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嫌われないデザインをしてきた私が、それじゃだめだと思って転職した理由 デザイナー岩田紗季

嫌われないデザインから論理的で緻密なデザインをするために

「PARTNERS」では、A.C.O.のパートナーを紹介しています。今回登場するのは、デザイン部所属のデザイナー、岩田 紗季。岩田は、A.C.O.で働き始めて3か月。主にwebサイトやグラフィックデザイン・ロゴを制作して、A.C.O.のデザインチームのメンバーとして活躍しています。


岩田 紗季 | SAKI IWATA
武蔵野美術大学基礎デザイン学科卒業。制作会社にてランディングサイトやコーポレートサイトなどのデザインを経て現在に至る。デザイン担当。デザイン部所属。

「気がついたらアーティストの脳みそからデザイナーの脳みそになっていました」

–大学時代はどんなことを勉強していたのでしょうか?

武蔵野美術大学の基礎デザイン学科で、分野にとらわれないデザインを学んでいました。グラフィックやプロダクトではなく、何を題材に選んでどういう切り口でやるのかを決め、そこから最適なデザインアプローチを導きだす概念的なことをしていました。色彩論、形態論、タイポグラフィ、デザイン史などを学びながらいろんなアプローチを考えていたのですが、その中ですごく印象的だったのは、形態論の授業です。

形態論の授業で特に面白かったのは『手の現像を探る』という課題が出された時で、手とは何か?という観点から手の色々な姿や手のできることをクラスメイトがそれぞれ形にして展示をしました。自分の作品ではないんですが、ある女の子がマクドナルドの紙袋がぎゅっとなった作品を展示してて、それを見たときすごく人間身を感じたんです。人間って安っぽいなぁって。それと同時にどういう表現方法で表すのかではなく”何を表現するか”が大事と感じた瞬間でもありました。


–高校からデザイナー気質だったんですか?

大学に入るまではアーティスト気質で作りたいのものがあったんですが、専攻していた学科が自分が作りたいからこれ作りましたということがダメでした。何か作品を作るときにはこれをやることで誰にどう思って欲しいのかと考えるようにって、いい意味でネガティブになり自分に厳しくなりました。 やっても意味のないことがだんだんと増えてきて、気がついたらアーティストの脳みそからデザイナーの脳みそになっていました。いま振り返ってみると、デザイナーとしてはいい経験をしたなって思います。引き算的な考え方ができるようになった反面、もしかしたら私ユーザーでいいかもって。

–卒業制作はどんなことをしましたか?

「固定した色は存在しない」というテーマで、作品を制作しました。
きっかけはアルバイト先の先輩が何気なく言った「俺、色弱だから色のことわかんないんだよね!」という言葉。私はその言葉を聞いた時、「色弱って何?色わからないってどういうことだろう?」と、びっくりしてしまいました。彼は健康で、一緒に仕事をしていて全く違和感を感じたこともなかったから尚更です。

「色を扱う仕事につくデザイナーが何にも知らなくていいのか?」そんな思いが強くなり、卒業制作を通して色に真剣に向き合ってみたいと思いました。その時の印象が強く心に残っていて卒制のテーマにしようと思いました。 色覚について調べていくうちに、色って人によって全然見え方が違うということがわかったんです。自分が見えてる色は自分にしか見えない、同じ色を色弱の人が見たらこんな感じの色かな、と想像して色弱の人の色覚ってこんなに綺麗なんだよというのを伝える本や色のコンポジションを制作しました。


「喋らない方が効率がいいっていうのが脳内にインプットされているので……」

–今までにどんな経歴、キャリアを歩んできましたか?

大学を卒業後は、デザイン会社に就職しました。その会社にした理由は、人で選んだのもあるんですが、デザインは分けられないし紙もWebも色々あっていいという考え方の会社だったので素敵だなって思って入社しました。 もともとグラフィックがやりたくて会社に入ったのですが、(飲み会の席で上司にアピールしたけど)人数的な兼ね合いでWeb担当になりました。けど、今思うと私にはWebがあってるかなって思います。機能に制限された中でデザインをしていく機能美的なことがすごく好きです。Webのデザインは初めてだったんですが、個人のオリジナルを求めていた会社だったのと案件の数が多かったので、たくさんのデザインを制作させてもらったおかげでいろんなアイデアの引き出しなどが増えました。

–前職とA.C.O.とで変わったことは何ですか?

大きく二つあって、一つ目はコミュニケーションの多さ。前職では、スピード重視だったのでほぼほぼ一人でデザインを制作していました。人とコミュニケーション取るときは、オリエンの時とフロントエンドエンジニアの方と話すくらいだったので、A.C.O.でのコミュニケーションの大切さをヒシヒシと感じています。

A.C.O.は組織として方向性が明確にある会社なので、組織内での連携や同じ方向を目指すためのコミュニケーションが私には必要だな、と意識して話すようにはしていますが、まだまだ言葉が足りてないことを実感しています。喋らない方が効率がいいっていうのが脳内にインプットされているので…。これからもっとコミュニケーションをとって改善していきたいです。

二つ目は、デザインの考え方の違い。少し前に触れたことなんですが、前の会社で求められていたのは個人のオリジナル性でした。とりあえずやってみた、と言うと聞こえが方悪いのですが、その時のメンバーでやったらこういうものができましたということで良かったんです。でもだからこそいいものができる時はできるし、できない時もある。(ほんと、いろんな要因がありますよね。)

A.C.O.だと一つ一つのデザインを大切にしてるように感じます。デザインの制作に入る前に、今ある情報を丁寧にいろんな側面から考え、そこから生み出したものを理論的に構築してからチームで緻密なデザインを作り上げていく。そうしてやっとデザインが出来上がった時の達成感がすごいです。

「嫌われない絵を作るのがうまいね」


–A.C.O.で働く中で、どんな時に嬉しいですか?

前職では、案件数を詰め込みすぎていたので、アウトプットが前回と同じだったり一人前扱いされていて成長できなって感じていました。またそれが課題だと感じていたので、ずっと知見のある人の元で働きたかったんです。だから沖山さんに教えてもらえるのが一番嬉しいです。A.C.O.の人たちは、みんな意見を言うのでいろんな角度の情報やアドバイスがもらえて、デザインを作るのが今まで以上に楽しいです。

あと、デザイナーとしての業務の幅の広さが新鮮です。KeynoteやAfterEffectの使い方を教えてもらったり、手書きのワイヤーフレーム(構成)を褒めてもらえたり、実装の指示書を作成してコーダーさんから上がってきたものをみるといい感じに上がってきた時とか新鮮ですごく嬉しいです。

–ちらっと面接時の話とか面白いかもって聞いているんですが面接時の話聞いてもいいですか?

面接の担当してくれたのが、デザインチーム(ジェームズさん、沖山さん、増田さん)と満尾さんが面接官をしてくれました。ポートフォリオを見せているとアートディレクターの沖山さんに「嫌われない絵を作るのがうまいね」って言われたんです。その「嫌われない絵」という言葉が、この2年間の私のポートフォリオには良くも悪くもぴったりの言葉で…。技術や直感ばかりで作ってきたことがばれた!と思いました。

私の性格上、自分が納得できないと人に従う気にならない頑固なところがあるのですが、その時は本当にシンプルに、沖山さんのもとで働いてみたいと思えました。内定をもらえて嬉しい反面びっくりしたんですが、特に返答期限がなかったんです。返答期限がないとか今までなかったし、それが今ままでの苦労を認めてもらえた感じがしてすごく嬉しかったです。

–なぜ、A.C.O.に転職しようと思ったんですか?

他にも何社か受かっていて迷っていたんですが、決めた理由が大きく二つあります。一つ目は、自分の将来像を考えたんです。そこから考えて絞り込むよりも、もっと視野を広げた方がいいなと思いました。そこで海外にアンテナを張っている人たちと働いた方が今後の自分のためになるな、と。二つ目は、グローバルな文化があって歴史がある会社と感じました。だからこそ、Web案件の依頼をただ受けるだけの関係ではなくて、クライアントとしっかりとしたパートナーの関係を築けているんだなって。そこがすごくいいなって思いました。


「自分の価値は日本人であること」

–最後に興味があること・勉強していきたいことは何ですか?

日本のこと(仏教や禅とか)です。デザインする上で大事な要素だと思っていて、自分の価値は日本人であることかな、と思っているので。文化を含め、日本のことをもっと深く理解することで、よりデザインにも深みが出てくると信じています。。ほんとは、どこか出身が地方であれば若い頃から何かしらの文化に触れられていたと思うのですが、東京出身なんで…… 自分だからできることや自分の価値が大事だと思うから、これから自分と向き合って考えていかないといけないと感じています。


WRITER

辻之内 孝信

TAKANOBU TSUJINOUCHI
DESIGNER

桃山学院大学経営学部経営学科卒業。デジタルハリウッド卒業。東京デザインプレックス研究所卒業。元パティシエ、料理人。その後webに転向し、web制作会社とCyberZでデザイン業務を経て、現在に至る。デザイン担当。デザイン部所属。

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