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AIという道具のデザイン批評のために

日本デザインセンターの原研哉氏が『これからの教養激変する世界を生き抜くための知の11講』という本の中でデザインという思想、あるいは考え方の発端となった出来事として1851年のロンドン万博の事を上げていました。

そこでは当時始まったばかりの機械生産による物品の展示物が、ある意味で醜かったと、かつて職人たちが手塩にかけて作っていたものが、機械生産になった途端に不器用な手で作った粗悪品のようになってしまったというのです。

そこで、物作りの中に込められていた人間の尊厳はどこに行ってしまったのかとラスキンやモリスが批判したことを挙げています。そういった産業革命の軋轢の中でからデザインに対する批評が生まれたという近代デザイン史を紹介していました。

このかつての歴史と似た状況が、AIの登場によって今また生まれつつある感じがあります。

AI開発競争が加速して、Catchyのようなサービスが登場した時に、出てきた反応の一つとして、AIが作った文章なんて使いものにならないよ。というものがありました。
もちろん技術は進化しますし、AIは学び続ける。
人間が広告宣伝のためのコピーを考え、文章を組み立てる。
そこは文才とともに商品をいかに伝えるか?といった観点を忘れずに書ける能力のある人材のみが書くことを許されたコピーライティングの世界。

そのように学習した人たちにとって、その文章制作という現場にAIが立ち入ってくることは感情的に許せない、という事もありましょうが、いわば突然の他者の登場という事態に至って人は逆に自分自身の書くという行為と対峙するようになるのでしょう。
そういう意味ではデザイン批評の登場の時のように、広告・広報文書制作の批評的事態が今、立ち上がりつつある日本の現状といったところでしょうか。

これまで、私がCatchyやChatGPTをいじってみた感じで言えば、AIの書く力をが発揮されるためには、いい質問、設問ができた方が良いという事でした。
良いインタビューは良い質問によって生まれるように、どういう問いをAIに対して適切に立てられるかは、人間側にかかっていて文章執筆能力から質問力といったものに人間のやるべき事が移ってきているように思います。画像生成系AIのプロンプタとは、そういう職能の一つといえます。
ですのでCatchyに必要なものとして、良い文章を生み出すための良い質問の仕方マニュアル・事例集みたいなものは欲しいと思います。その設問設定パターンを把握することがAIライティングのベターな解を得られる道筋の一つかなと思います。

冒頭の本での原研哉氏インタビューの中では「道具が欲望を進化させる」という事も言及しています。
ある道具ができることによって人の欲望がひとつ進化すると、そしてその道具を更に進化させようとする共進化の関係だといいます。
確かにその通りで、Catchyという道具の登場がまた、人の欲望を進化させます。

様々なことが想像されますが、ある意味、そういう欲望を刺激しながら、新しく生まれてくる欲望に応えまた次の新しい道具を作り出すのが人間の営みですから、そういう道具を良く使っていただく環境を提供することも開発側の努めでもあるように思います。(ネガティブな事例も含め)

あるべき環境をどう作っていくかを、道具を通して考え始めるという所にデザインの始まりがあるといいます。Catchyという道具を使って業務を捌いていきながら、人は、じゃあ、次どうしたらいい?という問いを内側に持つようになるでしょう。
それをも含めて間接的にサポートしていく仕事がAIツール開発には必要なのだと思います。
それがAIと人間との良い共生関係であり、共進化につながっていくのだと思います。

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