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“Diversity, Equity & Inclusion Week” 後編 BCGDVの子育て社員座談会を通して見る、育児と業務の交差点

今年で4年目となる Diversity, Equity & Inclusion Week (以下、DEI Week)。前編では、DEI Weekの意義や目指す姿、さまざまな事情を抱えた人に対し、どのように「Ally(支援者)」でいられるかなどのワークショップや、アクティビティの様子をお届けしました。

「育児」という身近なDEIを見つめて

今年のDEI Weekでチャレンジしたことの一つに「身近なDEIに目を向け、日常生活の中でお互いのことをさらに理解し、助け合える関係をつくること」があります。

身近な個別事情といえば育児や介護が挙げられますが、これらは身近なテーマではあるものの、個人的なエピソードを交えて分かち合うことは簡単ではありません。日々プロフェッショナルとして働くメンバーの中には、どこまで私生活をオープンにするか苦心している人もいます。

そこで今回は、有志の社員の協力を得て「BCGDV DEI Round Table on Childcare」という座談会を開催しました。育児といっても、その様相は家庭・個人ごとに多様ですし、子育て中の社員もそうでない社員も、さまざまな課題に直面しながら働いています。今回の座談会では育児をテーマにしつつも、それにとどまらないさまざまな個人の事情への想像力を働かせること、これらの対話を通じて、BCGDVが今以上にインクルーシブで、チームで価値を出しやすい組織となることを目指しました。

座談会には、育休から復帰したばかりの人から小学生の子を持つ人まで、子育て中の社員が複数参加。子どもとの関わりの中で発生する想定外の出来事や、仕事と育児を効率的に行うための工夫、時間に制限があるからこその悩みに至るまで、トピックは多岐に渡りました。

座談会の登場人物は次の通りです。

ファシリテーター:
NJ:Senior Strategic Designer

パネリスト:
NM:Venture Operations Lead。4歳と0歳の姉妹の母。2022年4月に二度目の育休から復帰。

ST:Senior Engineer。歌うのが大好きな5歳の娘がいる。

NK:Senior Experience Designer。1歳の息子は食べられるものが増え、ぽっちゃりしてきた。

TN:Recruitment Manager。10歳の娘と6歳の息子の母。最近娘とサブカルという共通の趣味を楽しんでいる。

UZ:Lead Venture Architect。9歳と4歳の娘がいる。下の子が大人並みに食欲旺盛。

オーディエンスであるBCGDV社員も、チャット機能やmiroボードで双方向のコミュニケーションをとりながら、和気あいあいとした雰囲気の中行われました。


人それぞれの子育て事情

妊娠・出産・育児をする中では、予想しえない突発的な出来事が頻繁に訪れます。妊娠中の急な体調の変化、目に見えづらいメンタル不調、幼稚園・保育園のイベントなど。座談会中、特に共感が寄せられたのは「子どもの病気」でした。

NK:「子どもが予想以上に保育園から病気をもらい登園できなくなります。今年の夏は、ヘルパンギーナや手足口病が大流行。私は出産を機に夫の実家近くに引越をして、義父母からサポートを得られやすい環境に変えたのですが、病気によっては義父母に預けられないこともあります。そういった場合は、ワークプランを変更して看病休暇をもらっています」

NKさんが予想外だったのは、その頻度。子どもの病気は妊娠中からよく聞いていた話ではあったものの、実際に子育てをしてみると「これほどとは思わなかった」といいます。ある週にヘルパンギーナにかかり、治ったと思ったら次の週には手足口病に。

さらにその病気は子どもだけでなく、容赦なく親にも牙をむきます。

NM:「子どもの風邪までは予想していたんですけど、毎回自分にうつるまでは想定していませんでした。目の前でくしゃみや咳を浴びるので、感染は避けられません。家族でうつしあっている状態で、やっと全員治ったと思ったら、先ほどNKさんが仰ったように、また次の病気がやってくる」

発熱がなく「なんとなくしんどい」程度の風邪であったとしても、その状態で仕事・家事・育児をこなさなければならないとなると大変です。周囲が「子どもは予想以上に風邪や病気にかかる。そして、たいてい大人にうつる」ことを知識として知っていることで、当事者の罪悪感を減らすことができるかもしれません。

また、保育園と幼稚園の違いについての声も。

ST:「子どもが保育園に通うか幼稚園に通うかで、けっこう状況が変わるものです。うちは幼稚園なのですが、共働きではないので妻のサポートを受けやすいものの、今日はイベントでお迎えが早い、だから会議の時に子供の声が入ってしまうかもしれない、といったイレギュラーも多いです。コロナの対応も、日常的なルールも、園によってまったく事情が異なるので、幼稚園・保育園にもグラデーションがあることを伝えられると嬉しいです」

同僚やクライアントにどこまでオープンに話すか

BCGDVは、それぞれの高い専門性を強みとしたプロフェッショナル集団です。また、クライアントを「コーポレートパートナー」と呼んでいてクライアント企業の社員の方にBCGDVのオフィスに常駐頂くこともあるなど、共に新規事業を創るメンバーとして、コーポレートパートナーとBCGDV社員がワンチームで協業する働き方をしています。プロフェッショナルであると共に、チームとしてのコラボレーションを大切にしているがゆえに、メンバーの中には「私生活の事情を仕事に持ち込むこと」に悩みを抱える人もいます。その結果、周囲に助けを求められず一人で負担を感じてしまうことも。座談会では、次のような声が上がりました。

UZ:「学校行事、誕生日、受験など、子どもに関する予定をコーポレートパートナーもいる会議でどこまで話すのが適切か悩みました。そのときに話さなかったとしても、後々調整しなければいけない局面が発生するので、初めに伝えておいたほうがいいとは思っていたのですが」

この悩みを抱いていたUZさんは、考えた末、できるだけ家庭の事情を周囲に共有するようにしたといいます。

UZ:「自分が家庭のことをオープンにすれば、他にも同じような悩みを抱えている人が後に続きやすくなることもあると思うんです。今この瞬間、自分が働きやすいというだけでなく、会社全体、さらにはクライアントと共に働きやすい環境とは何かを考えるきっかけになれば、オープンにするのもいいのかもと思っています」

同様に、今自分が抱えている課題や弱点を周囲に話すかどうかも迷うもの。苦労を表に出さないことが美徳だという価値観を持っていると、自分自身にマッチョな働き方を強いてしまいます。「立派な自分でいなければ」と、周囲に苦悩を話せなかったという社員がいました。

TN:「前職では子育て中の女性が少なかったこともあり、ロールモデルのような扱いで下駄を履かせてもらってマネージャーに昇進したと思っていて。そんなふうに感じていたので、朝7時からの対面の会議でも子どもを親に預けて出席していましたし、他のマネージャーがやっていることは全て同じようにやらなければと思い込んでいました」

けれど今振り返ると、もっと違う立ち回りができたのではないかと思うことがあるそう。

TN:「あの頃は、毎日エネルギーを使い果たしていてくたくたな毎日でした。今思えば、後に続く女性社員のためにも、子育てをしている者としての苦労を周囲に伝えて、先陣を切って環境を変える動きが必要だったと思います」

成長意欲と現実のギャップに悩む

子育て世代の共通の悩みは「時間がない」こと。独身時代や子どもができる前は、読書や勉強会など自己研鑽に時間を費やすことが当たり前だった社員にとって、インプットの時間を取れないことは大きな不安要素となります。

座談会では、「自分のためのインプットの時間がなく、家庭や仕事を回すだけで精一杯。それ以外の時間をどうやって作っていますか?」という質問が寄せられました。

NK:「これ、本当にそうですよね。誰かにおすすめの本を紹介してもらっても、読む時間をとれずもどかしい気持ちになります。子どもの年齢や状況によっても違うので、参考にならないかもしれませんが、私は朝4時に起きて自分だけの時間を確保するようにしています。それから、子どもの添い寝を夫と日替わりにしたり、家事代行を活用したりも」

さらにNKさんは「時間のつくり方」に加えて「時間の使い方」も重要だと話します。

NK:「自分の時間ができたら、その貴重な時間を少しでも有効活用できるように、効率的にインプットできる方法を模索中です。先日も、会社のメンバーから時短で本を読む方法や、子どもが早く寝るための工夫を教えてもらいました」

UZさんは、インプットの時間を確保するためにあえて各駅停車の電車に乗っているとのこと。さらにオーディエンスからは「『Audible』のような朗読サービスを使って書籍をインプットしている」といった意見も出てきました。子育てに限らず、時間がないことに悩む人にとって有益な情報交換の場となりました。

周囲がAllyであるためにできること

では、周囲のメンバーはどのように支援の必要な社員をサポートできるでしょうか。子育て社員の「助けてもらって嬉しかった」エピソードから考えます。

まずは、出産日前後のスケジュールの見通せなさ。赤ちゃんは出産予定日にピッタリと生まれてくるわけではありません。繁忙期に第二子が産まれたというUZさんは当時をこう振り返ります。

UZ:「第二子が産まれそうなタイミングで、重要なプレゼンを控えていました。妻は入院するので、私が上の子をみる必要があり、それを一緒にやっていたメンバーに相談したところ、快く休みを受け入れてくれました。結局、1週間の休みをもらいましたが、その間に何があったかを戻ってすぐキャッチアップしてくれたので、スムーズに復帰することができました」

この経験を通して、UZさんは「当事者になって初めて知る大変さがある」ことを実感したといいます。

UZ:「1人目が産まれたときより、2人目のときのほうが父親もやることが多いです。それは経験してみるまで知りませんでした。自分が当事者になったことで、人それぞれが持つ個別事情を気にかけるようになったと思います」

子育てに悩む社員に直接支援できることがないように思えても、「人を紹介する」ことが助けになることもあります。当事者同士のつながりは、知恵を出し合ったり感情を吐露できたりと、本人にとって心強い存在。

NK:「育休明け直後はなかなか働き方を掴めずにいたのですが、そんなとき複数のメンバーがママ社員を紹介してくれました。BCGDVジャパンヘッドの平井さんも、似たような状況の人をメンターにつけようと動いてくれ、BCGのママ社員とのつながりもできました。出産前以上にパフォーマンスを出すためにできることや、仕事に対する考え方などのアドバイスをもらい、視野が広がりました」

さらに、小さな声かけが当事者の心を軽くすることも。事情を抱えた社員は、自分から配慮を求めるのにも緊張します。そんなとき、相手から先に配慮の言葉があると救われる思いがするそう。

ST:「新しいプロジェクトに参加する直前に、小さな子どもがいる自分に『働き方はちゃんと相談できますよ』と言って安心させてくれたメンバーがいました。また、なかなか自分の状況を言い出せなかったときも『STさんも同じだと思うんですが……』と先輩パパとして事情を代弁してくれて、とてもありがたい気持ちになったことを覚えています」

また育休中は孤独を感じることが多くなります。いくら子どもが可愛くても、言葉を発しない赤ちゃんと四六時中ふたりきりでいるのは精神的な負担も大きいものです。

NM:「産前に仕事をしていた頃と比べると、突然社会とのつながりが断たれた感じがして、けっこう孤独でした。そんなとき、Slackやメッセンジャーでちょっとした連絡をくれたり、参加しても差し支えない会社のイベントに誘ってもらえたりすると、忘れられていないことがわかってとても嬉しかったです」

NK:「産後うつになる人の割合も一定いると言われるほど、育児は孤独なもの。同僚から、何かしらの気分転換に誘ってもらえるだけで『リフレッシュできたから、また育児をがんばろう』って気持ちになれますよね」

誰かから支援される。この経験を通して、当事者自身も多様な生き方を尊重することを学んでいきます。ダイバーシティやワークライフバランスの概念にいまいち腹落ちしていなかったという社員も、子育てを通して考え方が変わったと話します。

TN:「率直にいうと、以前はポリティカル・コレクトネスから『ワークライフバランスは大事』と言っていました。本音では、仕事とプライベートのバランスを上手く取るのは自己責任だと思っていた節があったかもしれません。ですが、育児でいろいろな人に助けてもらう経験をしたことで、今は本当に尊重の気持ちを持つようになりました。育児でも病気でも介護でも、人はそれぞれ事情を抱えることもある。相手にも自分自身にも寛容になれた気がしています」

ご紹介した内容は座談会のほんの一部ですが、この他にも家庭・個人ごとのさまざまな状況を共有しあい、子どもの有無にかかわらず、固有の事情を抱えている社員同士の視点から、率直なディスカッションを行う事ができました。 オーディエンスからの「育児だけに焦点があたるのでなく、いろいろな人が抱えるそれぞれの事情が等しく配慮されるチームであってほしい」というコメントに象徴されるように、BCGDVはこれまで以上にインクルーシブな環境、チーム全員が価値を発揮できる組織を引き続き目指して行きます。


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