38年の幕を閉じる両親のお店へ「感謝サプライズ」
私の両親は38年間、東京の赤坂で会員制の高級クラブ「CTセラー」を経営してきました。母親がママで父親がマスターという黒子役での38年間という月日です。
なぜ高級なのか?
それは全盛期は座っただけで1人3万円だったそうです。高い(笑)
閉店の1ヶ月前に「閉店の前日20:00に友達連れて行くから」と、
父親に嘘の予約を入れました。
さすが38年間の歴史は長く、閉店を知ったたくさんの常連さんが、
別れを惜しみ来店してくれました。
そして、閉店の前日。
早めにお店につき20:00を待つ私。
そして20:00。近しい親族の皆さんが総勢10名以上がお店に入店します。
「どういうことだ??お前の友達じゃないのか???」
ドッキリだとまだわからず動揺する父親を横目に
あっという間に店の半分が親族で埋まりました。
父は夜の仕事という職業柄、なんとか昼間の仕事を柱にしたいと、
飲食店やゴルフの会員権販売など、いくつも事業を立ち上げ失敗してきました。
どこかに自分の職業への後ろめたさがあったようです。
そんな私も、幼少期から夕飯を食べると家から仕事に行ってしまう
両親に寂しさを感じ、夜は祖父母が面倒を見てくれる生活でした。
両親とも帰宅はいつも明け方。
特に父親は昼間は横になって寝ているばかりで良い思い出がありませんでした。
19才になり、初めて赤坂の両親のお店に行きました。
そこには家でゴロゴロしている父親の姿はなく、
厨房で焼きぞばを作り、ホールでは誰よりも明るく接客をする姿がありました。
長い間、父親を誤解していたことがわかりました。
父親の影響力がお店を支えていることは一目瞭然でした。
プロの仕事でした。
父親が不器用な性格とはいえ、長年誤解をしてきた自分を反省しました。
この出来事から15年。
両親のお店が37年間の幕を閉じると聞いたとき、
「親族に両親の姿、特に父親の姿を見てもらいたい」と思いました。
それは真っ直ぐ過ぎる父親は、親族から強面で融通が聞かない人と、誤解をされていたように見受けられたからです。
サプライズで来店した親族たちと、昔話に花が咲く中、こっそりと私が集めた38年分の両親の写真とストーリーを、「CTセラー38年史」として用意したムービーを流すタイミングがきました。
このムービーは、私がOKWAVE在籍時にビジネスプランコンテストに
一緒にメンバーして力を貸してくれたウィルフォワードの成瀬さんが一緒に作ってくれました。とてもとても感謝しています。
上映の直前、なんと常連のお客様2組10名近くで来店されました。
聞くと、1組は38年間お店に通っているという常連さん。
もう1組はなんと3日連続でお店に来ているという常連さん。
今夜のサプライズの経緯を説明させていただき
親族と常連さんに囲まれた満員状態という最高な状態で上映会が始まりました。
父親はカウンターの一番奥から遠目にムービーを眺めていました。
5分のムービーに喝采の拍手をいただき、僕ら兄弟から大きな花束を両親に渡し
「今まで本当にありがとう。心から尊敬する父と母へ」
と感謝の気持ちを言葉で伝えることができました。
常連さん達と合唱。マイク持っているのが母です。
上映会後は、常連のお客様たちから拍手喝采をいただき、
「感動した!」と言っていただくことができました。
お別れメドレーの大合唱となりました。
そして、最後は父から、
サプライズで集まった親族の皆さんと常連さんへの感謝の歌。
快く集まってくれた親族の皆さん。
ムービー制作に多大なるアドバイスと協力をしてくれた
ウィルフォワードの成瀬さんと小坂さん。
プロジェクターを貸してくれた尾花さん。
素敵な花束をアレンジしてくれた安奈さん。
皆さんの協力があり形にすることができました。
人生で2度ない時間を最高な形で演出することができました。
こうして、私の両親のお店「CTセラー」は、2012年7月27日に38年の歴史の幕を閉じました。
息子として精一杯のことは出来たかな、と思います。