BCG Digital Ventures(以下、BCGDV)は、大企業との共創を通じて、世の中にインパクトのあるサービスを創出することをミッションにしているプロフェッショナル集団です。プロダクトマネージメントやエンジニアリング、デザインなどのエキスパートが在籍し、プロダクトとビジネスの両輪で革新性の高い大きな事業をグローバルに生み出し続けています。
今回は、Lead Strategic Designerの岡橋惇、Lead EngineerのJ.M.Schaeffer、Senior Strategic Designerの木村恵美理の3名が、ダイバーシティをテーマにBCGDVの現在地点について語り合いました。
BCGDVのダイバーシティ、率直に言うとどう?
——簡単な自己紹介と、みなさんがBCGDVに入社するまでのキャリアを教えてください。
JM:私はエンジニアとして、デジタルプロダクトを開発しています。出身はフランスで、27歳まではフランスでエンジニアとして働いていました。9年前に来日し、BCGDVには6年前に入社。前職では、IT企業でモバイルアプリを作っていました。
日本に興味を抱いたきっかけは、18歳の頃に住んでいた小さな町に日本語教師の日本人が住んでいたんです。その人から日本の文化や価値観について話を聞いていて、いつか日本で仕事をしてみたいと思うようになりました。
木村:私はストラテジックデザイナーとして、プロジェクト全体を通してどのようなアプローチが適切か考え、そのプロセスや手法からデザインする役割を担っています。またリサーチから発掘したインサイトを、適切なアウトプットの形に導くことも重要な役割の一つです。最近のプロジェクトとしては、商業施設のコンセプトメイキングや企業のビジョン策定の支援をしています。
美大出身で、卒業後はデザイナーとして働いていました。その後、イギリスの大学院で、「ナラティブ」を基軸にしたデザインプロジェクトに携わったことが今の仕事に繋がっています。BCGDVはエージェントからの紹介で知ったのですが、面白そうな人がいる会社だなと思い、2020年1月に入社しました。
岡橋:私も木村と同じストラテジックデザイナーです。ここ1年程は、コーポレートパートナー(クライアント)と立ち上げたジョイントベンチャーに出向し、プロダクト責任者を務めていたのですが、最近またBCGDVに戻ってきました。
前職では、第三者としてコンサルティングをするプロジェクトが多かったのですが、BCGDVでは当事者としてクライアントと一緒にプロダクトを作るところが魅力的だと思い、2019年1月に入社しました。
——「ダイバーシティ」という観点からみたとき、BCGDVはどのような会社ですか? プロジェクトメンバーや同職種のメンバーなど、どんな人たちと働いていますか?
岡橋:BCGDVは全員がキャリア採用なので、経歴が多様なところが面白いですね。それから、他のコンサルティングファームと比べて、東京オフィスと海外オフィスの横断的なつながりが濃いと思います。国をまたいだ事例共有もSlackで気軽に行われています。
一方で、ジェンダーという観点でのダイバーシティはまだ改善の余地があると思います。職種によってはジェンダーバランスに偏りがあるので。
木村:そうですね。ジェンダーや国籍のような、「属性」として測れるダイバーシティは十分とは言えないかもしれません。ただ、価値観やバックグラウンドという内面的な部分では多様性があると思っていて。私のキャリアもストラテジックデザイナーとしては珍しいかもしれませんが、スキルや考え方など「その人」を見て採用している感じがします。
大企業出身の人もいればスタートアップ出身の人もいて、ストラテジックデザイナーに関して言えば、前職の肩書きがデザイナーだったり、マーケターだったり、研究員だったり……。バックグラウンドが多様だという実感はありますね。
JM:バックグラウンドは確かに多様ですね。それから、日本の伝統的な企業には「出る杭」になりたがらない人が多いですよね。ですがBCGDVはスタートアップマインドの人が多く、ユニークな考え方も大歓迎なので、意見の言いやすさはあると思います。
東京オフィスで働く外国人も複数いますが、基本的にコーポレートパートナーと共に日本語で仕事をするという点で、外国人にとっては難易度が高いかもしれません。とはいえ、海外オフィスのプロジェクトにアサインされることもあるので、働く環境はグローバルです。
「違い」からくる困難を乗り越えるために必要なものとは
——バックグラウンドや価値観が違う人たちと働くとなると、ときに困難も生じると思います。これまで苦労した経験はありますか?
木村:BCGDVのプロジェクトでは、ボストン コンサルティング グループ(以下BCG)のコンサルタントとコラボレーションすることも多いんです。通常、どちらかが主体のプロジェクトにそれぞれのメンバーが入る形となることが多く、どちらかのやり方に合わせて進めざるを得ないこともあります。
ただ最近、ちょうど両方の組織が50%・50%で主体となるプロジェクトがあったんです。初めは各々のやり方で進めて、合流地点でドッキングするという方法をとりました。その方法だと速いのですが、最終的なアウトプットの共鳴性が薄かったんです。
そこで次のフェーズでは、各々のやり方で進めるのではなく、目的に対して本当に有用なアプローチやツールの使い方などを都度話し合って、建設的に決めるようにしました。その結果、一社だけではできなかったようなものができあがり、互いのやり方を言語化して理解し、寄り添うことの大切さを学びました。
——JMさんはCross Office Staffing(海外オフィスとのプロジェクト)経験もありますよね? 何か発見はありましたか?
JM:ベルリンに4ヶ月行っていたのですが、そこではLGBTQへの配慮や意識が高いと感じました。例えば、「彼女いますか?」ではなく「パートナーいますか?」という聞き方をするなど、小さなことにも意識の高さが滲み出ていました。
ただ、私は違いがあることをあまり困難だと思っていません。みんなが仕事に前向きで、わからないことを聞き合う文化があれば、違いはさほど大変ではないと思います。
最近、半年間シドニーで仕事をしていたのですが、ダブル国籍の人が数名いたこともあり、プロジェクトメンバー18人の国籍が22カ国だったんです。それでもあまり苦労をすることはなく、むしろ国をまたいだ色々なトピックで盛り上がりました。苦労しなかった要因は、みんなが何でも気軽に質問しあっていたからだと思います。何を聞いても、誰もジャッジしない雰囲気でした。人と関わることを恐れない姿勢が大切なのだと思います。
——違いを組織の強さに変えるためには、何が必要だと思いますか?
岡橋:まずは、メンバー同士のどこに違いがあるかを可視化する必要があります。違いを言語化するような仕組みを作るのもいいと思います。最近、BCGDV社内では、プロジェクトが始まるタイミングで「コミュニケーションスタイルワークショップ」を実施することもあります。例えば、コンフリクトを歓迎するのか、回避しがちなのか。大人数でワイワイ過ごすのが好きか、少人数でじっくり話すのが好きかなどの質問に各自が答えていき、お互いのコミュニケーションスタイルを理解しあうものです。その人がどんなコミュニケーションを好むかによって、場の設計も変わってきます。
ダイバーシティについて語るとき、違いが注目されがちだと思うんです。けれど私たちには、違いと同じくらいかそれ以上にコモングラウンド(共通点)も存在します。仕事のことでもパーソナルなことでも、共通点に目を向けてみることも大切だと思っています。
木村:相手に興味を持ち、理解・共感し、こうしてみようと行動を変えていくプロセスは、自然にもできますが、自然にやろうとすると時間がかかります。私たちのプロジェクトは限られた時間内でアウトプットを出さなければならないので、コミュニケーションスタイルワークショップのようなツールを使ったり、独自のルールを作ったり、ファシリテーションによる介在はけっこう大切だと思っています。
従来の枠や常識から出た先に、新しい発明が生まれる
——社風の全く違うコーポレートパートナーと協業するときに、苦労することはありますか?
JM:苦労という程ではないのですが、1日目のコーポレートパートナーとの顔合わせのとき、BCGDVメンバーはカジュアルな服装で、先方はかっちりとしたスーツであることがほとんどです。私たちがラフなので、2日目からは先方もカジュアルな格好へと変わっていくのですが、働き方も色々とあるので皆さん探り探りですよね。
木村:私は大企業の上の役職の人たちと話すとき、全員がそうではないとはいえ、“少し異質な存在”に見られていると感じることがあります。そのバイアスは、服装も含めた見た目の印象の違いからくるものだったり、今までビジネスの文脈では会ったことのないタイプだったりで、「本当にこの人たちは信頼できるのか?」という警戒心から生まれるものかもしれません。ただ、バイアスは誰もが多かれ少なかれ持っているものなので、それを外してもらえるように心がけています。自分自身が性別、年齢や肩書きなどの看板を外して、ありのままでいること。「私」と「あなた」という個人としてのコミュニケーションを取れるようになることで、よりよいコラボレーションが生まれます。
岡橋:「バイアス外し」は楽しいですよね。私たちは新しいものを生み出すことが仕事なので、それぞれが持つ常識を取っ払ってもらう必要があります。例えば、一般的な会社では誰かのアイデアをマネすることはNGかもしれませんが、BCGDVのプロジェクトにおいては「いいと思ったものはどんどんマネしてください」と伝える。コーポレートパートナーの方々が、目に見えて表情も行動も変わっていくのを支援できるのは嬉しいです。
——自分の幅を広げるためにプライベートを充実させたり、ワークライフバランスを維持したりする上で、心がけていることがあればお聞かせください。
岡橋:最近、いろいろなコミュニティに違う自分で参加すると、ウェルビーイングが高まるという論文を読みました。私は今、家では子どもの父親であり、会社ではストラテジックデザイナーであり、過去に大学で教えていたときは先生として周囲と関わっていたんですね。一つの役割に固執してしまうと、それが立ち行かなくなったときのダメージが大きいと思うんです。「自立とは依存先を増やすことだ」という熊谷晋一郎さん*の考え方が好きなのですが、自分の肌感覚としても、居場所が複数あることでパフォーマンスが上がるように感じています。(*熊谷晋一郎 Twitter https://twitter.com/skumagaya)
JM:私は、自分の幅を広げるためにもコンフォートゾーンから出て、知らないことや人と出会える時間を持つようにしています。どうすれば仕事を効率的に進めて自分の時間を捻出できるか、いつも考えています。
木村:自分の時間って、「ワーク」と「ライフ」の二つだけじゃなくて、例えばワークにもお金をもらってする仕事もあれば、自分の関心を深めるための研究もありますよね。ライフにも、趣味も家族もさまざま含まれています。なので、私はいろいろなところに時間やエネルギーを分散させてバランスを取るようにしています。いろいろな経験が結果的にはストラテジックデザイナーという仕事につながってくると思っています。
——どんな人と働きたいですか? BCGDVの未来のメンバーに期待したいものがあれば教えてください。
木村:いろいろなことを面白がれる人がいいですよね。BCGDVは新しいことが出来る環境のある会社だと思うので、従来の枠の中で考えるだけでなく、自分たちで開拓していくマインドがある方だと楽しんで働いてもらえると思います。
JM:私は未知との遭遇が好きなので、自分が知らない世界を知っている人と働きたいですね。みんなそれぞれユニークネスを持っているので、ぜひ個性を発揮してほしいです。それから学びたいという意欲があれば、知識がまだ十分ではなくても、BCGDVには学べる環境が揃っているので飛び込んでみてほしいです。
岡橋:仕事だけじゃなく、いろんな方面に好奇心を持って生きている人に来てもらいたいです。今のBCGDVの輪郭に当てはまるようなスキル・経験がある方はもちろん歓迎なのですが、その輪郭そのものを変えてくれるような、今の組織にはない何かを持っている人と仕事ができると嬉しいです。