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VRミュージカルに欠かせないエンジニアの存在   -エンジニア視点から見たVR制作の魅力-

「客席からの鑑賞」から「舞台の中での体験」へ。

2017年初頭にβ版が公開された「リトルプリンスVR」は、VR+生のミュージカルを組み合わせた、
一度きりの特別な体験ができるものとして、各メディアから大いに注目を浴びました。

その裏側には、一見すると映像制作には関係なさそうなエンジニアの活躍がありました。
そこで、アルファコードのエンジニアである野村の仕事内容にスポットライトをあて、
お客様のインタビューと共に、計2回に分けてお届けしていきたいと思います。


「楽しいものをつくりたい」


---VRエンジニアとして今回のリトルプリンスVRに携わってますが、仕事内容と、プロジェクトを通した感想を教えてください。

エンジニアとして、360度動画とフルCGを合成するプログラムをUnityで作っています。例えば、画面端から飛んでいった飛行機がフェードアウトして真っ暗な画面になった後、次の動画が始まるシステムなどですね。

一番苦労したシステムは、VR空間の中でお客さん同士が手を振り合って、星を降らせるシーンでのプログラムです。お客さんには、半円状の舞台にUの字に並んで座ってもらっているので、1番目に座っている人は、当然一番端に表示されるわけです。でも360度動画の中では、全員が真ん中に座っているように表示させています。お互いが座った時と同じ距離間でやりとりができるよう、プログラムを組んで表示させています。

普通に表示してしまうと、皆、実際に座っている場所と同じところに出てしまうので、VR動画で見た時に、端にいる人は歪んでしまいます。この動画は、半円状の舞台を真ん中から見た時に、どの方向からも正しく見えるように作られています。その為「それぞれの人の位置に合わせてずらす」というプログラミングを、限られた時間の中で、なんとか作り上げました。

でも「現実と仮想現実の世界がクロスするのが面白い」といった感想をお客様からいただけたので、違和感なく楽しんでもらえるシーンを提供できたのかなと思っています。

あと、VR制作ってやってみると、プログラミングだけじゃないんですよ。ビジュアルの部分や音とかも大事だし。あと、空間演出も。コンテンツが始まる前に、お客さんにどういう風にVRの世界に入ってもらって、どう抜けてもらうかを考えたりだとか。そうなると、ディレクターみたいな仕事も必要になってくるんです。

---それを野村さんがやってるんですか?

そう。大変なのはわかってるんだけどプロジェクトに関わるうちに、何でもやってみたくなっちゃって。なので、本来のディレクターや周りのスタッフから仕事内容を教えてもらいつつ、機器の選定や図面を引いたり、舞台上のお客さんの配置を考えたりしました。

---プログラムだけじゃないぞ、と

はい。当然「リトルプリンスVR」の公演日は、会場でシステムの運用もしてるので、キュー出しもしてます!

---キュー出し!

VRライブのショーマチ(※1)でも同じような役割をしてますね(笑)やることが多くて覚えるのも大変ですけど、全部自分で責任を持って動けるので楽しいですよ。

(※1)ショーマチ 音楽座ミュージカルの益山武明と安中淳也によるSHOW MACHIDA GO ON! 番組のテーマは、音楽座ミュージカルのホームタウンである「東京都町田市」を徹底的に紹介し世界発信すること。アルファコードでは、VR映像のライブ配信システムを構築して企画参加しています。youtu.be/qRn7ePi6X1c

---アルファコードって何でもできるんですね

そうですね。手をあげればチャレンジできる環境なので、なんでも自分でやってみたい!って人にはすごくマッチする環境だと思います。

---野村さんって、VRがやりたくてアルファコードに来たと伺ってますが、VRも幅広いじゃないですか。
 こういうかたちのVRを目指してたんですか?

今も趣味でVRコンテンツを作り続けていますが、VRを一番最初にはじめた時は、.hack(ドットハック)(※2)だとか、ソードアート・オンライン(※3)のようなゲームを作るのが目的でした。

当時は、ゲームを作ってイベントに出るのが楽しいと思っていたんです。でも実際のところ、自分の作り上げた世界観を人に楽しんでもらうのが一番楽しいってことに気がついたんです。

その気持ちは、プログラムを作るだけじゃなくて、仕事を通して色々なことを行ってくうちに整理されてきました。それが仕事をする上でのモチベーションになってます。

(※2).hack(ドットハック)
バンダイナムコグループを中心とした企業群による、ゲームを主軸としたメディアミックスプロジェクト。シリーズを通じて主題となるのは架空のMMORPG「The World」で起きる異常現象に関わった多くのプレイヤーたちの物語

(※3)ソードアート・オンライン
バンダイナムコエンターテインメントより発売の、ゲームの世界に閉じ込められた人々の戦いを描いた近未来SFファンタジー作品

---でも大変なこともたくさんあったんじゃないですか?

・・・ありますね(笑)例えば、1シーンの映像を撮るのに撮影を10回行ったりとか。

---1シーンに10回?!

「リトルプリンスVR」では、お客さんは「観覧者」ではなく、登場人物の「飛行士」視点に立って、物語の世界を体験します。10人が半円状の舞台を囲むようにU字に座って、ミュージカルとVR映像を見るんですけど、360度カメラは置いた位置からしか撮影できないんですよ。だから、1箇所の視点映像のみだと、VRゴーグルを外した時に、他の9人はVR中の位置と現実の位置が違うので、どうしても違和感を感じちゃうんですよね。誤差をなくすために、何度も何度も繰り返し撮影をしました。

これまた1シーンの撮影が終わるたび、機材チェックをしたり、撮影した映像をPCに取り込んで映像確認をしながら進めていくので、作業時間が膨大なんですよね。

---・・・果てしない作業ですね

そうなんですよ。時間もないし、焦る焦る。だけど、終わった時のお客さんの感想だったりとか、演出的に驚かせようとしたりというところで、お客さんから思わず声が出たりすると、

思わず「ヨッシャ!」って思います。そういうのは多分、映画を撮る人や音楽を作る人と同じなんだと思いますね。だから、今おこなっている「リトルプリンスVR」を含め、仕事はとても楽しいです。すごい大変なこともいっぱいあるけど。


「生のコンテンツから得られる感動をVRで体験してもらいたい


---次はどんなことをやってみたいですか

未だに音楽座さんのミュージカルを見ると、心にくるものがあるんですよね。それが自分が作ったものには足りないように感じるので、自分としては、まだ負けているように思っています。そうならないものにしたいですね。

---何が負けてるんですかね

うーん、何が負けてんすかね。なんだろうな。すごいクリエイターっぽくてアレなんですけど、自分が作ったVRコンテンツには、熱量がまだ足りない気がする。人が演技している圧ってあるけど、VRになると足りなく感じてしまう。それが音なのか、それ以外の映像なのかっていうところはまだわからないんですけど。気配もそうだし、あとは実在感が弱いとか。映像がまだ足りてないとか。

---自分がもっと感動を引き出したいんですね

音楽座様のリトルプリンスの本公演に追いつけるよう、音声がサラウンドになったり、技術的に実際の360度の映像中に役者がいる位置から音が出せるようなシステムを、次回作に向けて開発中なんです。よりリアルに近づくとか、生のコンテンツから得られる感動を、VRでも生み出せるようになりたいですね。


「今までになかったVRを実現するために」


---誰もやったことのないものを短期間でカタチにしていけるのって凄いな、と見ていて思いました

今までなかったVRを実現するために、色々な技術的な課題をクリアしていきながら進めるのが楽しいです。課題は頭使うし、ほんと大変ですけどね。だって誰もやってないことですから!リアルに近づけていく工程を試行錯誤しながら、毎回毎回ステップアップしていけるように日々もがいてます。


以上、弊社エンジニア野村のインタビューをお届けしました。
次回はリトルプリンスVRで飛行士役を演じた、音楽座ミュージカルの俳優、広田勇二さんにお話しを伺います。

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