PRは“手段”じゃない。「関係性の構築」だ──経営と社会をつなぐ視点から
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こんにちは。スパイスファクトリーでCSOを務めている流郷綾乃です。
広報・PRの仕事に長く携わってきた私が、経営の視点からPRを再定義する連載「#つながるPR」をお届けしています。
「PR強いですね」って言われることが増えた。
ありがたい言葉。でも、どうしてもモヤモヤする。
私は、PRを“うまく見せよう”としてやってきたわけじゃない。
いや、私にもうまく見せないといけないと思っていた時期もある。
話題づくりや露出競争、バズらせるテクニック──
そういうものがPRと捉えられてしまうことに強く違和感を覚える
私にとってPRとは、あらゆるステークホルダーとのより良い関係性の構築
だ
「うまく見せる」に違和感がある
最近、PRを、どこか“マーケティングの延長線”のように語る人が特に増えた気がする。
「認知を広げる手段」「SNS映えを狙う演出」
それはたしかに、目に見える成果があるし、数値化もしやすい。
けれど私は、それだけではどうしても足りないと感じている。
いや、むしろ“それがPRだ”と語られることで、本質が置き去りにされている気がする。
PRとは、Public Relations。
文字通り、“公共(社会)との関係性の構築”であり、本来は企業や組織が社会とどうつながっていくかを考える行為だ。
一時の話題よりも、長く信頼を築くこと。
そのために、誰に、何をどう伝え、どういう関係を構築するか。
そういう視点が、今あらためて必要なのではないかと思う。
PRとは“経営の中枢”にこそあるべき視点
私は、企業の中で広報という仕事を始めて、フリーランスとしても広報をしていた経験がある
現在は、経営者である。
その間、PRのプロジェクトにも数多く携わってきたけれど、立場が変わって見えてきたことがある。
それは、PRとは“経営の中枢”にこそあるべき視点だということ。
どんな言葉を社会に届けるか。
何を価値として定義し、どこに責任を持つのか。
誰と信頼関係を築き、持続可能な関係をどう構築していくか。
これらすべては、経営そのものの問いであり、同時にPRの問いでもある。
PRが「伝える手段」だけで終わってしまえば、企業は一貫性を失い、社会との接点は薄れていく。
だからこそ、私は経営者としてPRに向き合いたい。
PRを、“あらゆるステークホルダーとの関係性の構築”として捉え直したい。
PRとは「伝える」ではなく「つながる」こと
PRという言葉には、たくさんの誤解がある。
広報担当者に「いい感じのストーリー作って」と頼んだり、PR会社に「いいメディア出してください」と依頼したり。
一方で、社内では「なんの役に立ってるかわからない」と扱われることもある。
でも、私の中でPRとは、もっと地に足のついたものだ。
社会と企業、社員とビジョン、顧客と未来──
その“間”にある見えない糸を、どう編んでいくか。
伝えることより、伝わること。
伝わるだけではなく、つながること。
その“つながり”とは、社会と私たち(企業)が重なり合っていく関係性のこと。
PRとは、その重なりを丁寧に育てていく営みだと、私は考えている。
ここまではきれいごとに聞こえるかもしれない。
「社会との関係性が大事なんです」と言うと、たまに鼻で笑われる。
「結局、売れなきゃ意味がないでしょ」とか、
「そんなことより、バズる施策を考えてよ」と言われることもある。
もちろん、現場には現場のリアリティがある。
私も数字で評価される場にいたし、成果を出すために奔走してきた。
実際、数字が大事なことも、身に染みてわかっている。
でも、だからこそあえて言いたい。
手段ばかりを先行させ、関係性を軽んじた先に、
長く続く信頼はない──そのことを、私は実感として知っている。
今回noteの連載としては、「Public Relations(PR)」を、“広報”や“広告”と同じ土俵で語るのではなく、
もっと本質的に、そして経営の視点から見つめ直していきたい。
これは自分自身の信じるPRのために
「つながるPR」という言葉に込めたもの
この連載のタイトルに「つながるPR」と名付けたのは、単なる言い換えではありません。
よく「伝えるから、伝わるへ」と言われる時代。
私もそう言っていました。
でも最近では、その「伝わる」の先にこそ、PRの本質があると感じています。
自分本位の「伝える」だけで終わらず、受け手との共感を通じて「つながる」こと。
それこそが、Public Relationsの本質だと考えるようになりました。
組織と人、企業と社会──
一方通行の発信ではなく、信頼と共感でつながる関係をどう築くか。
それの考えを言葉にしていくのが、この連載『つながるPR』です。
最後に:この連載を読んでほしい人へ
このnoteは、以下のような方に届けたいと思っています。
- 事業の成長と持続可能な経営を真剣に考えている経営者の方
- PRという仕事に誇りを持ちつつ、日々モヤモヤしている広報担当者の方
- クライアントの本質に寄り添おうとするフリーランスやPR会社の方
そんな皆さんと一緒に、PRとは何かを問い直していきたいという想いで書いています。
これからこの連載では、Public Relationsという言葉が生まれた背景や、
時代の中でどのように形づくられてきたのか──
そんな歴史的な視点からも、PRを見つめ直していきたいと考えています。
ただ発信するだけではなく、社会とどう関係を結んでいくか。
PRの原点に立ち返ることで、今の時代にふさわしい「つながるPR」の姿を探っていきたい。
この連載が、その一歩になれば嬉しいです。
PRは、ただの手段じゃない。
組織や社会をつなぐための、“より良い関係性の構築”だと私は考えています。それを前提として手段がある。
きれいごとだと思う人こそ、ぜひ最後まで読んでみてほしい。
ここから、つながっていけたら嬉しいです。
流郷綾乃
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