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クルージングヨット教室物語85

Photo by boozer asia on Unsplash

「あそこまで登るのは嫌だな」

中村さんは、山の上の方に見えている館山城の屋根を見上げて、ため息をついていた。

「しかも皆、若いから歩くの速いのよね」

麻美子も、前を行く皆を眺めて、中村さんに話を合わせていた。

「隆ー!」

1番先頭を歩いていた隆のことを大声で読んだ。

「早くぅー、待っているよ」

隆が、後ろを振り返って、麻美子に声をかけた。その場で止まって、麻美子が来るのを待っていた。

「こっち!」

麻美子も、前には進まずに、隆のことを手招きして呼び戻していた。

「何、どうしたの?」

仕方なく、隆と陽子が戻って来た。

「私たち、ここの公園でのんびりして待っているよ。だから、お城まで行って来て」

麻美子jは、戻って来た隆と陽子に言った。

「なんで、足した距離じゃないよ。お城まで」

「健脚の人だけで行って来て」

麻美子に言われて、隆たちだけで館山城まで行って来ることになった。

「あそこにお風呂屋さんあるから」

隆は、お城に向かって歩きながら、道路の反対側にあるお風呂屋さんを指差して、麻美子に教えた。

「それじゃ、私たち先にお風呂へ行ってから、ヨットに戻っているよ」

麻美子は、隆に返事した。

それから、隆たちは歩いて館山城まで行くと、お城の中へ入ってみることになった。

「俺、そういえばお財布持って来てない」

隆が、陽子に言った。

「お財布、先にお風呂やさんに行ってしまったものね」

「私、お財布あるから大丈夫よ」

「後で、ヨットに戻ったら、麻美子からお金返してもらってね」

隆は、香織に代わりにお城の入場券を買ってもらっていた。

「もう、麻美子はいないね」

お城を見終わって、帰り道のお風呂屋さんにやって来たが、麻美子の姿は無かった。

「アイス食べる?」

「食べる!」

お財布の無い隆は、ここでも香織にアイスをご馳走になっていた。

「お風呂、気持ち良かったよ」

「良かったわね」

隆が、麻美子に報告すると、笑顔で返事をしてくれた。

「そういえば、お金はどうした?持っていたの?」

「持ってないから、香織ちゃんに払ってもらってしまった」

「やだ、もう」

麻美子は、お財布を持って、香織のところに行くと、出してもらったお金を払っていた。


作家プロフィール

主な著作「クルージングヨット教室物語」「プリンセスゆみの世界巡航記」「ニューヨーク恋物語」など


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