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もう一度考えてみる「良いUXとは何か」

こんにちは。GUSHOという屋号でフリーランスのデザイナーをしているたなしょーです。この記事ではサービス・プロダクト開発をする上で、必ず会話の中に出てくる「UX」について、基本に立ち戻り、話したいと思います。

この記事の目的

「このサービスのUXが良くないので、UIから刷新したいです」とか、「UXを高めて売り上げ向上を目指したい」とかデザイナーをしていれば必ず一度は耳にする発言だと思います。この発言を聞くたびに「そもそも良いUXってなんだろうなー」と思うことが多々あるので、今回はそれをUXの語源やCX、UIとの関係性などから紐解いて言語化しようと思います。

そもそもUXってなんだっけ?

言わずもがなですが、UXとは「ユーザーエクスペリエンス(User Experience)」の略です。
ユーザーがサービスを通して何かしらの体験をし、それに対してどう感じるか、ストレスなくスムーズにタスクが完了できるか、使っていて居心地良いものになっているのかというユーザーの感覚的な価値を高めるためにデザインすることをUX設計と言われています。
そのためUXを数値化することはできなくないですが、ユーザーの利用時の気持ち的な部分が重要な領域なので、明確に「売上に繋がった!」とかマネタイズ領域のように成果が少し見えづらいものだったりもします。

UXの語源

そもそもUXって言葉はどこで、何のために生まれたのでしょうか。
UXの語源は諸説ありますが、2つ紹介します。

▼Apple社のドン・ノーマンが起源
1993年にドン・ノーマンがAppleの「ユーザーエクスペリエンス・アーキテクト」という役職に就任し、UXという言葉が広がるきっかけになったといわれています。ノーマンは、プロダクトデザインとユーザーの相互作用を総合的に考えることの重要性を強調し、その後のUXデザインの発展に大きく影響を与えたと言われています。彼は認知心理学を専門としており、心理学者、認知科学者、工学の教授でもありました。特に人間の認知プロセスとプロダクトデザインがどのように相互作用するかについての研究が有名で、それがApple製品のUX領域に多大な影響を与えたため、UXという言葉が浸透し始めました。

▼エンジニアリング領域からの起源
ソフトウェア開発やウェブエンジニアリングの初期はとにかくバグなく動くことが重要で、そこに商品価値がありました。しかし技術が広まり「ただ動くだけ」では価値がなくなったため、「使いやすさ」がないと商品価値が生まれないという発想からUXという言葉が広まったという説があります。そこからユーザビリティという言葉も同時に出てきました。
今でこそUIデザイナーやリサーチャーを経て、UXデザイナーになる人の方が多い印象ですが、エンジニア領域からUXデザイナーになる方も多かったようです。

2つの起源を簡単に紹介しましたが、UXという言葉だけではなく、CXやUIという言葉もよくUXを語る上で登場します。そもそもUX・CX・UIの違いって何なんでしょうか。


CXとUXの関係性

UXを語っていくとよく似たような言葉で「CX」という単語が出てきます。UXは「ユーザーエクスペリエンス」。
対してCXは「カスタマーエクスペリエンス」。
この二つの単語の違いと関係性を理解するとよりUXを説明しやすくなります。

簡潔にいうと、プロダクトを使う「ユーザー」のことを理解し、設計していくことをUXと呼び、プロダクトは使わないけど誰かにプレゼント・使用してもらうために購入する「カスタマー」を理解し、設計することをCXと呼びます。
もう少しわかりやすく例えるとお年寄りが使う電動ベッドのプロダクト開発をしたとします。電動ベッドを使うユーザーは「お年寄り」なので、お年寄りが使いやすく、安全な設計にUXを考える必要があります。一方で電動ベッドを購入するカスタマーは「お年寄りの子ども」が親に買ってあげる可能性が考えられます。その場合、子が親のこと、自分のことを考えて買いたくなるような設計にCXを考える必要があります。
なのでUXとCXは混合して考えられがちですが、似て非なるものなので関係性を理解した上で、使い分けることが重要です。


UIとUXの関係性

UIとUXは混合せずに理解している人は多いと思います。ただ「UIを良くすればUXは良くなるでしょ!」と勘違いしている方はかなり多いかなと感じています。確かにUIを良くすれば、プロダクトの使い心地やタスクの達成度合いは上がり、結果的にUXが向上することは多いです。しかし世の中にはあえてUIを悪くすることで、UXを向上させた例もあります。
よくUXを語る上で例に挙げられるのですが、ヒューストン空港が実施したUX改善が非常にわかりやすいです。
ヒューストン空港では「飛行機から降りた後に、荷物が出てくるのが遅すぎる!」という苦情が絶えませんでした。その課題を解決するために何をしたかというと、飛行機から降りて、荷物を受け取る場所への距離を6倍ほど長くして、お客さんを長く歩かせることにしました。
実施したことをUIに例えるとこの改善方法は完全にNGで、UIはできる限り目的まで早く辿り着かせて、労力を減らすことが良しとされるので、目的地までの距離を遠くするというアイデアは、UI的には劣化させている状態になります。ただ、改善後は苦情が0になり、お客さんのUXは向上されました。
なぜUIが劣化したのにUXが向上したかというと、お客さんは荷物場に早く着いてじっと待つより、長く歩いて、到着したらすぐに荷物が出てくる方が「早く出てきた!」という心理になるため、満足度が向上し、苦情も減ったというわけです。
このようにUIはよくUXに包括されていて、UIを良くすれば当然UXも良くなると考えがちですが、そうならないパターンもあるので、頭の片隅にヒューストン空港の例を入れておくと良いと思います。



結局良いUXとは?

UXの語源からUXを取り巻く単語の話をしてきましたが、結局良いUXにはどんなことが重要なのでしょうか。あらゆるデザイナーが良いUXに必要な要素を語っているので、多くの人の話を聞いても良いと思いますが、私は以下の5つが重要だと考えています。

  1. 機能性
  2. 操作性
  3. 単純性
  4. 信頼性
  5. 利便性

1.機能性はそもそもプロダクトを触って、押せるはずのボタンを押しても反応しなかったり、エラーがたくさん出たりするのはUXのスタートラインにも立っていないため、機能性は最重要です。

2.操作性はアプリの場合、自分の指の動きと画面の挙動があっていなかったら次第にストレスが高くなり、良い機能があっても、毎日使うには操作性が悪すぎて離れていってしまいます。

3.単純性は機能も良いし、操作も問題ないけど、一画面に情報が詰め込まれていて理解が難しいと、慣れるまで時間がかかり、慣れる前に離れていってしまう可能性があります。

4.信頼性は使いやすいし、タスクも簡単に完了できるけど、たくさん興味のない通知が届いたり、やたらとアップデートが走ったりすると、そのサービスの開発会社への不信感へと繋がり、心地よく使ってもらえなくなります。

5.利便性はサービスとしてのクオリティはすごく良くて、日々使っていきたいけど、ウィジェット利用ができず、アプリを開かないと必要な情報を取得できないなどの各ユーザーの状況に応じたカスタマイズができないとユーザーの日常に溶け込むサービスに成り得ません。

上記5つの要素を1が一番基本で最重要です。5に行けば行くほど応用的です。なのでプロダクト開発では1から順に確かめるように開発すると徐々にUXは改善されると思います。
またUXは開発メンバーだけで確かめてもあまり良い結果が生まれません。開発メンバーはどうしてもバイアスが掛かってますし、そもそもプロダクトに対してのリテラシーが高すぎるので、ターゲットとなる一般ユーザーを集めて検証することをおすすめします。人の集め方にもメリット・デメリットがあるので、後日記事にします。

最後に…

どうでしたでしょうか?
なんとなくぼやっと考えていた「UX」というものの解像度は上がりましたでしょうか?
まだまだUX領域の話は語り尽くせておらず、「じゃあ良いUXを作るためにどう検証していけば良いのか」とか「UXデザイナーのキャリア形成ってどうすれば良いの?」とかちゃんと発信できたらと思います。
そしてUXだけではなく、サービスデザイナー・インタラクションデザイナーとしても活動していますので、その領域の話もできたらと思います。

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