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本当に求められているものを奥底から掘り出して、かたちに──UX Designer 新田望

ベトナム市場で、ある食品のNo.1シェアを誇るメーカーA社は、ひとつの課題を抱えていた。多様化する消費者の嗜好をキャッチし、これまで蓄積したデータと掛け合わせて、商品開発の新たな基盤をつくりたい──。そこでフォーデジットは、もともとA社の基盤システムを運用・保守していたNTT DATA VIETNAMと共創しながら、分析プラットフォームの企画・設計に乗り出す。

※この記事は2019年フォーデジット採用サイトに掲載された記事の再投稿です。

新田望/UXデザイナー
2014年入社。プロモーションコンテンツ制作会社を経て、フォーデジットに参画。業種問わずさまざまな企業の課題をユーザー視点で見つけ出し、デザインとテクノロジーで解決する。必要なアウトプットの設計、スケジュール管理、品質管理などを担当。

職能の違うメンバーが全員でインプットに当たる

ベトナム市場で本当に求められる商品を生み出すための“分析プラットフォーム”設計──そのために集まったメンバーはまず、ベトナムを知ることから行動を始めた。現地観察やオンラインアンケートを活用し、現地のライフスタイルや消費行動などをリサーチ。並行して、A社が商品開発にどんな課題を抱えているのか、グループインタビューを繰り返す。

「日本とベトナムでは、そもそもデータ管理の状況がまったく違うんです。たとえばPOSデータひとつ取っても、大手のスーパーやコンビニならともかく、ベトナムに数多くあるローカルショップから正確な情報はとれない。どんな商品がどれくらい売れているかという数字がはっきりしないため、納得のいく商品開発ができていない状況でした。競合も力をつけてくるなかで、消費者が心から求めているものを知る必要が出てきたんです」

ヒアリングで課題を洗い出し、企画を練り上げていくプロセスには、メンバー全員で当たる。「シンプルに作業を分担するほうが、進行は簡単かもしれません。だけど、みんな一緒になって話を聞き、意見をすりあわせていくのが、僕らのスタイルです」と、新田は言う。時間も手間もかかる。けれど、全員が同じ目線でユーザーを理解しながら、役割を横断した視点をぶつけあうことで、アイディアはどんどん奥行きを持っていく。

実用的なシステムと緻密な成功ストーリー

日本からベトナムまでは、約8時間。プロジェクト進行中、新田は毎週ベトナムに通った。長いときは1週間もA社内に滞在して、インプットとアイディエーションに努めたという。

「まずは、消費者の正しいデータを取得するための方法づくり。たとえば売り場の棚にカメラと解析ツールを入れれば、ローカルショップの販売情報だって取得できます。だけどそのインフラを整えるのは、現実的じゃない。だったらまずは、数千人いるA社従業員の声をしっかり吸い上げる仕組みを作ろう……というふうに、ちゃんと実現できるやり方を検討していきました」

そして、ただ機能を設計するだけにはとどまらないのが、フォーデジットの強みだ。そのシステムを現地のスタッフたちが使いこなし、よい商品を生み出せるようになるためのストーリーを、念入りに描いていく。

「このプラットフォームが使われるであろう現場や現地スタッフの様子を見ながら、現実的な活用の仕組みまでを考えていくんです」。そう語る新田は、目の前のシステムだけでなく、A社の未来を見すえている。

現場にしっかりと寄り添ってクライアントの未来を描く

今回のプロジェクトは、システムのグランドデザインがゴール。実際に構築するかどうかは、いったんA社の手に委ねられる。最終プレゼンで新田たちは、販売状況やエリアカバレッジ、トレンドプッシュ機能などを盛り込んだプラットフォームの構想を提案した。

「蓄積した情報から、新商品のアウトラインを自動で提案してくれる機能もあるんです。商品開発の経験がまったくない現地スタッフでも、これがあれば根拠を持って、まず一歩を踏み出せる」と、新田は微笑む。作りっぱなしではない、本当に使えるシステムにするための工夫のひとつだ。

やはり目を引いたのは、現地スタッフと消費者のペルソナからつくられたカスタマージャーニーマップ。消費者に求められる商品をつくるために、どんな情報が必要なのか?従業員はそのデータをどのように分析して、どのように商品開発に活かせるか?その仕組みができた先には、こんな新しい世界が待っている……未来につながるストーリーは、A社のトップを唸らせた。

「A社とNTT DATA VIETNAM、フォーデジットが壁をつくらず、建設的な議論ができる関係をつくれたからこそ、現場にフィットした提案ができたと思っています。『日本ならこうだ』『ベトナムではこうするしかない』で思考をとめず、本当に必要なものを追求できました」

ユーザーを知ることが、よりよい体験をデザインする

この分析プラットフォームが実現したとき、役に立つのは、ベトナムだけに限らない。

「ローカルの情報を集めて分析に活かす仕組みは、国や業種を問わず価値があるはず。A社の食品は世界に輸出されているため、ここからの展開も期待できます。システムの向こうで、消費者一人ひとりがよりよい買い物を楽しめるようになれば、僕らもうれしい。突き詰めれば、それがUXデザイナーの使命だとも思っています」

すべての仕事は、ユーザーを知るところから始まる。他人事のように構えたままでは、いいものはつくれない。言葉としてわかってはいたけれど、国を越えたプロジェクトに関わって、新田はそれを改めて噛み締めた。

「全世界のユーザーがどんなことを考えているのか、どんなことに困っているのかを知っていけたら、本当に面白いですよね。その先で、ユーザーが心から必要としているものをつくりたいし、今、そういう仕事をしている実感があります」

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