「おはよう、寒いね」
朝、横浜のマリーナに到着した隆は、マリーナで一緒になったクルーたちに挨拶していた。
「ここは、暖かいよ」
マリーナ建物のエントランスには、暖炉が設置されていて、その周りはポカポカしていた。
「お、暖かいね」
陽子や瑠璃子が暖まっていた暖炉の近くにやってきた隆も、ポケットから手を出して暖炉に当てていた。
「早くヨットに行こう!」
「そうね。ヨットに行こうよ」
香代に言われて、麻美子は暖炉で暖まっている皆にも声をかけた。
「ここ、暖かいよ」
「それは暖炉の前だからね。おじさん、ヨットに行くよ」
麻美子は、香代の手を引いて、隆のいる暖炉の前まで近寄りながら、隆に返事した。
「確かに暖かいけど」
麻美子も、暖炉の火に手をかざしながら答えた。
「香代ちゃんは、ヨットに行きたいの?」
「うん。だってヨットに乗りに来たのだもの」
「そうか」
香織は、香代に答えた。クルージングヨット教室を卒業してから、香織も既にしっかりアクエリアスからラッコのクルーの一員になっていた。
「っていうか、香代ちゃんって寒くないの?」
ショートパンツをはいている香代の姿を見て、瑠璃子が聞いた。
「だって、下にレギンスもはいているもの」
香代は、自分の片足を上げてみせながら、瑠璃子に返事した。
「さすが、うちで一番若い香代ちゃん、私なんて冬用のパンツにタイツでも寒いのに」
陽子が言った。
「私、マリーナのクリスマスパーティーは参加して見たいんだ」
「そうなの?」
「ニューグランドって、山下公園に行った時、目の前は通り過ぎたことあるけど一度も中に入ったことないから」
「私、何回かあるかな」
幼い頃からずっと横浜育ちの雪が答えた。
「ニューグランドって歴史あるホテルだし趣きはあるよね」
香織が答えた。
香代が早くヨットに行こうと誘った後も、隆も、そろそろヨットに行こうかと声をかけたのだが、声だけで隆自身も誰も暖炉の前から移動せずに、ずっと雑談が続いていた。
「おはよう」
暖炉の前でお喋りを続けていると、ドリーム号の久保さんがやって来た。
「おはようございます!」
ラッコのクルーたちは、久保さんに挨拶した。
「今日は出航するの?」
「出航するつもりではいるんですけど、なかなかここから皆、動かなくてね」
「ははは」
久保さんは、隆から話を聞いて、苦笑した。
「うちは、今日はビルジ溜まりのチェックしに来たんだ。ヨットで来たけど、なかなか動けない時は、ヨット関係の何か備品の買い出しとかに時間を当てたらいいよ」
そう言い残して、久保さんはマリーナ沖に停泊しているドリーム号に行ってしまった。
「これから寒くなってくるし、皆の冬用オイルスキンを買いに行かない?」
暖炉の前で動けなくなっている皆に、麻美子が提案した。
「いいかも!」
「来週のクリスマスパーティーに着ていく服も買いたい」
「じゃ、今日は備品の買い揃えの日にしようか」
皆は、ラッコの置いてあるマリーナ敷地とは逆方向の駐車場に向かって移動した。
主な著作「クルージングヨット教室物語」「プリンセスゆみの世界巡航記」「ニューヨーク恋物語」など
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