して飲んでいるうちに、このような美味しいノンアル飲料が、個人でも気軽に買えたり、飲食店でも飲めたりしたら良いのになーーと思うようになりました。

最初に試したイギリスのノンアルクラフトビール BRULO(Beverichで購入できます

さらに、昨今では世界的な飲酒率の低下や、コロナを経た人々の健康意識の高まり、それに呼応するような大手メーカーのノンアル対応などが進んでいます。

「ソバーキュリアス」という選択的にお酒を飲まない考え方が欧米の若者を中心にひろがっていたり、アサヒビールは「スマートドリンキング」という体質・気分・シーンに合わせて、適切なお酒やノンアル飲料を自由に選べる時代へ、という概念を打ち出しています。「飲まない」ことがマクロなトレンドになっているのです。ビジネスとしても成長しそうな領域だと確信しました。

アイデアの一つだった「お酒をやめることの支援」よりも、「やめた後に飲むものの選択肢が少ない」という課題を解決した方が、結果、やめられる人も増えるしやめた後もハッピーなのではーー? そんな思いから、ノンアル飲料等を流通させる事業をテーマとして選びました。

自分の原体験と強みを生かしたプロダクトをつくる

課題を解決する第一歩として、まずは3つ、その先に本命としたい仕組みづくりがあります。

①私が飲んでいたノンアル飲料や、その他こだわりを持って作られている高品質な飲料を国内外から仕入れます。
②それらをECで小売販売します。
③オンラインだけでなく、飲食店や小売店、アクティビティ施設などに卸販売をしていきます。

そしてゆくゆくは、この仕入、販売、物流という飲料の流通に対してプロダクトを作っていきたいと考えています。

例えば、飲料生産者が簡単に彼らの商品情報をプロダクト上に公開できる。そこには高品質なノンアル飲料等を必要としている個人や飲食店等が集まっており、自由に検索できたり、マッチングされる。購入する際も決済や継続購入が簡単にできる。生産者の発送や輸送、購入者の受け取りなどがスムーズに、低コストで行えるといったイメージです。

自分自身の、お酒をやめた、その時に飲むものがなかったという原体験に加えて、マーケットプレイスやEC、物流というメルカリでの経験を生かして取り組める事業だと感じています。

事業のミッションは「飲みものの楽しみを増やす」

私が本事業を通して実現したいことは大きく3つあります。

1つ目は、お酒以外の選択肢の多様化です。お酒を否定しているわけではなく、飲む人も飲まない人も十分な選択肢から自らが選択できるようにしたいと思います。’ノン’アルコールという言葉が示すように、飲食店や懇親会などのイベントごとではどうしてもアルコール=お酒が中心で、それ以外はサブというシーンが日本ではまだまだ多いように感じます。

一方で、アサヒビールの推計では、お酒を飲む習慣がない成人は4,000万人いるといわれており、サブどころかお酒を飲む人より多い層です。お酒を飲む人も飲まない人も、あらゆるシーンを楽しめる飲みものの選択肢が増やせればと思っています。

2つ目は、選択肢の多様化を実現するための仕組みづくりです。こだわりを持って高品質なものを作られている生産者の方は多くいますが、それらを適切に消費者に届けられていない現状があります。消費者の側から見た時も、手軽に入手できない、欲しいシーンで買えないなどの課題があります。これらの課題を解決するために、生産者が製品を欲しい人に届けやすくし、消費者が欲しい時に入手できる仕組みを提供していきたいです。

3つ目は、ノンアル飲料の普及を通して、健康な人を増やし、経済損失を減らすことです。充実した日々を送るには、健康であることが大事なのは明白です。アルコールの過剰摂取は、臓器障害、生活習慣病、がん、急性アルコール中毒、酔ったことによる転倒やトラブルなどによる外傷など、体にさまざまな影響を及ぼします。日本人男性の死亡の5%が、46g/日以上のアルコール摂取のために発生しており、アルコール摂取を抑えれば予防可能であったという推計もあります※1。これらの疾患による医療費が年約1兆円、病気や生産性低下によって失われる賃金が約3兆円と、アルコールの過剰摂取による社会的損失が年間約4兆円に達するという厚生労働省研究班の推計もあります※2。

ノンアル飲料の選択肢が増え、アルコールからノンアルへ消費がシフトし、過剰なアルコール摂取が減ることで、このような健康や経済的な損害を減らすことにも貢献できればと思っています。その結果、ひとりでも多くの方の健康的・経済的な豊かさが増し、人生の満足度が向上すれば嬉しいです。

これらの先に、お酒かお酒じゃないかの二元論ではなく、みんながシーンに合わせて飲み物を楽しんでいる世の中が実現できれば、今よりちょっといい未来になると思いませんか? この事業は、飲みものという身近で必要不可欠なものを通して、より自由で、充実感のある人生や未来を作っていくサービスだと思っています。

最後になりますが、Beverichはこれから「飲みものの楽しみを増やす」というミッションを実現していくため、積極的に採用活動を行なっております。私の描いた未来図に少しでも興味を持ってくださった方は、下記から募集職種や業務内容を確認してお気軽にご連絡ください。

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Beverich代表 木下慶

Naomi Miyakawa(Editor)

参考文献
※1: 飲酒と死亡リスク, 国立がん研究センター, 2011年04月18日
※2: 社会的損失は年4兆円 厚労省推計、たばこに迫る, 日本経済新聞, 2015年10月15日

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