キャリアを決める意思決定の極意 vol.1 新卒リクルート→中途DeNA→起業 の選択のリアルな背景【前編】
【何を目的に、就職活動をするのか】
時に人事として、時に事業責任者として、時に経営者として。これまで、合計2000人以上の「就職活動者(社会人/学生含む)」とお会いしてきましたが、面接や面談の中で、必ず伺うようにしている質問がひとつあります。
「今回は、どんなきっかけで就職活動をされているんですか?」
皆さんなら、何と答えますか。
回答の例としては、以下のようなものが想定されます。
元々、広告で人を動かすということに興味があり、今の広告代理店に入社しました。広告主の魅力を最大限消費者に伝えるために様々な企画を考えてきましたし、大きな成果もあげてきました。今後は、これまでの「広告主目線」から、より「消費者目線」の広告企画を考える仕事がしたくて、実際に消費者の生声が聴ける事業会社でマーケティングの仕事をするために、転職活動をしています。
私がこの質問をする意図としては、以下の2つがあります。
①目的を知りたい
働く上で何を目指しているのか/どんなチャレンジをしたいのか/どんな環境を求めているのか
→先ほどの回答例で言うと、「広告で人を動かす」その中でも、「これまで以上に消費者目線での企画を考える経験をしたい」があてはまります。
②「いま、就職活動を行う」という手段に至ったプロセスを知りたい
今の環境では何がだめで、次のステージはどんな場所を探しているのか
→ 先ほどの回答例で言うと、 「実際に消費者の生声が聴ける事業会社でマーケティングの仕事がしたい」があてはまります。
①に関して、この辺を明確に/本音で持っている人は
・自分のキャリアに向き合い、答えを出すだけの思考力がある
・自分の価値観をよくわかっているので、ブレない。ある意味、その価値観を尊重してあげれば、マネジメントはしやすい。
・その軸が会社と同じベクトルなのか/仮に違うベクトルでも共存しうるものなのか、会社へのFIT感の有無が判断できる
などの特徴があります。
そして、言語化しづらい部分でもあるのですが、ここでの答えが「自分の心の声に素直な人」ほど、目的意識が高かったり、自分をよく理解している分、他人に対しての理解力/洞察力も高いことが多く、ビジネスで活躍する傾向があるように思います。
では「心の声」とは一体何か。どうやって聞き取るのか。それは今後の連載の中でも明確にしていきます。
②に関しては
・そもそも①は本当に思っていることなのか
(本気であれば、おのずと、それを実現するために何をすべきか考えているはず)
・目的から逆算して、適切な課題設定と有効な打ち手を考える「問題解決能力」が高いのか低いのか
以上を判断することが目的です。
ここまで、アイスブレークを抜かすと、所要時間平均、約3分。
この時点で、8割方、合否の方向性は見えてしまいます。
さらにここから
「なぜウチの会社に興味を持ってくれたんですか」「他はどんな会社を考えてるんですか」という質問をさせて頂くことで①の回答及び②の回答、それぞれとのつながりがどれだけあるかによって、その方の本気度や問題解決能力を読み取ることができます。
今回のブログでは、上記の中でも①の「就職活動を行う目的」に注目したいと思います。
働く目的、やりたいチャレンジ、どんな環境で働きたいのか。この辺が明確になればなるほど、自分が「本当に手にしたいもの」に気づき、それを得ることに近づくからです。
自分は本当は何がしたいのか。心の底からの情熱を爆発させるには、どうしたらよいのか。
圧倒的な成果を出している人は、皆さんこれが明確になっています。
前置きが長くなりましたが、皆さんが持つ、心の底に眠る爆発的な情熱に気づくこと。その情熱を保ちづづけることのできる環境が明確になる。そして、その情熱を傾けることのできる仕事やプロジェクトに出会う/創り出すこと。
そんなお手伝いがしたく、このブログを複数回にわたって、書かせていただきます。
【読んで欲しい方】
・学生の時の部活のように、夢中になれる何かを見つけたい方
・心の底からやりたい仕事に出会いたい方
・何年後かに振り返って、自分の選択を後悔したくない方
・このままでは終われない、こんなはずではない、まだ諦めない、という気持ちが少しでも残っている方
【Living Missonと、 Self Motivation Management】
第一回は、私がこれまでのキャリア(新卒リクルート→中途DeNA→起業)を考える際、何がしたくてそれぞれの選択をしたのか、その時の心情含めて出来る限りリアルにお伝えさせて頂くことで、意思決定をする際のプロセスのイメージのすり合わせが出来たらと思います。
リクルートを辞める際には身の上あまるカウンターオファーの打診もいただいたり、DeNAを辞めるときは、ある意味、ポジションも報酬も約束されている中で、無一文になるリスクも多分にある起業という選択肢をそれぞれ選びましたが、そこに一切の迷いもありませんでした。
前提として、私は「自分が何をしたいか」を考える際、①Living Misson(死ぬまでに成し遂げたいこと) ② Self Motivation Management (熱した鉄を冷まさないための環境選び/環境つくり)の2つを、必ずセットで考えるようにしています。
過去の多くの偉人たちが言葉にしているように、やりたいことは、諦めず、出来るまでやり続ければ、必ず叶うはず。なのに、走り続けるうちに、いつか初志を忘れてしまい、やりたいことを諦めてしまう。
私もそういう経験は何度もあり、何度も後悔しました。なぜ、僕は言ったことを守れないのか。初志を貫徹できないのか。悩んできました。
やりたいことを叶えられず、「どうせ叶わないと」という気持ちがどこかにあり、自分の心の声にフタをしてしまった時期もありました。
初志を貫徹できない人は、それが癖になります。だからこそ、自分はどんな工夫をすれば初志を貫徹できるのか、考え抜き、モチベーションを保ち続ける環境を、自分で創る/選ぶことは、やりたいことを叶える上では非常に重要だと思っています。
僕は心が弱いので、やりたいことを実現するために他の全てを捨てる、なんてことは出来ません。「欲しがりません、勝つまでは」と、心の底から言うには、まだまだ鍛錬が足りていません。
一定以上、目の前の生活や環境が充実しているからこそ、本気でやり続けるモチベーションを保つことができると思っています。最終的な目的がブレないなら、欲張りでもよいと思っています。無理をしても、自分に嘘をついても、長い目で見ると良いことは少ないと思っています。
あくまで、大切なのは、やり続けれること。やり続けるためには、余計なストレスのない環境に身を置き、我慢しすぎないこと。大きな喜びを得る前に、小さな喜びを得たってよい。むしろそれが、心の炎を燃やし続けるためのガソリンになる。そう思っています。
【手段の目的化】
一方で、ですが、同じ環境に一定以上いると、その環境にいることが心地よくなってきます。その環境で活躍することや出世することは、本来志を実現するためのひとつ手段だったはずなのに、いつの間にかそれが目的になってしまっている人は、私の周りにも非常に多いです。
「いまの会社もすごくやりがいあるしさ」「いまの会社のvisionにはとても共感してるしさ」皆さん、思考停止になり、色んな言い訳をします。
それが心の底からの声で、決してリスクや変化を恐れて自分に言い聞かせている内容ではなく、一生後悔しないと言い切れるならその環境に留まり続けるのが良いと思います。
もしそうでないなら、自分の心に素直になって、今一度、自分が本当に何をしたいのか、そのためにいま何をするべきなのか、考え直した方が良いです。
【学生時代、リクルートを選んだ理由】
私が学生時代に就職先を選ぶ前には、Living Missionなどという大それたワードは使っていませんでしたが、必ず成し遂げたいこととして、中長期的なゴールとして設定したのは この3つでした。
①起業する
②自分で作った会社をとにかく大きくし、GDPに貢献する
③両親に大きな家をプレゼントしたい
一方で、この3つ以外にも、心の声に従うと、やりたいこと/拘りたいことはたくさんありました。その中でも Self Motivation Management を行う上で重要だったのは(恥を忍んで、正直に書くと)以下の3つでした。
④まずは大企業に入って親を安心させたい
⑤モテたい(この願望を叶えることを犠牲にしてまで仕事に打ち込むことは、当時の僕には無理でした)
⑥気の合う仲間に囲まれて働きたい
それぞれをもう少し詳細化していきます。
①起業する
私が大学生の時に自分の会社を創業した父親の姿を見て、僕も絶対にいつか起業をしようと思ってました。起業して、成功して、ビジネスの話が大好きな父親と、ある意味対等な目線で「今はこんなビジネスを始めたよ」「いいメンバーが仲間に入ってくれたんだ」そんな話をしている姿を思い浮かべると、最高に幸せでしたし、私が会社を成功させる姿を見せることは最高の親孝行にもなると思ってました。
ただ、当時の私には、不安もかなりありました。というより、成功のイメージがあまりわきませんでした。何より学生時代は部活ばかりしていたこともあり、学生時代の私は正直ビジネスというものを全く分かっていませんでした。働いたことがない以上、どんな業界でビジネスをするのが良いかなども、想像がつきませんでした。
なので、いきなり起業をするのではなく、「起業した際に成功確率を高める」ことと「自分が何に興味があるのかを知る」ことを目的に、まずは
・幅広い業種の方々と仕事ができる
・(どんな起業家が成功しているのか知るため)色んな社長と直接会える
そんな仕事ができる会社に入社しようと思いました。
② 自分で作った会社をとにかく大きくする
とくに理由などないのですが、せっかく会社をやるなら大きい会社にしたいでしょ、と思っていました。数万人のメンバーが、自分と一緒の夢を追いかける。そして、トヨタのように、目に見えてに日本のGDPを押し上げる企業になる。
そんな姿をイメージすると、とても誇りを感じましたし、ワクワクしました。
次回以降のブログでも書いていきますが、「イメージしたときに、誇りを感じるか/ワクワクするか」というのは、Living Missionを考える上でとても大切です。理由は必要ない、とにかく自分の心が動くかどうか、です。
当時の私は、人数規模の大きな企業と小さな企業で何が違うか、また何が違いの要因になっているかもよくわかっていなかったので、できれば起業する前に、どちらの会社も体験しておきたいと思っていました。
③両親に大きな家をプレゼントする
学生時代の私は、とにかく恩知らずな人間だったので(今は多少変わったと自分では思っていますが)、誰かに何かをしてあげたいとか返したいとか思う気持ちはほとんどありませんでした。
ただ、その中で唯一、私を大切に育ててくれた両親への感謝の気持ちだけは心から湧き上がるものがありました。そして、母親が一軒家で犬を飼う生活に大きな憧れを抱いているのに対して、父親がいくら自分で会社をやりだしたとはいえ、収入はサラリーマン時代と大差なかったこと、年齢や会社の設立日などを鑑みると父親がローンをたてて一軒家を買うことは、この先一生叶う可能性が低い、ということは学生ながら理解していました。
それなら私が稼いで、かなえてあげるしかない、という使命感が心の中で燃え上がっていました。また、せっかくなら、できるだけ早い段階で叶えてあげたいと思っていました。
※結果的に、リクルートへの入社後5年を経てDeNAに転職する前に(決して大きな家とは言えませんが)3階建ての一軒家をプレゼントしました。
④ まずは大企業に入って親を喜ばせたい
父親が起業をしている一方で、両親が大手主義なことは分かっていました。
母親も、近所の方に聞かれたときに息子が大手企業に就職したと言えるのは気持ちが良いだろうし、父親は自分が大手企業に勤めた経験がなく、自分が大手企業ではなく悔しい思いをしたエピソードなどを多数聞いていたので、その気持ちはよく理解できました。
①は自分が自発的に思ったこと、④は周囲から期待されていたこと、それぞれ異なることではありますが、どちらも叶えたいとは思っていたので、これが決め手にはなり得ないものの、まずは④を叶えてから①を目指すというのもありだと思っていました。
⑤ モテたい
正直に書きます。とにかくモテたかったです。
学生時代、部活を一生懸命やっていたのであまり女性との接点が多くなかったのと、口下手なこともあってあまりモテなかったので、モテたいという願望は強く強く(正直、当時のモチベーションの中で一番強かったくらい)ありました。
短期的にこの変数を向上させるには、・聞こえの良い大企業に就職する ・給料の良い企業に就職する ということが手っ取り早いと思ってました。
30代や40代になっても高いモチベーションでビジネスをしている人たちの中にも、このモテたいという願望が強烈に強い方は多数いらっしゃいます。 うまく仕事を頑張るモチベーションにつなげられるなら、むしろ強く思い続けられることのほうが貴重な才能なのかもしれません。
⑥気の合う仲間に囲まれて働きたい
大して心の強くない私が、学生時代部活に情熱を捧げ続けることができたのは、リスペクトできるチームメイトの存在が非常に大きかったです。苦しい場面でもあきらめない、最後までやりきる、高い理想を持ち続け、妥協しない。周りの影響を受けやすい私は、チームメンバーから良い影響ばかり受けていました。そして、練習が終わったら、トコトンふざけた話をして、腹の底から笑う。そんな関係性が築けていたらこそ、朝から晩まで飽きずにチームメイトと同じ時間を過ごすことが出来ました。
周りからの影響を受けやすい性格は中々変わらないですし、仕事もチームスポーツも似たようなものだろうと思っていました。
・例えば家族を大切にしたいとか、モテたいとか、そういう価値観やモチベーションの源泉も共感できる仲間と働きたい
・エネルギーレベルが高く、諦めず、やりきる仲間とリスペクトし合い、お互いを刺激しながら切磋琢磨したい
そういうことを重視していました。
以上の経緯から、「起業する」をLiving Missionに掲げながらも企業への就職を選択したのですが、私が就職活動をしていた2008年新卒時代は、リーマンショックが起こる前でとてつもない売り手市場だったこともあり、複数の企業への選択肢がありました。
・大手人材系 A
・金融/証券 B
・総合商社 C
・IT系ベンチャーD
そこから、自分の「Living Mission」と「Self Motivation Management」両方を最大限満たすような会社はどこなのか、優先度も明確にしながら、実際に表を作って可視化して考えてみました。
こうして表にしてみると、一文瞭然ですね。
当時の私は迷いなく、リクルートへの就職を決めました。
入社して3年半は営業職で、特に最初の一年は苦労しましたが、本当に良い仲間に囲まれ、クライアントに恵まれ、多くの経営者の方々に育てて頂き、ビジネスとしての基礎を学ぶだけでなく、マネジメントを経験する機会も得ることが出来ました。
その後、社内異動制度を使っての関連会社への出向や、DeNAへの転職、そして起業へと繋がっていくのですが、その都度「Living Mission」と「Self Motivation Management」の整理を行ってきました。その具体的内容は、次回以降のブログに記載をさせて頂きます。
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まずは第一回、長々とお付き合い頂き、ありがとうございました。