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【訂正版】ARR100億円は通過点。Nextユニコーンに向かうAsobicaの可能性とは(Eight Roads Ventures 村田氏インタビュー)

こんにちは、木村です。先日イベントレポートを展開しましたが、読者の方にAsobicaをより知っていただきたく、今回のラウンドから投資いただいた Eight Roads Ventures Japan パートナーの村田氏に調達までの経緯やその裏側を伺いました。

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Asobicaとの出会い

ーまず村田さんと今田さんの出会いから教えてください

村田:サイバーエージェント・キャピタルの北尾さんからの紹介で昨年の10 月くらいでした。北尾さんの起業家を見る目は以前から凄いセンスを感じていて、そんな彼から以前から素晴らしい起業家がいるからと聞いていたのが今田さんでした。丁度コロナが落ち着いた時期で珍しくオフィスを訪問できるタイミングだったので、五反田にあるAsobica のオフィスに行ったんです。すると、それがもう古ぼけたオフィスの会議室で、窓を開けると5cmくらい先に隣のビルの壁がある、これぞスタートアップというオフィスでなんか懐かしい感じがしてニヤッとしたのを覚えています(笑)
で、しばらくするとその裏ぶれたオフィスとは真反対なキラキラしたオーラな今田さんが出てきて、そのコントラストが異様に対照的で、久しぶりのオフラインミーティングだったのと相まって鮮明に記憶に残ったのを憶えています。

最初の印象は、プロダクトの力で引っ張るというよりはビジョンドリブンで、数値を語るというよりはチームの熱量を重視している、というもの。で、これは出来上がったマーケットを刈り取るのではなくこれからのマーケット作り上げてく必要のあるスタートアップとしては適性が高く、面白そうな可能性がある会社だなって感じました。
今田さん、言っていること合ってますか?

今田:はい、合ってます(笑)エイトローズさんとはAsobicaとしても元々接点を持ちたいと思ってまして。そこでサイバーエージェント・キャピタルの北尾さんに相談して、紹介してもらったんです。一番初めに村田さんとお話をしたMTG終わりで「凄いAsobicaと相性が良さそう」と取締役の小父内とも盛り上がったことを覚えてます。

というのも村田さんは足元のKPIや現時点のプロダクトに対する質問ではなく、どのような未来を作っていきたいのか?といったようなAsobicaのミッション・ビジョンを沢山深掘りしてくれたんです。Asobicaの採用基準ではミッション・ビジョンへの共感を特に大事にしてますが、これは投資家も同じで、短期でどう伸ばすかではなく長期でどのような未来を作るかを一緒に考えてくれる人に投資家として支援をしてもらいたいと思っていた。そういった意味で村田さんはまさにAsobicaが求めていた投資家像の人だ!と。

現在のSaaS市場について

ーAsobicaの出資の前提となる、今のSaaS市場や資金調達の状況について教えてください

村田:グローバルでSaaS のパブリックマーケットとプライベートの調達市場が調整局面にあることはみなさんご存知の通りかと思います。ただ、10年以上かけて成熟が進んできたグローバルにおけるSaaS市場と、日本においてここ数年で立ち上がり始めたSaaS市場は抱えている前提条件やステージ感が全く別物だと考えています。

日本においては特に製造業以外の生産性についてはデジタルの力を無視しているとも言えるくらい課題先進国で、いまだに不必要なペーパーワークや勘に頼った意思決定が幅を利かせている。そして、その課題を解決していく道筋は始まったばかり。また、数兆円のSIerマーケットがあるのは日本くらいでそれがSaaSに置き換えられていくトレンドが本格化するのはこれからだと思っています。つまり構造的にSaaSが伸びていく前提は整っていて、これだけの事業機会を望める日本のSaaS市場は固有のファクターで支えられていてポジティブなビューを持つことは大いに可能だと思っています。

ーそのような状況でこれからのスタートアップが考えるべきことは何でしょうか?

村田:上記のようにまだマーケットの黎明期と考えられるわけですから、常に進化を本質的に捉える姿勢が必要です。例えば、e コマースという言葉が表すものがAmazon やその他の様々あり、ソーシャルメディアという一般名詞がもはや何も示さないのと同じように、SaaS という言葉も広すぎて、実際には何も指さないようになっていくことになると思います。

現時点でわかっている方向性の分岐としては、SaaS としての立ち位置が企業の事業オペレーションにとってMust have になるか、それともNice to have になるのかの大きな方向性の違いがあると思います。これはどちらが良い悪いという話ではなくポジショニングの話です。
Nice to have は便利ツールのような立ち位置になり、より多くのユーザーを抱えながら価格調整を効かせながらどんどん普及していく競争と、一方で、多くのユーザーというよりも特定の企業にとってMust have の存在となりその企業を勝たせるようなOS(オペレーションシステム)としての立ち位置になる方向性は別物だと考えています。SIer市場を置き換えていくというチャンスが日本にある以上、どちらかというと企業とコラボレーションするようなパートナーになっていく、OSのポジションを取れる可能性のある後者のようなSaaS により高い興味を持っています。

ー投資家の立場から投資する際に注目しているポイントはどのようなものですか?

村田:さっと話を聞いてARR100 億円がシンプルに通過点として捉えれるかどうか。深く細かいDDに入る前に、単価とユーザーの数の掛け算でさっと捉えて100億が数年以内に見えるかどうか、その将来のスナップショットが最初にふっと、さらっと素直に腹落ちするかどうか、がファーストリアクションになってきます。

そのポイントを通過した上で、その通過点までの山はどれくらいで登り切る為には何が必要か、あとしっかり商流として「自然に水が流れる角度」がついてるのかそれとも無理矢理ポンプで流さないといけないのか、また、「事業を地面に叩きつける重力」は高度が上がるたびに上がっていくのか下がっていくのか、ビジネスとしてサステイナブルな成長が成り立つためには何が成立要件であり自社でコントロールできる部分と環境要因として割り切る部分をしっかり切り分けて整理することが必要になってきます。全てがオールクリアにならないので、わかった上でリスクを取るというスタンスが投資家に求められていると思います。

とてもシンプルな話として、事業としてのリザルトは常に「事業機会の大きさ×エグゼキューション(実行力)」であり、上記の通り前提となる事業が立脚するマーケットの構造を理解した上で、すべての前提が成り立った上で到達可能な事業の大きさと、それが実行できるチームかどうか、その2つをしっかりと解きほぐしていくことになります。


Asobica については、Asobica のツールを通じて広がっている事業機会が非常に大きいことと、エグゼキューションの部分はまだまだこれからの部分が多いですが、ビジョンの熱量とそれに付随する採用力からそこはスッと自分の中で納得感を持つことができたと思っています。事業機会が大きいことは顧客の側で勝手にツールの使い方を生み出している事例を多数見れたことで間接的にそれを感じることができました。経験上、この特徴はうまくいくSaaSスタートアップの初期ステージによくみられる傾向だと思います。

Asobicaに出資しようと思った理由

ーどういうポイントで採用力があると思われたんですか?

村田:今田さんは自分が足りない部分を理解されているし、そういう方はワンマンになりにくいです。自分のポジションや立場に対するこだわりが非常に低いし、自分の成功と会社の成功を並べた時に会社の成功の比重が高い。こういうリーダーがいる組織はうまくいく。おそらく昔は違ったと思います。おそらく今田さんも昔は経営者として1 人で全部やらないといけないと考えていたのではないかと感じました。と同時に、その後限界も感じたのかな、と。そのように失敗や自省を通じて自分をメタ認知できる人だと今後の成長に安心感があります。

今田:村田さんが言うように、最初の頃は自分は会社の代表として完璧でないといけないと思っていた時期もありました。でも課題にぶつかる度に、自分ではない誰かが解決策を出してくれたり、助けてくれたりして。その過程の中で、自分自身が完璧である必要は一切なくて、むしろ足りない事を自覚して、誰かに助けを求められることの方がよっぽど重要だと気づきました。今では”チームを強くすればどんな課題も全て解決できる”と信じているので、自分の時間の多くを採用に使っていますね。

ーAsobicaに関しては、出資の決断まではどのように進んだのでしょうか?

村田:最初に今田さんに会ってから自分が忙しくなってしまって少し時間が空きました。ただ、日本のメンバーやグローバルの同僚たちとのディスカッションを通じてマーケットを勉強する中で、これは単なるコミュニティ生成ツールではないと、それを越えてプロダクトや財務数値中心の経営から、顧客に対する理解を前提とした経営に転換できる、つまりカスタマージャーニーやプロダクトのあり方自体も変えていく、ある意味その種の内省を企業に促すことができるプラットフォームになる可能性を感じることができました。かつ、エンタープライズ適性がある。
ターゲットとなる顧客像も進化する、という方向性と、手前でどんどん仕込んでいるプロダクト進化、この二つが重なれば「これだったら100 億円いけるかも」という手応えを掴むことができました。

ーそうだったんですね。ちなみに出資を決めたのはどの辺りのタイミングだったんですか?

村田:最初にお会いしたのが2021 年10 月くらいで2022 年1 月ごろから検討が加速しました。弊社はグローバルのメンバーを巻き込んだディスカッションや調査など、相当の稼働をかけるので、投資する方向で議論を加速するためには、もう少し今田さんと話をしてどの方向に進化するのか深く理解しないといけなかったのですが、そこが見えてきたのが大きかったです。

結局、SaaSのプロダクトの進化って、例えばドラクエのダンジョンみたいに一歩進まないと先がわからないようなアプローチだとかなり難しいと思っています。その場の問題に場当たり的に対応しているようだと当然ながら目指す世界観は作れない。

むしろアプローチは逆で、我々の事業として目指す世界観はこれで、それが完成した場合には、お客さんの世界がこうBeforeとAfterで明確に変わる。そこのゴールイメージがあって、じゃあ、現状まだまだだけれどもじゃあそこに何ステップで到達するかを明確にイメージしながら進化する、そういうスタンスが決定的に大事だと思っています。つまり自社として、将来のプロダクトの提供価値の解像度が高く見えているかが重要で、もちろん微調整や対応はしますが、結局はお客さんに追従するのではなくお客さんも気づいていない世界に連れて行ってあげる、そういったアプローチが成功するSaaSの基本姿勢だと思います。で、僕たちも外側の視点からその提供価値が共有でき、惚れ込めたときに、ではその実現に向けて我々もその世界を実現するチームの一員として一生懸命にサポートします、という関係性になれると思っています。投資してから思ってもない不都合な問題は当然のように何度も発生しますが、投資家としては、その将来像を一緒に握れるかどうかが大事で、そこがしっかり握れていると動揺せずに支援を続けることができます。

今田:そういえば、Asobicaの成長ロードマップを村田さん側から提案していただいたのはとても印象的でした。村田さんにとっては投資検討する際に毎回やられている事なのかもしれませんが、少なくとも自分達にとっては初めての体験で驚きました。
多くの投資家の方が、会社や事業を見極めるためにある種粗探し的なQAを実施する事も多い中、村田さんの検討プロセスは他の方とは全然違っていた。減点方式というよりは常に加点方式で、どのような形で事業・会社を成長させていくべきか、といった未来の話が大半でした。改めて村田さん含めたエイトローズさんと一緒にやりたいと思えたきっかけでもありました。

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投資家から見るAsobicaの魅力

ー改めてAsobicaの魅力を教えて下さい

村田:まず、マーケットに関して言うと、サードパーティクッキーが使えなくなるというトレンドがあって、事業のポジショニングとしてその周辺にいることが大きいです。これは自社が獲得した成果でなく、先天的なポジティブな環境要因と言えます。

企業にとって顧客の数という数字はあくまで過去の結果であって、ある意味未来にとって何の意味も持ちません。企業の将来を決める上で決定的に大事なのは、顧客との本質的な関係性です。例えば、サードパーティクッキーがなくなって、新しいお客さんを取るよりも、既存の顧客との関係性を改善し、データを蓄積するということが高い確率でその事業を成功させるために必要な所作になりますし、そこの理屈に共感できる企業はそのアクションにより投資することになることは自明だと考えています。Asobica はその重要性が増すマーケットのど真ん中にいるという印象です。

2つ目は、既存の顧客の現状のプロダクトに対する熱量が異様に高いこと。これは繰り返しになりますが、様々な顧客にオリジナリティのある使い方をされていることがその論拠になっています。つまり、顧客が自発的にイシューとソリューションに向き合っているということであり、同時にプロダクトに積極的にエンゲージしているという状況証拠になります。

また、その顧客ターゲットの広がりもすごいペースで進んでいます。B2Cを営む企業もB2Bを営む企業も両方どんどん伸びている。B2Bの中でも新興のソフトウェア企業もあれば、伝統的なオフライン企業もある。この潜在的なTAMの広がりをファクトで裏付けることができているのは心強いです。

最後は、Asobica がしっかりとプロダクトロードマップを実現し事業仮説を証明できれば、顧客の事業活動にとって、ちょっとしたアプリケーション的な枝葉の存在を超えて、事業運営上になくてはならない幹のような、日々のPDCAを回す上で寄って立つOS的な存在になれる可能性がある点です。プロダクトが日々のオペレーションの中で、より重要な位置を占められるかがポイントで、例えば、毎日PC を開いてダッシュボード見に行くプロダクトという存在になるか、月に1 回程度たまに見にいくものになるのかでは重要度が全然違います。現時点ではあくまで仮説でしかないですが、Asobica はそういった毎日必要になるプロダクトとして企業のOS になれる可能性があると感じます。

Asobicaへの期待

ー今後のAsobicaに対する期待はどのようなものでしょうか?

村田:とにかく期待しかないですね。それは売上が伸びるとか、そういう短絡的な期待ではなくて、もちろん期待していますが(笑)、Asobica が入ることでコミュニティ運営が変わるというレベルではなくて、顧客企業の事業運営そのものが変わる存在になってくれることを期待しています。顧客を知り、顧客を差配するということはめちゃくちゃ可能性のある場所なので、コミュニティマネジメントを超えて、企業経営そのものにインパクトを与えるポジションまでいってほしいなと思っています。

Asobica のcoorum がいるポジションは顧客のデータが取得できるので、顧客獲得にも活用できるし、プロダクトにも使える、さらには、部門横断の新しいプロジェクトなどにもつながる。Asobica の立ち位置の軸を決めながらも、このような統合的な価値を発揮して、お客さんに頼られる存在になってくれることを期待しています。

ー最後にAsobicaは社会のどんなことを変えてくれるでしょうか?

村田:DtoC が伸びていることに表れているように、これまでの安さだけではなくなり、消費の意味が変わってきていますよ。つまり、企業にとっての競争のルールが変わってきていると感じます。これまでのビジネスのバリューチェーンでは、会計上の数値で比較し、管理するということが共通のプロトコルでした。コストがいくらでいくら売り上がってとか。この会計上のバリューチェーンが重要なことはかわらないです。ただ、競争のルールが変わってきている現状で、単に効率性やコスト追求するだけでなく、自社が誰にどう役立っているのか、提供しているプロダクトやストーリに対して解像度の高い理解があるかどうかで企業経営は一段変わると思っています。その会計上に表れない顧客との関わり、顧客の価値を見える化していくのがAsobica です。そういう意味で、Asobica は企業経営のあり方を変えると思っています。

        左からEight Roads Ventures Japan 今井様、村田様、AsobicaCEO今田

ー貴重なお話ありがとうございました!

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7月にリリースさせていただいた資金調達を皮切りに、採用活動にも力を入れております。

また、そのほかにも弊社CEO今田のインタビュー記事もリリースさせていただいておりますので、本記事をご覧になって、さらにAsobicaへ興味持っていただいた方はご覧いただけますと幸いです。


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