クルージングヨット教室物語54
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「ねえ、香代ちゃん。ちょっとお出で」
麻美子は、香代のことをアフトキャビンの中に呼んだ。
「これを見て」
麻美子は、アフトキャビンの引き出しの中からピンク色の浴衣を取り出した。
「あ、かわいい」
香代は、麻美子に返事した。
「これね。私が中学生の頃にお母さんに買ってもらった浴衣なの」
麻美子は、浴衣を香代に着せながら話していた。
「私、背がデカくなちゃって、もう着れないんだけどね。香代ちゃんに、サイズ的に、ちょうど良いんじゃないかなと思ってさ」
麻美子は、香代のことをくるりと半周させると、浴衣の帯を結んでいた。
「ぴったりじゃない!」
麻美子は、自分の中学校時代の浴衣を着ている香代の姿に満足そうにしていた。
「やだ、かわいい!」
香代が、麻美子と一緒に浴衣姿で表に出ると、皆が口々に褒めていた。
「その浴衣で、一体どこに行くつもりなの?」
隆は、麻美子と香代に聞いた。
「ちょっと、街中をぶらりしてこようかなと思って」
「私も、持って来ているワンピースに着替えようかな」
瑠璃子は、オレンジ色の花柄のワンピースに着替えて来た。
「ラッコの船がファッションショーの会場に一気に変わってしまったな」
隆が呟いていた。
「陽子は、あんな感じのなんか可愛い服は持って来ていないの?」
「そもそも、私はああいう服って持っていないもの」
陽子は、隆に答えた。
「そうなんだ。それはかわいそうに、ちょうど良いから、そこの神津の原宿の街で、なんか可愛い服を買ってあげようか」
「辞めて、私には、ああいう服は似合わないから要らないよ」
陽子は、隆に言った。
「陽子ちゃんって、会社とかだと、どんな格好をしているの?」
「私?普通にカジュアル、ジーンズとかが多いかな」
陽子は、雪に答えた。
「会社でも、ジーンズとかなんだ」
「うん。雪さんは?会社では、どんな格好しているの」
「背がデカくて似合わないけど、一応、会社だとグレーのスカートとか着ているかな」
雪は、陽子に答えた。
「雪さんの会社は、仕事中、女性はスカートって感じなんだ」
「うん、決まっているわけじゃないけどね。私より若い子たちは、仕事中でもパンツの子が多いかな。私と同期、同年代の子たちは、スカートの方が多いかな」
「隆さんの会社は?」
「うち?会社の制服とかは特に無いけどね。うちの会社は、そういえばスカートを履いている人って誰もいないかもしれないな、見たことないな」
隆は、雪と陽子に答えていた。
「やっぱ、IT系の会社そうだよね」
「麻美ちゃんは、仕事中はビシッとスカートで決めてそう」
「ぜんぜん、そんな麻美子の姿は一度も見たことがない」
隆は、陽子に返事した。