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クルージングヨット教室物語76

Photo by Yuma Nozaki on Unsplash

「隆、アクエリアスって優勝だよね」

麻美子は、隆に伝えた。

「優勝って?」

「やっぱり気づいていないんだ」

隆の反応を見て、麻美子は言った。

「うん。隆さんたちって優勝だよ」

瑠璃子も、麻美子と一緒に隆へ話していた。

「ゴール時間で私たちもう何度も計算し直して確認したものね」

「そうなの。一番最初にゴールラインをゴールしたのは、うららさんかもしれないけど、時間を記録して、レーティングで修正して行くと、9番目にゴールしたアクエリアスが1番なの」

瑠璃子は、隆に言った。

「へえ、総合時間でアクエリアスがレース艇をぜんぶ追い抜いているんだ」

隆は、瑠璃子の言葉に驚いていた。

「さっきさ、中村さんが、その話を隆さんに話していたよね」

「でも、まさか1位とは思わなかったね」

陽子も、香織も瑠璃子に話していた。

「すごいじゃない!」

「私は、別に何もしていないけど・・」

香織は、麻美子に褒められて、恥ずかしがっていた。

「香織、何もしていないこと無いじゃない」

「そうだよ。香織ちゃんは、私たちと一緒にジブやったり、スピンをトリムしていたじゃない」

隆に加えて、陽子も香織に伝えていた。

「ほぼ、香織ちゃんがアクエリアスを優勝させたようなものだから堂々と自信を持って!」

陽子が、香織に伝えた。

「本当ね、中村さんよりも活躍したのって香織ちゃんじゃないの」

隆や陽子からレース中の話を聞いて、麻美子が香織に答えていた。

「それでは、本日のレース結果を発表します!」

横浜のマリーナ職員が、ビールパーティー会場の一段ステップが上がったステージ場にマイクを持って立つと、会場にいる人たちに向かって話していた。

「着順の順位は、第1位はうらら、2位はプロント・・」

職員は、まず見た目の順位、着順を発表した。

「続いて、修正した上での総合順位は、第1位はアクエリアス、2位はビッグショット・・」

職員が発表すると、クルージング艇のアクエリアスが1位に会場は、どよめいていた。

「続いて、トロフィーの授与・・」

1位から3位までの各艇オーナーがステージに呼ばれて、職員から表彰状とトロフィーを受け取っていた。

「優勝した船のクルーの皆さんもステージ上にお集りください」

職員に呼ばれて、各艇のクルーたちもステージ上に上がった。1位のアクエリアスのクルーたちも、ステージ上に上がって、トロフィーを持っている中村さんの横に並んでいた。

「香織ちゃんも行かなきゃ」

麻美子が、自分の横に隆、陽子と立っていた香織に言った。

「そうだよ、香織ちゃんも行かなきゃ」

「え、じゃあ行こう」

香織は、隆と陽子に言ったが、

「俺たちは、アクエリアスの人間じゃないもの。ただの手伝いで乗っていただけだから」

「私も、アクエリアスは久しぶりに乗りに来ただけだから」

隆も、陽子もステージに上がらないので、香織もステージには上がらずに、隆と陽子たちラッコのメンバーと一緒にステージ上で拍手をもらっている中村さんたちアクエリアスのメンバーを眺めていた。

「いいよね、また今度、ラッコが優勝した時に、私たちと一緒にステージに上がろう」

麻美子は、隆と陽子の横に立っている香織に言って、香織も嬉しそうに麻美子に頷いていた。

隆も、陽子も、レース中からすっかり香織と仲良くなってしまっていたが、麻美子も優しい性格の香織と仲良くなってしまっていた。

「ラッコが優勝したとき?」

隆は、麻美子の言葉に反応した。

「ラッコが優勝する時って、そんな日はほぼ来ないだろうけどな」

自分のヨット、木材が豊富に使われた重たい船体を想像しながら、隆は苦笑していた。


作家プロフィール

主な著作「クルージングヨット教室物語」「プリンセスゆみの世界巡航記」「ニューヨーク恋物語」など

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