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対談:三菱地所×中川政七商店が、なぜ学生にセレクトショップ経営を託すのか?《後半:経営編》

学生が本気で商売を学び実践する、47都道府県地域産品セレクトショップ「アナザー・ジャパン」。2022年8月の第1期店オープンを目指し、立ち上げメンバーとなる学生インターンの募集を開始しました。前編で明らかとなったプロジェクトの背景と展望を見据え、後編では具体的なインターンの内容について、プロジェクトを共同で進めてきた三菱地所の谷沢直紀と加藤絵美、中川政七商店会長・13代中川政七が語ります。

前半の記事はこちら:https://www.wantedly.com/companies/another_japan/post_articles/366646

経営とは?の原理から学び、即実践

——アナザー・ジャパンでは店頭での接客だけでなく、お店の経営全体を任されるとのこと。具体的にはどんな仕事をするのでしょうか。

中川:

経営管理、収支管理から、仕入れや商品セレクトは実際に現地に買い付けにも行ってもらいます(下図イメージ)。POPやディスプレイをどうするかなどのお店づくり、イベントやSNS発信などのプロモーション、そして接客、販売まで。本当に店舗経営に関わる全てですね。

やることは幅広いですが、もちろん経験は不問です。中川政七商店がこれまで製造小売事業と教育事業で培ってきたノウハウを元に、研修とメンター制でサポートをしていきます。専門性やスキルの面でハードルを設けるつもりは全くないのですが、店舗経営のノウハウをゼロから学んでもらうので、主体的に学ぼうというマインドが大切になってくると思います。

——研修ではどんなことを学ぶのでしょうか。

仕入・調達など店舗立ち上げや、プロモーション・接客販売などの実践的なカリキュラムの他に、「そもそも経営とは?」というような、原理原則をしっかり学んでもらうことを大事にしています。

経営と言うと難しそうに思えるかもしれませんが、仕組みはとてもシンプルです。基本の要素は売り上げと、原価と、販管費だけ。知ってしまえば誰でもわかるはずなのに、ともすると学ぶ時には、そういう原理原則をすっ飛ばしてしまいがちです。学校の教育も同じで、算数が何の役に立つかを学ばずに、いきなり計算を教わりますよね。これではなかなか興味が持てません。アナザー・ジャパンの研修ではまず、経営って何のために役立つのか、そういう原理のところからお伝えします。このインターンの間だけ役に立つ知識ではなく、社会に出た時にも仕事の基礎体力になるような研修にしていくつもりです。


求む、「フロンティア・スピリット」と「郷土愛」

——募集要項には学生さんに期待することとして「フロンティアスピリット(開拓者精神)」と「郷土愛」と書かれていますね。

中川:

郷土愛は言い換えると「地元の魅力を発見し、発信する」マインドですね。インターンが始まったら、学生さんには自ら地元企業に足を運んで、地域の魅力的な商品をセレクトしてもらいます。企業リサーチや、訪問の交渉、何を買い付けるかも自分たち次第です。その魅力を伝えるための販売やプロモーションまでも一貫して手がけてもらいます。商品を選ぶ時にも店頭でその商品をお客さんに紹介する時にも、ぜひこの郷土愛を発揮してもらいたいです。

谷沢:

研修を終えたら、基本的に店舗に社員はいないんです。メンターはあくまでも困ったときの相談窓口。1期生は全国を6エリアに分けて各3名を募集するので、合計18名で任期の1年間、自分たちでお店を運営していきます。2ヶ月毎に回ってくるエリア別の企画展では、各エリアの3名が主体になって収支管理、店舗づくり、プロモーション、接客まで、自ら考えて実践してもらいます。ここで必要になるのが、「自分の人生を自分で切り開く」フロンティア・スピリットです。

中川:

頼れる大人がいない、という状況は心細いようですが、こういう「自分でなんとかするしかない」という状況って、地方から東京に出てきたみなさんならすでに経験されていると思うんですよね。家族のもとを離れて、単身知らない街で部屋を借りて、多くの人は授業やアルバイトをやりくりしながら、初めての一人暮らしを頑張っています。

この感じがまさに、かつて未知の土地を切り拓いていった、移民たちのフロンティア・スピリットに重なるなと思いました。彼らは自分たちの出身地の文化も持ち込みながら、新しい土地で新たな文化を生み出して行った。その典型がチャイナタウンやリトルイタリーです。

学生のみなさんには、この「リトル◯◯」を自分たちでつくるんだという気概を持ってお店の経営に挑んで欲しい。その思いを込めて、各エリア名も「リトルホッカイドウ・トウホク」という風に名付けました。


加藤:

このネーミングは中川さんがとても大事にされていましたよね。

中川:

そうですね。気に入っています (笑) 。フロンティアスピリットと郷土愛に溢れる「リトル◯◯」が集結した時、「私たちがつくる、もうひとつの日本」が立ち上がる。アナザー・ジャパンという店名とコンセプトには、そんな意味を込めています。


——任期は基本1年とのこと。毎年新たな「リトル◯◯」が積み重なっていくのですね。

加藤:

OB・OGが毎年増えていくのもいい仕組みだなと思っています。時々卒業生がお店を覗きにきたり、アドバイスをしてくれるかもしれません。共に地域を盛り上げる同志を同期にも、先輩後輩にも得られることは、みなさんの大きな財産になるんじゃないかなと思っています。

谷沢:

こうした社会とのつながりや、志を同じくする仲間というのは大切ですよね。実は私自身、大学生の時にもっと早くから社会とつながる活動ができていたらなというちょっとした悔いがあるんです (笑) 。これから日本が人口減少に向き合っていく中で、地域と都市がどうつながっていくのか。そのキーを握る存在に、アナザー・ジャパン卒業生がなっていく未来を望みますし、応募する学生さんにも、ぜひそういうビジョンを持ってもらいたいですね。

中川:

そうですね。アナザー・ジャパン卒業生が、将来何らか地域や地元に関わりを持ちながら活躍している。そういう未来が生まれた時に、このプロジェクトは本当の意味で地方創生に貢献できたと言えるんだと思います。

中でも第1期メンバーはまさに新しい境地を切り拓く開拓者。未知に臆せず向かっていく、フロンティア・スピリットと郷土愛を持つ学生さんに、ぜひチャレンジしてもらえたら嬉しいです。

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アナザー・ジャパンの将来を語る時の、3人それぞれの生き生きした表情が印象的でした。学生の時にこんなプロジェクトがあったら参加したかったなあと、今の学生さんがうらやましい気持ちです。(聞き手・尾島)

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