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採用奮闘記・箱根駅伝青学4連覇から見る"人"の活かし方

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願い致します。


西尾です。

入社して3か月が経ち、無事に2018年を迎えることが出来ました。

今年はもっともっと色んな記事を発信して、楽しんで貰えるようにより一層の研鑽を積んで参りますので宜しくお願い致します。


さて、みなさんは年末年始いかがお過ごしでしたでしょうか?

私は毎年年末は富士山駅伝(大学女子駅伝)、年始はニューイヤー駅伝(実業団男子駅伝)、箱根駅伝(関東選抜大学駅伝)を見て過ごすのですが、皆さんも箱根駅伝は実家でのんびりと家族で観戦なんて方も多かったのではないでしょうか?

私は実家が二宮(4区、7区のタイム差確認ポイント)で自身も長距離を走っていたので、箱根駅伝は毎年並々ならぬ気持ちで観戦しているのですが、今年は優勝した青山学院大学の見事なモチベーションコントロールと育成についてHR領域の観点も交えて語ってみようと思います。





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結果だけ見れば、青山学院大学が圧勝の4連覇で幕を閉じた2018年箱根駅伝ですが、その裏には緻密に計算された区間配置と、来年に繋げる戦略が隠されていました。

①エースの起用法

原監督が今回も見事だったのは、このエースの起用法だった。

昨年までは一色恭志(現・GMOアスリートクラブ)という絶対的なエースを華の2区に配置して、そこを中心に山上りに神野大地(現・コニカミノルタ)、ゲームメイカー久保田和真(現・九電工)を配置するなどして今日まで続く連覇の基礎を作った。

今大会では4年生の田村和希選手、下田裕太選手のダブルエースを擁し臨んだのだが、その二人をエース区間に配置することは無かった。

田村選手は大学駅伝5度の区間賞に輝いた"駅伝男"。圧倒的な強さを持ちながらも唯一昨年の箱根駅伝では脱水症状で失速を経験した。実は暑さに弱く、また起伏にも強くないといわれている。そのため、気温の変化があり、後半急激な登りが出現する2区には不向き。結果、下り気味でスピードの生かせる3区に配置された。

下田選手はマラソン10代日本記録保持者で箱根駅伝でも過去2年連続8区で区間賞を獲得した選手。長い距離に強く、アップダウンにも対応できるため、2区でも十分に走ることが予想された。しかし、今年は出雲駅伝、全日本駅伝と精彩を欠き、本人も良いイメージで調整が出来なかった。そのため、最もいいイメージのある8区で勝負を決めてもらう役割を担ってもらおうと8区に配置された。

この起用法によって二人が活躍した(田村は区間2位ながら歴代7位の好タイム、下田は3年連続の区間賞)だけでなく、その前の区間に配置された3年生に責任感と余裕がうまれ、最高のパフォーマンスを引き出すこととなった(2区森田は区間賞、7区林は区間新記録)。

ここに、エースにはただエースの責任を背負ってもらうだけでなく最も結果が出せるところで走ってもらうことによって全体のパフォーマンスを向上させる意図が隠されていた。



②4年間二軍寮の選手を起用した狙い

ただ勝つだけでなく、来年やその先も見越した起用法にも驚かされる。

今回9区を走った4年生の近藤修一郎選手は、秋まで二軍寮に住んでいた箱根には届く可能性もほぼ無かった選手だ。

そんな選手が復路で最も長い9区を任された。

実は、今回の近藤選手だけでなく、2017年大会では池田生成選手を、二軍寮出身者から抜擢し、配置している。正直、青山学院大学の層の厚さを考えたら、他にももっと走れる選手は存在するだろう。

ここには、原監督の巧みなモチベーションコントロール術が存在する。

青山学院大学のような強豪校では、所謂エリートランナーと呼ばれる実績の多い選手をスカウトし、そういった選手が順調に成長して箱根を走るケースが殆どである。当然、入部当初から走力には大きな差があり、メンバー入りもかなり難しい。

彼らも箱根を走りたくて入部し、4年間練習を重ね、大学生活を投げうってまで時間と力を投資しているのだ。走れないことが最初から目に見えていれば入部もしなければ、練習にも身が入らないだろう。

だが、箱根にはエリートランナーだけで10人が構成されることもまた稀なのだ。

先ほど紹介したエースの下田選手は入学時同級生で下から2番目の持ちタイムだったが、急成長して一躍スター選手へと駆け上がった。7区 区間新記録の林選手は入学時ビリの選手だった。遡れば、日本選手権を制覇した元駒沢大学(現・富士通)の星創太さんなども大学で一気に力をつけた。腐らずに地道な練習を積めば急成長を果たす原石はたくさん存在するのだ。

つまり、ここでそういった原石の選手たちが希望を持って練習をする「理由」が必要なのだ。

今回の近藤選手の走りを見て後輩たちは勇気づけられただろう。「来年は自分が」「いつか必ず箱根に」と気持ちを強くして練習を再開した選手も多いだろう。そしてその中から、急成長を果たす選手がまた盛り上げてくれることが、青山学院大学の層の厚さなのだ。



③指定校推薦の選手をアンカーに起用

さらに驚いたのが、栄光のゴールテープを切った3年生の橋間貴弥選手の経歴だ。

高校時に目立った実績がないだけではなく、なんとこの選手スポーツ推薦ではないのだ。

国立大学への進学と迷った末に、大学でも陸上部を続けようと青山学院大学の門を叩き、コツコツと力を積み重ね、4連覇のゴールテープを切るまでに成長。

ここでも先ほどと同じように"非エリート選手"の成長に火をつける意図があると読み取れる。

タイムの速い選手を上から10人選ぶことは容易だろう。選手だってその方が納得しやすいかもしれない。そんなことは監督だって百も承知だ。だが、一番近くで選手を見てきた監督が、それだけでメンバーを決められるだろうか。同じ走力なら功労者に走って欲しい、と情が入ることもあるだろう。選手たちも、一番近くで努力を見てきたのだ。来年がある選手は悔しさも感じながら、また一年を過ごすだろう。

スポーツには勝ち負けがある。スポーツだけではなく、色んなものに評価はついて回る。

だが、この起用は見ている人に勇気を与える。感動を与える。

青山学院大学の復路は圧勝だったが、所謂エリート選手は6区の小野田のみ。その小野田も、決して特別な期待を背負うほどの選手では無かった。

彼らが伸びた要因は決して一つではないが、少なくともこの起用法や走力だけで判断しない "人" を信じた育成が後押ししたのは間違いないだろう。





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箱根駅伝は古くから4年生のスポーツだと言われている。

今大会でも多くの4年生が箱根路を疾走し、一つの青春に区切りをつけた。

最後に今大会で個人的に印象深かった二人のランナーを紹介したい。

一人は4区で区間新記録を打ち出した神奈川大学4年生の大塚倭選手。

この選手も非エリートながら4年目でブレイク。最後の箱根で記録に残る選手となった。

印象的だったのは区間新記録後のインタビューでの「最後の箱根駅伝。区間新もいけるかな、と思っていて。誰に何を言われようと、僕は自分の力を信じていた。自分の力を信じたことが結果に繋がった」という強気の言葉。彼はまさに最後まで自分を信じていた。何よりもその後の「仲間の事も信じているので優勝します」と続けたことが響いた。結果として神大はシード落ちという不本意な結果ではあったが、大学史上初の4年生全員がエントリーしての文字通り最後の戦いを終えた。全日本大学駅伝の優勝と箱根駅伝のシード落ちという4年目で喜びも悔しさも共にした仲間たちは、一生信じられるだろう。

もう一人は7区でもがきながら走った駒澤大学4年の工藤有生選手。

彼も高校時代は補欠の選手。大学入学後に力をつけて今年、ユニバーシアードで銀メダルを取るまでに成長した。

左足が、原因不明の抜ける感覚が発症する病気に罹り、走れる状態では無かった。それでも、直前に直訴しての強行出場。引きずりながら、ふらつきながら、何度も自身の脚を殴り、走った。監督に恩返しがしたい。お礼が言いたい。ただ、それだけだった。結果は7区区間14位。過去のレースでワーストの記録だった。大八木監督はレース後「自分の情で起用した」と工藤を庇い、工藤は「監督に謝ることしかできない。ちゃんとお礼が言いたい。。」と自分を責めた。だが、工藤の魂の走りが、9区堀合の区間2位、10区伊勢の区間4位の好走を導いた。シードを落とし、来年は予選会からの出発となるが、工藤の走りと、大八木監督の起用が評価されるのは、来年以降で良い。恩返しは、目に見える結果だけじゃない。



仕事や職場でも、同じだ。同期、先輩、後輩、上司、社長と多くの人に関わりながら、個人の目標と、会社の目標を目指す。仕事には、箱根駅伝のような分かりやすい目指す「場所」は無いかもしれない。ただ、サービスや商品を企画し、制作し、お客様に届けてから、フォローする時に他社というライバルと競う事もあるだろう。その時、私たちは、確かに見えない「襷」を繋いでいく。

そんな仲間を、待っています。

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