「サービスデザイン」を提供するフォーデジットのデザイナーは業務の内容も多様になっています。フォーデジットのデザイナーは実際どんな仕事をしているのか?
今回インタビューしたのは、2023年にMVPに輝いた石橋さん。デザイナーとして活躍する彼女に、日々の仕事について話を聞きました。
石橋 春子(Haruko Ishibashi)
美術大学、大学院で日本画を学んだ後、Web業界で代理店と広告系のWebサイト、コーポレートサイト・採用サイトなどを担当。2021年にフォーデジットへ入社し、2023年上半期にはMVPを受賞。
──これまでの経歴を教えてください。
通っていた美術大学に出ていたアルバイト募集がきっかけで約1年働き、大学院を卒業後、そのまま正社員として入社しました。アルバイト時代にはデザイン会社以外にもいろいろな業種の仕事をしましたが、その中でも仕事内容が魅力的に感じたので前職を就職先に選びました。
──その後、フォーデジットに入社を決めたきっかけは何ですか?
前職では座組上仕方のないことですが、要件がブレイクダウンされた状態で依頼されることが多く、デザイン作業をすることが日々のタスクでしたが、今後の成長を考えた時にもう少し上流から関われる会社を探しました。
いろいろな会社を調べましたが、デザイン系の会社だと広告やプロモーションの仕事が目立つ中、フォーデジットの事例は堅実なプロダクトだったりサービスが多かったことも理由のひとつです。入りたい気持ちが強く、エージェントを介さずにFacebookのメッセンジャーから「採用やってますか?」とメッセージを送って応募してしまいました。
──入社後、ギャップはありましたか?
印象が変わりましたね。マイナスのギャップは無く、すべてプラスのギャップです。こんなことまでやらせてもらえるんだ、とかクライアントとの密なコミュニケーションとか。作り物も前職まではWebサイト制作が大半でしたが、今はアプリケーションやガッツリサービスに。スマートシティプロジェクトや、多くの人が使うスマホ決済サービスのアプリだったり、公共性が高いプロジェクトに関わることも。
あと、制作のスパンが長いプロジェクトが多くなりました。プロジェクトの規模とイコールな部分はあると思いますが、フォーデジットは制作より前のフェーズもしっかり取り組んでいるから、トータルでは長い期間プロジェクトに携わることになります。
──石橋さんのプロジェクトでの役割を教えてください。
初期の構築フェーズでは、私よりも上位レイヤーのメンバーがフロントでコミュニケーションを取る機会が多く、私はそれにまつわるデザインワークが多いです。ですが、プロダクトがローンチされた後の運用・改善フェーズでは私がフロントに立ち、デザインワーク含めクライアントの担当者とコミュニケーションを取りながら進めています。
重要な意思決定に際してはもちろん先方上位レイヤーの方とのコミュニケーションが必須ですが、その場に私も同席させていただけるのはフォーデジットのオープンな文化だからだと感じます。ただし、そこで会話するには自分の専門領域の話だけではなくいろんな観点で議論がなされるので、日々のキャッチアップは欠かせません。
今はプロジェクトによっては私が初期提案のデザインからさせていただけることも増えています。
──デザインの工程を具体的に教えてください。
フォーデジットのデザイナーは、インタビューやアンケートなどリサーチのフェーズに設問設計からプロジェクトメンバーと一緒に活動します。根幹となる体験についての調査以外に、デザインフェーズで必要になるキーワードや、嗜好性の調査、具体的なビジュアルを作っての印象調査もするので、そこに必要なマテリアルを用意します。また、自身もユーザーとして触ったり、現地に行って体験してみたり、肌感覚で体験することも大事にしています。
ここまでの工程のアウトプットをもとに、情緒・機能の両面を加味してコンセプトやトーンアンドマナーなどを検討します。プロジェクトや、フェーズによって検討の幅や提案に必要なマテリアルは異なるので都度考えます。デザイナーの主観・感覚・経験だけを拠り所にするのではなく、リサーチ結果も併せて検討することで、情緒と機能、世界観と確からしさが両立する方向性を目指します。
とあるプロジェクトのアプリの着せ替え機能において、私は若年層向けのカジュアルなUIデザインを担当しました。対象ユーザーの嗜好性や受容性を理解するため、アンケートツールを利用して幅広い年齢層のユーザーに調査を行いました。十数種類のイラストのトーンや絵柄を並べ、若年層がどのようなテイストを好むのかを調査し、その傾向値を参考にして画面デザインを作成しています。
方向性が定まり制作が進む中で、アクセシビリティやユーザビリティなどのお約束やヒューマンインターフェイスガイドライン、マテリアルデザインなど世の中的に認知されているガイドラインなどを念頭に置きつつ、情緒な世界観が蔑ろにならないように、コンセプトやトーンアンドマナーに一貫性のあるデザインを目指して作成します。
──デザインをする上でさまざまな制作ツールを使用すると思いますが、使い方はどのように覚えましたか?
IllustoratorやPhotoshopなどいわゆる制作ツールは使えましたが、入社したとき(2021年)はXDとはなんぞや?というところから始まってます。初めて触れるツールに関しては、私の場合「ひたすら手を動かして覚える」のが一番早いと感じています。触って、それでもわからなかったら調べるっていうやり方ですね。私の性格的に教えてもらうのはフィットしなくて、手を動かすのが一番わかるんです。他の人から見たら効率は悪いかもしれないけれど...。うまいことインプットできる人は聞いたり、教えてもらったり、本を読んだりすれば理解できるかもしれないけど、私はそういうので理解するのが難しい。もちろん困ったら最終的には社内メンバーに相談しますが、土台は自分で体得するべきだと思ってます。
現在(2024年)はFigmaを使うことが増えています。時代の流れでツールの変化に対するアジャストは多少手間がかかることはありますが、必要なことなので適宜対応しています。
──デザインフェーズが終わり実装フェーズへ。石橋さんはどう関わっていますか?
実装観点で予期していなかったデザインの調整が必要な場合があります。そこでは表現の品質は落とさずに、技術との整合性をとるためにトライアンドエラーを繰り返しながら着地点を見つけられるようにコミュニケーションを欠かさないよう気をつけています。他にも、トランジション・アニメーション・マイクロインタラクションなど細かいところにもこだわりを持って全体の品質を高めていきます。
とはいえQCDのバランスも意識しなければならないので、一概にがむしゃらに突き詰めればいいというものではなく、適切なタイミングでアップデートする計画を立てる必要もあります。いちデザイナーとしては「神は細部に宿る」といった気概で取り組みつつ、その時のさまざまな状況を考慮しバランスをとるように努めています。
また、ローンチ後の改善フェーズではクイックにユーザーの声やニーズを取り入れ、継続的な改善を進めていくために、クライアントや実装チームとコラボレーションしながらアジャイル形式で開発を進め、定期的にアップデートを行っています。
今まで経験のなかった領域に挑戦できる
──仕事を通じて成長したなと思うところはありますか?
今まで経験のない領域に挑戦させていただいていることで広がりは感じますし、それに合わせて成長も感じています。テクニカルなスキルだとリサーチや撮影などデザイン作業以外の経験を詰めていますし、ビジネスパーソンとして仕事に対しての向き合い方は自分より視座の高いメンバーの振る舞いを見て自分もこうならなければなと日々奮闘中です。
──どんなことに喜びを感じますか?
0→1で何かを生み出すことも嬉しいですが、信頼関係を継続できた瞬間も嬉しいです。今の私の能力的に、毎回0→1の案件だけでなく、クライアントと関係性を築いてきたもののバトンをもらうことも多いです。
とあるナショナルクライアントの年次コンテンツ案件では、自分が担当することになり凄いプレッシャーでした。ちゃんと期待に応えられるか不安な中、私自身もチームも全力で頑張って制作を進めました。ローンチした際にクライアントから「今年も良くやってくれてありがとうございます」「デザイン好きです」とクライアントに満足いただけたのが恐縮ながら嬉しかったです。
──逆に凹んだことは?
みなさん同じだと思いますが、生みの苦しみでしょうか。アウトプットし続ける中で、光る何かを探す感覚。もちろん周りの人の意見から道が開けることもあるので、ひとりで閉じこもるということはないのですが...。いくらでも時間をかければいいということではありませんが、一定時間をかけないといけないとも思っています。
クライアントの目的を達成するひとつの指標が「信頼」
──今後の目標はありますか?
先輩デザイナーとしてもそうですが、クライアントに信頼してもらえるような人になりたいです。私は個人で絵を描いているんですけど、自分の中でデザインとアートの線引きがあって。デザインは目的があって人に届けるもので、自分が良いと思うだけではだめだと思うんです。となると、ユーザーはもちろん、クライアントと作り上げるものであり、クライアントの目的を達成する一つの指標として「信頼」があると思っています。なので信頼してもらえる人になりたいです。
あと、私が営業活動をして仕事を持ってきているわけではないので、誰かが必死に繋いでくれた信頼を絶対途絶えさせたくないし、そこはやろうよっていう強い責任感はあります。
──石橋さんがそこまで頑張れる理由を教えてください。
私より頑張ってる人って世の中にいっぱいいるし、オリンピック選手に比べたら多分頑張れてない。終わったあとで自分に対して「もっと頑張れたよね」と思うのが嫌で、学生の時からその場で全力を出さないと成長できない気がしてます。成長速度が遅くなるのが怖くて。昔から「全力でやったの?」って自分に問うた時に「全力でやった」っていえないと、成長し続けられないと思っています。
サービスやプロダクトを通じてクライアントやユーザーに喜んでほしいですし、仕事をするうえで、社内外含めたくさんの人が関わっていると思うと、そういう人たちにしっかり仕事で恩を返したい気持ちが強いです。
──ありがとうございました。