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【#就業規則をつくる(1)】働きやすさを創り、生産性を高める。スタートアップの醍醐味は就業規則のデザインにあり?

従業員10名以上の会社に義務付けられている、就業規則の作成。目の前のビジネスをスケールさせるために日々奔走するスタートアップにとっては、どうしても優先順位が下がってしまいがちな業務です。しかしアイリスではスタートアップらしさを失わないどころか、むしろ成長をブーストさせるような就業規則にチャレンジ。着手から半年という作成期間を経て2019年11月ようやくリリースに漕ぎつけました。そんな就業規則ができるまでのエピソードをコーポレート本部の山崎晃子(画像左)とAZX社会保険労務士事務所(以下、「AZX」)の小室理恵子さん(以下、敬称略)の対談を通じて全3回で紹介します。

就業規則と多様性のせめぎあい

山崎:この度は小室さんの多大なるご協力のおかげで、(2019年の)11月にようやく就業規則が完成しました。ここに至るまで本当にありがとうございました。

小室:いえいえ、とんでもございません。AZXのお客様は多くがベンチャー企業やスタートアップなのですが、アイリスさんとの取り組みではこれまでにない経験ができたと感じています。

山崎:本当にお世話になりっぱなしで…そもそも就業規則の作成届出が法律で定められていることは認識していて、早くやらなければという課題意識は持っていたんですが、後手に回ってしまっていました。

小室:なかなか優先順位が上がらないものですよね。それに規則や規程といったものはスタートアップの長所でもある自由闊達さと相容れないと思われてしまうことも多いですから。でもアイリスさんはヒアリングの時点で少し違っていました。

山崎:アイリスにジョインしてほしい人材はスペシャリストが多いんです。またドクターを中心に本業をお持ちの方もいらっしゃいます。そういった方々にどうしたらアイリスで活躍してもらえるかを常に考えています。働きにくければ離れてしまいますから、個人の事情にあわせて雇用条件などで個別最適を図っていきました。一方、人数が増えると次第にコンフリクトしてしまい…。

小室:最初にお話をうかがったときのニーズが、まさにそれでしたよね。多様性というキーワードが頻発していました。短時間勤務の方もたくさんいらっしゃいますし。

山崎:就業規則と多様性のせめぎあいですね。規則を作っている過程でも人が増えていき、どこを起点にして作ればいいのか、あるいはどこをデッドにしたらいいのか見極めが難しかったです。

小室: 就業規則は会社全体のルールで、雇用契約はさらに個人と会社の契約になるんですが、そこに齟齬があると契約として成り立ちませんからね。上位概念である就業規則の作成が重要であるという意味がまさにそこにあるんですよね。

雛形で見える化されたことがトリガーに

山崎:このプロジェクトが本格的に動きはじめたきっかけは、なんといっても小室さんからいただいたドラフトですね。シンプルなものをベースに、弊社に適した形にカスタマイズしていければと思ってお願いしたんです。そうしたらかなりいい感じのドラフトが届きました。

小室:AZXで用意している最新の法律を反映させた就業規則に、初回の打合せでうかがっていた現状からAZXの就業規則の記載と合わない部分を変更し、また気になるポイントを抜き出してコメントつけて、お送りしました。

山崎:あれを代表の沖山と見た瞬間がこのプロジェクトの本当のスタートといっても言い過ぎじゃないくらいです。「ここどうしますか?」みたいなナビゲーション付きで、かゆいところに手が届くドラフトでしたから。一気にモチベートされたというか、よしやろう!と決心がつきました

小室:スタートアップってどの会社もある程度の柔軟性が求められるんですけど、アイリスさんは一般的な水準を超えた社員目線といいますか(笑)。普通、就業規則って会社を護るという目線でつくる場合が多いのですが、御社の場合は会社を護るのはもちろんだけど、それ以上に社員のために作る、という意思を強く感じましたね。

山崎:それはもう、沖山が常日頃から徹底している点ですので。

小室:その考え方がみなさんにも浸透されていますよね。社員が働きやすいことをまず第一に考えるスタンス。方向性がブレていない。たとえば私が会社目線からフォローをしても「代表はそういう考え方をしない」という回答で、ああ山崎さんも目指している方向が同じなんだ、と感心したものです。

山崎:その点では小室さんにかなりご苦労をかけてしまったと思います。

小室:いえいえ、苦労ではないのですが、社員が働きやすいことと法律を両立させるというか、法のギリギリのところを攻めるというか。法律は変えられないので、アイリスさんがやりたいことに法をどう合致させるか、ということはかなり考えましたね。

山崎:そこがまさに、いちばん助かったところです。どうしても社内には法律についての知見がないので、一体どこまでやっていいものなのか全くわからない。小室さんは私たちがやりたいことを実現するためにどうすればいいのかを一緒に考えてくださいました。

小室:みなさんが一生懸命でしたから。残念ながら、スタートアップって就業規則プロジェクトが頓挫することが間々あるのが実情です。なかなか最後までやりきれなかったり、十分な検討を行わないまま完了としてしまったり。でも、アイリスさんはとことんまで向き合って考えていた。だからテキストのコメントがすごいことになっていましたよね。

山崎:確かに、ワードの編集履歴が双方のやりとりでびっしり埋まりましたね(笑)。

小室:ビジネスの拡大を優先せざるを得ないスタートアップでは、ここまではなかなかできない。とても熱心だったので、私もサポートのしがいがありました。

つづきます

[取材・文] 早川 博通
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