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プロダクト未完成のSaaSスタートアップが150万円を投じて展示会に出展した理由

昨年の2018/10/3(水)〜10/5(金)リードエグジビションジャパン主催の「設計・製造ソリューション展」が開催されました。製造業向けの展示会としては国内最大級で、来場者は約4万名にも登ります。こちらの展示会に私たちA1A株式会社も出展してきました。

実は出展当時、まだ私たちのプロダクトは未完成の状態でした(現在も開発中です)。これは、一見すると「PMF(Product Market Fit)完了までは営業・マーケティングに投資すべきでない」というリーンスタートアップのセオリーに背いているようにも見えます。なぜ展示会出展を決断したのか、出展の結果どのような成果を得られたのか、このあたりの経緯を今回は記載していきます。

展示会の出展経緯

A1A株式会社について

A1A株式会社は製造業の購買担当者向けのVertical(業界特化型)SaaS、「RFQクラウド」を開発しているスタートアップです。詳しいご紹介はここでは避けますが、製造業という超巨大産業のトランザクションを最適化すべく、2018年6月末に創業致しました。シードラウンドでは5,300万円を調達し、現在フルタイム6名、パートタイム2名の体制で開発に取り組んでいます。

プロダクト開発状況(2018年8月末頃)

展示会への出展を決めたのは2018年8月末頃でした。私たちは、この頃までにすでに数十名の購買担当者の方々へのヒアリングを終えており、PSF(Problem Solution Fit)をほぼ完了した手応えを得ていました。日々課題の深掘りと解決方法の壁打ちを繰り返す中で、私たちがどのような価値提供をすべきかが明確になり、プロダクトのコア機能も決定している状態でした。

必要最小限の機能は何か?

しかし、当然ながら、コア機能だけではプロダクトとして成立しません。顧客の業務オペレーションを想定し、その業務を成立させるために必要な機能を備える必要があります。リーンスタートアップ(必要最小限の機能を備えたプロダクトを素早く顧客に提供し、仮説検証を繰り返すことで成功率を高める手法)にのっとるならば、顧客の業務オペレーションを想定し、要求を機能として開発すべきものと、運用でカバーすべきものに切り分け、必要最小限の機能は何かを定義する必要がありました。つまり私たちにとってのMVP(Minimum Viable Product)とは何か?という問題です。

困難な業務オペレーションの想定

この顧客の業務オペレーションの想定が非常に困難でした。その要因として、まずステークホルダーの多さが挙げられます。購買の業務は、購買担当者だけで完結するものではありません。取引先であるサプライヤをはじめ、製品開発部門、生産ライン、経理部門などが関与する上、システム導入時には情報システム部門の意向も考慮する必要があります。

また、購買の業務で取り扱う情報に機密事項を多く含むことが、業務オペレーションの想定をより一層困難にしていました。担当者レベルで試用してもらうことが難しかったのです。C向けのプロダクトの場合は、webで集客したテスターなどにMVPを提供し、反応を見て仮説検証を繰り返すという手法がよく用いられます。しかし、私たちのようなB向けのプロダクトではそうもいきません。特に購買業務で取り扱う見積情報や図面、仕様書などの情報は重大な機密事項ですので、「試しにこのシステムを使ってサプライヤと取引してみて下さい」とは言えなかったのです。検証を進めるには、顧客企業内での承認プロセスを経て、正式に企業間で契約を取り交わす必要がありました。

開発には、まず営業が必要だった

ヒアリングベースでの要件定義に限界を感じていた私たちは、「プロダクトが未完成なのを承知の上で、私たちのビジョンに共感し、導入を前提として一緒にプロダクトの要件定義を進めてくれる顧客」が必要だと考えました。つまり、MVPを開発するためには、まず営業すべきだと結論づけたのです。そのためには、システム導入の権限を持っている役職者や、システム導入を検討している担当者に接触できる新たなチャネルが必要でした。様々な販売チャネルを模索する中で、ちょうど1ヶ月後に展示会があることを知り、出展の決断に至ったのです。

展示会への出展

展示会への出展準備は、急ピッチで行われました。準備期間も十分でなく(通常は準備に2-3ヶ月程度かけるそうです)、低予算で装飾も手作り、コマ面積は最小で、場所は会場の端でした。必ずしもベストな条件とは言えませんでしたが、予想に反して大きな反応を得ることができました。一時はブース周辺に人だかりができ、説明するスタッフの手が回らなくなったほどです。余分に用意したつもりのパンフレット1,000部は、イベント終了を待たずに配り切っていました。

結果として、展示会の出展を通じて、自分たちの仮説により確信を深めるに至りました。「そうそう、これ大変なんだよね」「すごい時間がかかっちゃってて」「もっとしっかり管理したいと思っていたんだよ」といった反応を多く頂きました。また、私たちのRFQクラウドと同様のソリューションを提供しているシステムがまだ他に存在していないことも好感触の要因だったようです。ある大手重工メーカーの役職者の方には「これは私が長年考えていた理想のシステムだよ!」とまで言って頂きました。

表題の通り、展示会出展には約150万円ほどのコストがかかりました。これは私たちのようなスタートアップにとっては決して安くない金額でしたが、その後の導入にも繋がり、結果的には投資対効果の高い施策になりました。

初導入と初稼働

展示会出展後、たくさんのお引き合いを頂きました。クライアント様のご協力を得ながら開発は進み、2018年11月末に初導入と初稼働を迎えました。私たちスタートアップが、初めて社会に価値を提供し、貢献することができた瞬間になりました。

現在では、RFQクラウドは数社に導入され、稼働しています。プロダクトを運用し、クライアント様からのご意見を頂き、仮説検証を進めていく中で、私たちのプロダクトがどうあるべきか、これから何をすべきかが、徐々に明らかになってきました。オフィスのホワイトボードにはこれから開発していく機能候補でいっぱいになっています。

現在の開発状況(2019年1月)

そして現在、これまでの仮説検証をα版と位置づけ、そこから得た学びをもとに、β版と、その後に控える製品リリースに向けて開発に取り組んでいます。製造業という超巨大産業の中で、まだ世の中にない価値を作り出し、その価値を社会に問う、その面白さと難しさを日々感じながら、チームでビジョンの実現に向かっているところです。

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そんな中、クライアント様によりよいプロダクトを届けるために、そしてビジョンを実現するために、まだまだ多くの仲間を必要としています。少しでもご興味を持って頂けた方、まずはカジュアルにお話しましょう!

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