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クルージングヨット教室物語233

Photo by Alex Taylor on Unsplash

「今日のお昼は何?」

隆は、麻美子に聞いた。

「おでん」

「おでんか。なんか必要なものある?」

「皆、もう買って来てあるし別にないよ」

麻美子は、隆に答えた。

「なんか手伝おうか?」

「人数いっぱいいるし、隆は邪魔なだけだから別にいいよ」

麻美子が言った。

「アクエリアスが来た!」

パイロットハウスの窓から外を覗いていた陽子が言った。

「そうなんだ。アクエリアスさんも今日は深浦に来たのね」

麻美子が陽子に答えた。

「たぶん、うちらが深浦に入るのが見えたから、一緒について来たんじゃないの」

瑠璃子が言った。

「それはそうかもしれない」

雪が笑いながら、瑠璃子に賛成した。

「隆、アクエリアスの舫いを取ってきてあげなさいよ」

する事がない隆に、麻美子が言った。

「わかった」

「じゃ、私も行く」

陽子も表に出た。

「明子ちゃん、一緒に来て舫いロープを取ろうか」

隆が明子のことを誘った。

デッキに出ると、ちょうどアクエリアスがラッコの横に横付けしようとしているところだった。

「あれはアクエリアスというヨットで、うちらの横浜のマリーナに置いている仲間のヨットなんだ」

隆は、明子に説明した。

深浦ボートパークのゲスト用ポンツーンには、色々なヨットが停泊しに来ていていっぱいだった。後から来たアクエリアスが泊めるところがないので、ラッコの横に泊めようとしていた。

「今、あのヨットが、こっちのヨットに真横に停泊するから、そしたら舫いロープをもらって、ロープを結んであげるんだ」

隆は、明子に説明した。

アクエリアスには、中村さん以外に若い男性や女性のクルーたちでいっぱいだった。皆、先週から始まった今年のクルージングヨット教室の生徒たちばかりだった。

「そのロープをこっちに投げてくれる!?」

ラッコのデッキ前方に立っている陽子が、アクエリアスの前方で舫いロープを持って立っている男性に声をかけていた。

「あ、渡せばいいのですか?」

男性は、今日初めてヨットに乗るので、かつてがわからずにロープを持ったままウロウロしていた。

「ロープの端をこっちに投げて!」

陽子に言われて、男性はそのまま丸まったロープを陽子に向かって投げた。

「端側だけ投げてくれれば良かったんだけど」

陽子は、丸まったまま手渡された舫いロープを解くと、ラッコのクリートに結んだ。

「そっちでロープを引いてもらえる?」

陽子が男性に伝えたが、男性は立ったままなので、仕方なく陽子がアクエリアス側に乗り移って、舫いロープを引くと、アクエリアスのクリートに結部と、残りのロープでスプリングを取った。

「スゲェー!手慣れてる」

アクエリアスの生徒たちは、陽子が素早く舫いを結んでしまったのをみて感心していた。


作家プロフィール

主な著作「クルージングヨット教室物語」「ジュニアヨット教室物語」「プリンセスゆみの世界巡航記」「ニューヨーク恋物語」「文筆のフリーラン」「魔法の糸と夢のステッチ」など

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