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フリーランサーに伝えたい、一人で戦うための自己防衛的営業術(Vol.2)

40歳で異業種から独立。まったくコネも実績もない状態から一人、コツコツ営業活動を続けてきた弊社代表・伊藤秋廣が、自身の経験を交えながら、その営業術について語ります。

――前回の記事では、独立したての頃にゼロイチでお客様を集めていった経験談をお聞きしました。それから次第に拡大フェーズに移っていったのですか。

そんなに、綺麗に絵に描いたような拡大なんて、なかなか…。浮き沈みの連続ですよ。なかなか安定しない。もちろん定期的に仕事を発注してくれる顧客もありましたが、そもそも最初はスタートアップとか小さな制作会社が相手なので、商いも小さいし安定しているわけでもない。でもスタートアップのIT会社とか、ニーズのあった求人系記事を発注してくれる人材系の会社って、業界的に人材が流動的ですから、仲良くしていた担当者が転職した先でまた依頼をくれる。信頼を重ねていくと、一定の仕事量と顧客を得ることができました。

それでも営業活動はやめませんでした。駆け出しのころに痛い目にあったんですよ。結構、メインみたいな出版社があったのですが、すべてを捧げて仕事をしていたのに担当していた雑誌が急に廃刊になって…収入が1/3以下に落ち込んだ。本当に焦りましたよ。そこから、もうリスク分散って観点から、常に営業活動は続けて、新しい顧客を得ていこうと考えました。

――それは今でも?

もちろんですよ。最近はおかげさまで、紹介とか増えてきましたが、常に新しいお客様を求める姿勢に変わりはありません。この間、お客様が主催するクリエイター交流会みたいなのがあって、久しぶりに出席してみたのですが、帰り際にカメラマンと一緒になって、僕が常に営業活動しているって話しになったら、「すごい。僕は営業苦手なんですよ」って言うんですよ。むしろ、僕としてはそっちのほうがすごい(笑)。営業活動しないで個人のクリエイターとして食っていけるほうがよっぽどすごいっすよ。僕はいつも恐怖感と戦っていますからね。

出版社はこのご時世、急に媒体がなくなったりするし、WEBメディアだって急に方針変更する。若いIT会社って決断がはやいし、採算合わない事業はすぐ整理しますよね。だからメイン顧客依存ではなく、常に10社くらいのお客さんから数万〜十数万の仕事を確保するような体制にしないと怖くて怖くて…。

ある媒体の仕事がなくなるとわかったら、速攻でメール営業大作戦を実行するんです。新規の顧客に関しては前回記事の通りですが、さらに掘り起こしメール作戦っていうのを実行するんです。最近、ご無沙汰しているお客様に「お元気ですか?なんかないですか?」的な。優先順位は仲良かった客、僕のことは評価してくれているが外的要因で仕事が切れちゃったとか、そういう人とか。あとは転職したお客さんとか、企画段階で話が止まっちゃった案件の関係者とか。

掘り起こしメールはけっこう効果があって、そこから再び仕事が生まれることもありました。ただやみくもに「仕事をくれ」っていうのでは芸がないので、「こんな実績増えたよ」とか、「営業資料新しくしたよ」とか、「ホームページにコンテンツ追加したよ」とか、そんなネタをメールの冒頭に持ってくる。まあ、よくある一般的な“おうかがい営業”の体を取るんですよ。

とはいえ、いちいち挨拶にいったり何度も足を運ぶのも時間がもったいない。僕は完全なる営業マンじゃなくて、記事を書いたり編集したりっていう実務もあるんで、そこに時間をかけるのはナンセンスなので、もうメールだけで営業活動が成立するように考える。客先に打ち合わせに行くのは、仕事が決まる前提でしかいかないと決めていました。

だから営業資料と営業メールの中身どんどん工夫して充実させていくし、ホームページもめちゃくちゃいじりました。協力してくれるデザイナーがいて、すごく安く作ってくれるんですよ。みんな僕が個人事業主だと思わなかったっていうくらいにホームページが充実している。

常に“仕事がなくなるんじゃないか”という恐怖感にかられながら営業活動を続けていったわけですが、前回もちらっと書いたように、ライターって山ほどいるし、クラウドソーシングみたいなものが少しずつ登場してきて、ギャラの値崩れが始まっていました。副業ライターが数千円で書くとなると、僕らみたいに書くことで食っているライターにもしわ寄せが来るんですよ。もちろん、クオリティを評価してくれる客はいましたが、新規の顧客を取る時に、この価格であるために、もう少し相手を納得させる材料を持たないといけない。そこで考えたのが、僕の強みというか、何かウリみたいなものを作ってデフォルメしようということ。

元々、営業職だったし、サラリーマン生活が長かったし、年齢もいっていたので、お客さんからは「インタビューが安定している」とか、「社長への取材はやっぱり伊藤さんが一番」みたいな声をいただけるようになっていて、なるほど、じゃあ、そこを強みにして、その辺の若いライターとの差別化を図ろうとインタビュアーって名乗るようにしました。

まずは名刺の肩書を変えて、っていうか、インタビュアーって肩書と代表っていう肩書の二種類の名刺を使い分けました。ロゴと屋号とURLがあって、インタビュアーとか代表って肩書がある名刺だとそれっぽく見える。皆さん、僕が個人事業主だって思わない。エーアイプロダクションは会社だと勘違いする人も多くいましたね。どこにも株式会社なんて書いていないのに。

そうそう、当時、やっぱり僕みたいに独立してプロダクションを名乗っている人で、株式会社じゃないのに名刺に株式会社ってしている人がいて、なんかそれって違うなと。嘘はいけないんですよ。ハッタリや誇張はOKだけど嘘は絶対にいけない。会社じゃないのに会社だっていって営業をしたら詐欺っすよ。やれないことをやれるというのもよくない。そんなスタンスだけは守り通りました。

さて、話を戻して、名刺と営業資料も一新してホームページにも「インタビュアー」だってキャッチをちりばめて、そして自分に言い聞かせる、「俺はインタビュアーだ」と。SNSでもそう書き散らして拡散しまくって、まずはブランディングから入って、それっぽく周囲を固めていくところから始めました。でも、ブランディングばかりが先行するとダメじゃないですか、やっぱり実力がないと。“こいつブランド倒れだ”とか、“見かけ倒しだわ”と思われたら自分の首を絞めることになるし、もう次がない。インタビュアーと名乗ったら、絶対にインタビューでコケるわけにはいかないんです。

そういった意識がどんどん、仕事に対するストイックな姿勢を生んでいきます。とにかくたくさん、いろんな立場の人をインタビューしよう。いろんな会社、分野の人の話を聞こう。そこを軸にして、ギャラも度外視で、どんどんチャレンジしていく。インタビュアーの肩書を使って営業しながら経験を増やし、ブランディングと実力磨きを掛け合わせていった感覚です。

この戦略がけっこう功を奏したというか、そこから自分の立ち位置が確立され、むしろ営業がしやすくなった感覚ですね。おかげさまで、そこからライターの一人ではなく、インタビュアー伊藤にオファーがくるようになってきました(次回へ続く)。

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#プロインタビュアー

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