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なにをやっているのか

まち全体が学びの場。フィールドワークに出るのが当たり前。
生徒が地域に出て取り組む農園。野菜やお茶を育てる。
私たちは、島根県の小さな街・津和野町で、最先端の教育環境をデザインし、「まち全体が学びの場になる未来」に向けた仕事をしています。この仕事は、津和野町だけの教育における課題を解決するだけではなく、日本の学校現場や地域が共通して抱えているような様々な課題の解決へとつながっています。   この仕事に関わっている人も多種多彩です。   マダガスカルなど発展途上国で青年海外協力隊をしていた人、政治学の研究者を目指していた人、アメリカに留学し課題解決型学習のプログラムを作っていた人、雑誌の編集をしていた人……   違った人生や背景を持つ人が「まち全体が学びの場になる未来」に向けて仲間として集いました。そのバックグラウンドを活かしつつ、地域の資源を活用しながら、様々な取り組みを進めてきました。   こうした取り組みは、当初は高校を出発点にしていましたが、今では小学校や中学校、さらには保育園・幼稚園にまで広がりつつあります。

なぜやるのか

この街から教育の最先端を作り上げる。
生徒がこの5年間で50名以上増加。
津和野町は、島根県西部に位置する、人口約7600人の小さな街です。清流高津川に恵まれ、自然豊かな景色を持っています。江戸時代には、津和野藩が教育に大きな力を入れ、藩校「養老館」を設立。明治の文豪・森鷗外や「哲学」という言葉の生みの親・西周など多くの人材を輩出しました。   その町唯一の高校・島根県立津和野高校(http://tsuwano.ed.jp/)は、急激な人口減少に伴う生徒数の減少などにより、学級減が続き、統廃合の危機にありました。高校が町から消えてしまうと、中学校までしか町の中で人づくりを行うことができず魅力が失われてしまいます。また、移住やUターンを促すことも困難になってしまいます。高校が消えてしまうことは、町にとっても大きな危機でした。   しかし、5年前から町をあげて、高校の存続と津和野町全体を学びにするというミッションを掲げ、地域や社会と学校をつなぎ新しい価値を作る「魅力化コーディネーター」を配置しました。   活動を通じ、学校が少しずつ開かれ、多様な大人や社会課題に出会う機会が生まれ、多様な学びの場ができてきています。   その結果として、地元だけでなく、首都圏からも志願者が増え、生徒数が回復してきています。私たちが実現を目指す地域の新しい教育環境が整いつつあります。これをさらに進化させ、過疎化が進む小さな街だからこそできる取り組みを次々に打ち出しています。

どうやっているのか

「ナナメの関係」で関わるコーディネーター。
高校の中にある建物で放課後に学習支援を行う講師や運営スタッフ。
私たちは、「学校の先生」という立場ではない形で学校に入り込んで、魅力を引き出したり高めたりしています。生徒には、保護者や先生といった縦の関係ではない、ナナメの関係の大人として関わりを持っています。   「先生」でない大人が学校に席を持ち、一緒に仕事をするというのは、これまでにない新しい働き方です。また、高校の中にある建物に塾が入っていて、そこで放課後に学習支援が行われているのも日本でもまだ例の少ないことではないでしょうか。   これまでそうした新しい働き方や関わり方を実践しながら、さまざまな実践を重ねてきました。   町長も含めた津和野町のリーダーから依頼を受けたプロジェクトに取り組んだり、自分の「やりたいこと」や「なりたいこと」をとことん考えて地域のオトナに話しながらマインドマップにまとめたりする、津和野高校の『総合的な学習の時間』。   地域に高校生が出て行って、農園づくりをしたり祭りに出たりといった経験をし、自分の問題意識に合わせた取り組みを進める、体育会系と文化系とは違う新しいカテゴリーの部活動『グローカル・ラボ』。   「学ぶ楽しさ」と「何かができるようになった喜び」を実感してもらうために、中高生対象に英語や学習計画の授業などを実施する、町営英語塾『HAN-KOH』。   魅力化コーディネーター、講師、運営スタッフ、それぞれ肩書きは異なり、仕事も少しずつ違いますが、私たちは、次の時代に必要とされる教育環境の実現に向かって挑戦を続けています。   新しい挑戦の一つとして、小学校や中学校、高校の校種の壁を超えた連携を行い、社会とつながった学校づくりを進めている人もいます。このように、高校の存続というミッションから始まった「魅力化コーディネーター」の仕事は、生まれてからの18年間を一貫して立場を超えて関わり続けようという「町全体の教育計画」作りにまで広がってきています。来年度には、常駐のコーディネーターが小学校、中学校、さらには保育園・幼稚園に関わっていきます。