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フリーランサーに伝えたい、一人で戦うための自己防衛的営業術(Vol.3)

40歳で異業種から独立。まったくコネも実績もない状態から一人、コツコツ営業活動を続けてきた弊社代表・伊藤秋廣が、自身の経験を交えながら、その営業術について語ります。

――前回の記事では、インタビュアーとしての個人ブランディングを確立したという話をお聞きしました。そこからは順調に?

インタビュアーって名乗ってからは、なんとなく珍しいね、ブルーオーシャンだねって感じになりました。当時、プロ・インタビュアーって超有名な吉田豪さん含め、数人くらいしかいない。芸能人とか著名人インタビューする人みたいなイメージでしかなかったんですね。僕は著名人とか芸能人もインタビューするし、料理人やお医者さん、主に求人系プラットフォームの企業取材でビジネスマンもインタビューする。そんなスタンスのインタビュアーってあんまりいないようにネット上では見えました。

競争相手がいないから良いんだけれども、逆にインタビュアー?どう使う?みたいな。世の中は安い価格のライターが求められていたから、インタビュアーと名乗ってブルーオーシャンだからってバンバン依頼がくるわけではないのですよ。

その頃から、エンタメとか飲食とかタウンガイドなどの情報系といった媒体ライターからビジネスライターへとフィールドを移行していきました。ビジネス経験のあるインタビュアーって名乗って発信しているのだから当然のことですが、ビジネス系ってちょっとハードルが高いイメージがあったんですよね。ビジネスって聞くと、何となく社会になじめない、ドロップアウト系ライター(当時はたくさんいた)がハードルを感じる。

僕も当時は経済系の話がめちゃくちゃ得意だったかっていうとそんな事はなくて、今は経験を重ねたからそれなりに話せるけど…。サラリーマン時代は決してデキる系ビジネスマンでなく、営業成績だって良くなかった。それが、今、こうして「営業術」とか語っていて笑っちゃいますが。何が違うかというと、自分自身を売り込めるからですよ。こう言っては何ですが、会社の商材なんて本気で売れないじゃないですか。経営陣だったらそれなりに思い入れがあるかもですが、僕みたいに末端の営業マンじゃ、思いが薄い。その商材の専門家になりきれていなかったんですよ。今はそうではない。経験値を重ねてインタビューの専門家になって、自信をもって自分の技術を売り込むことができるから。

で、話しを戻して、ビジネス系ライティングに手を伸ばし始めたのは、これもグルメとかエンタメとか山ほど書き手がいるじゃないですか。真っ赤なオーシャンですよ。もう飽和している。戦いたくないんですよ。無駄な戦いが嫌い。だからコンペ案件も受けません。見積作ってプレゼンしてサンプル記事書くのってムダな時間だし、横並びにされたくない、個性を見せたいわけじゃないですか。人と違う人生が歩きたくってサラリーマン辞めたのに、数あるライターの、数あるフリーランサーの一人って見られたくない。

だからプラットフォームもどうかな?って思うのです。一緒に汗水流してくれる編プロはいいのですが、右から左のマッチングサイトとかって、結局…今回の楽●とかUberEATとか、プラットフォームの大方針に従わなきゃいけない。フランチャイズもそう。自分で売値を決めて、自分でやり方とか生き方とか決めないと、ずっと会社に生き方を決められているリーマン生活と変わらないじゃん。自分だけができる、求められる仕事にシフトしたいという思いはありました。

また、話が脱線した(笑)。えっと整理します。インタビュアーを名乗って個性という名のエッジを際立たせてなるべく、自らのブランディングで周囲をブルーオーシャンにしたのはいいけれど、今度はビジネスの世界にインタビュアーってどう使うのか?問題にぶち当たる。ブランディングしながら、どうやって仕事量を確保するかといったら、必然的に、「どうやってインタビュアーを使うのか?」っていう資料を作って、提案型営業になっていったってわけです。

とはいえ、じっくりターゲットに合わせた提案資料なんか作る時間なんてないので、通底する優位点をまとめておきます。普通のライターじゃなくて、インタビューがしっかりしていると何が違うのか。あるいはそもそも社内広報の方が書くのではなく、外注化した方がいいという根源的なところから啓蒙する資料を作るのです。

もう、ターゲットは企業ですよ。出版社やメディアではない。後者はライターの使い方をわかっているから、まあ、実績を並べた資料を持ってアタックしたり、もう紹介してもらうのみって閉ざされた世界。ところが一般企業の方が営業しがいがあるわけではないですか。大げさに言えば、市場を切り拓く感覚。ライターという競争相手がいないブルーオーシャンを見つけるんですから、そりゃやりがいありますよ。

しかもインタビュアーって名乗ると一気に幅が広がるんですよ。当時のライターってスポーツとかフードアナリストとか、車とか専門ライターみたいなのがいて、でも、僕はいつも「専門は?」「得意なのは?」って質問に対して、「人間専門なので、お話がうかがえれば何でも」って答えてました。

さらに、インタビュアーっていうアピールポイントにもう少し強みを加えようと、突き抜けた感を出すために、そこにインタビューした人数を加えようと考えました。元々、記録好きなんですよ。取材した人数や売り上げもちゃんと記録していて、それがモチベーションになっていたんですよね。集計してみると、当時でも年間300人くらいインタビューしている。

数をこなしているということは、それなりにノウハウがたまっている感あるじゃないですか。数をこなしていることのバリューを分析して営業資料に落とし込む。何が違うのだと明文化する。ただ「経験しています」だけでは説得力がない。経験しているから、御社にとってこういう価値を提供できるという物言いになってきます。ちなみに、こういうポイントになる数とかは絶対に盛ってはいけません。ブランディングの根拠となる数はしっかり正確なものを打ち出さないと根本から崩れる可能性がありますから。

著名人のインタビューをしているって話しも営業ネタとして活用できました。「そんなに有名な方をインタビューしているインタビュアーが来てくれるんだ」って、みんな喜んでくれるし、期待もしてくれる。著名人インタビューは楽しいし、その経験が宣伝材料になっていきましたね。

そして、もっとも重要なのが、一度入り込んだら絶対にがっかりさせないこと。納得させるには、現場で“すげー”って思わせないといけない。絶対にコケることはできないし、失敗しないのは当たりまえで、それ以上に絶対に「さすがですね」って言わせないといけないんですよ。すごいプレッシャーだけど、それが個人ブランディングの絶対条件だと思うんですよ。見かけ倒しでは次がない。そんな感じで必死にやっていました。
(次回へ続く)

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