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クルージングヨット教室物語64

Photo by Genri Kura on Unsplash

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「こんばんは」

隆は、停泊しているドリーム号の皆に挨拶をした。

ドリーム号の広いフラッシュデッキのデッキ上では、ブームの上に青いブルーシートを広げて、日陰を作って、その真下でビールやお酒を並べ、つまみも広げて大宴会の真っ最中だった。

ドリーム号のオーナーは坂田さんだ。

「坂田さんはいらしゃらないのですか?」

「よっ、今井君久しぶり。坂田は、仕事でクルージングには来ていないよ」

そう答えたのは、坂田さんと共同でドリーム号を所有している共同オーナーの久保さんだった。

ドリーム号は、坂田さんと久保さんに、あと2人の合計4人で共同で所有しているヨットだった。坂田さんが、一応4人の中ではメインオーナーだったが、横浜のマリーナの近くに自営業でお店を経営していて、そっちの仕事が忙しく、めっきりヨットに乗りにくる時間が取れなくなっていた。

「なんだ、坂田さんいないんですか。残念だな」

隆は、久保さんに返事した。

「飲んでいかないか」

久保さんからのお誘いに、アクエリアスのメンバーたちは、早速、ドリーム号のデッキ上に上がりこんで、お酒をご地租になっていた。

「それじゃ、また後で」

隆は、麻美子たちと自分のラッコに戻った。

ドリーム号の本当の船名は、号が付いていない、ただのドリームだ。いや、ドリームの先頭に、なんちゃらかんちゃらと長いフランス語かなんかの単語が付いているのだが、名前が長すぎて呼びづらいので、横浜のマリーナの連中は皆、ドリーム、ドリームと呼んでいた。

そんな中、昔からの坂田さんの知り合いだった隆だけは、ドリーム号と呼んでいた。

「デカいヨットだね」

「45フィートあるからね。船体が全て木造なんだよ」

隆は、陽子に説明していた。

「デッキが真っ平らだろう。真っ平らなデッキのことをフラッシュデッキというんだ」

隆は、ドリーム号のデッキを指差しながら、陽子に説明していた。

ラッコやアクエリアスは、船体の中央に、雨の日でも船内で操船できるようにとパイロットハウスという操舵席が付いているため、船体の中央付近がパイロットハウスの屋根で飛び出していた。

ラッコやアクエリアス以外のヨットでも、キャビンの中が真っ暗にならないようにと窓が付いていたりしており、その分だけデッキが高く上部に飛び出していた。

ドリーム号のデッキは、前から後ろまで真っ平らだった。

「こんな風に、真っ平らなデッキのことをフラッシュデッキと呼ぶんだ」

「真っ平らってことは、キャビンの中がその分、天井が低かったりするの?」

「他の45フィートのヨットに比べたら低いかもしれないけど、何せ、45フィートの大きさがあるからね。ぜんぜん中は広いよ」

隆が、岸壁で陽子に説明していた。

「中に入ってみる?」

2人の会話を聞いていたドリーム号のクルーが声をかけてくれた。

「じゃ、ちょっとだけ中を見せてもらおうか」

隆は、かつて知ったるドリーム号の船内に陽子と入った。

「本当だ、広い!」

船内の大きさに、陽子は驚いていた。

「隆さんは、このヨットでどこかに行ったことあるの?」

「ドリーム号では、あっちこっち行ったさ。九州までも行ったことがある」

隆は、かつてラッコが進水するずっと以前に、ドリーム号に乗っていたことを思い出しながら、懐かしそうに陽子へ話していた。

「隆君がドリーム号に乗っていた頃って、もう10年近くは経ちますかね」

「10年まではいかないけど、近くは経つんじゃないかな」

隆は、懐かしそうにドリーム号の船内を歩き回りながら、クルーに答えていた。

「隆さん、なんかいいな」

ドリーム号を懐かしそうにしている隆の様子を見て、陽子はいった。

「私も、いつか、あの頃に乗っていたラッコとかって懐かしみながら、あの頃はラッコで大島にも行ったんだよとか言ってみたいな」

「でも、あの頃乗っていたラッコってことは、いつか陽子もラッコから巣立つんだね」

「え、いや、私はずっとラッコで良いかな」

隆に言われて、慌てて自分の考えていたことをかき消した。

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